理由



 

 夜11時、第一志望の高校の推薦受験に向けて社会の勉強をし終えて、俺は今から寝よかな、なんて思とった。
 ほんならブルブルと携帯が震えて、誰からか確認してみれば愛しい恋人からの着信で。

 それを確認したと同時に、俺は無駄の無い動作で携帯を開いて通話ボタンを押した。


「ユウジ?」

『…蔵、起きとった?』

 ポツリと呟くように尋ねて来たユウジに、俺は自然に柔らかい声色で「おん。」なんて答える。

『今、暇か?』

「暇やで。どないしたん、ユウジ。何かあったん?」

 そういやユウジ、今日は親も兄貴も居らんっちゅーてたな。
 いきなり電話して来て…何かあったんやろか。

 そう思って尋ねれば、ユウジは相変わらずのいつもよりちっさい声で何も無いけど、と歯切れの悪い言葉を紡いだ。

『今日、心霊特集やってたやん?』

「おお、やってたなぁ。」

 そぉいや妹がきゃーきゃー怖がりながらも見とったわ。
 俺はちょっとしか見てへんし、そない怖いとも思わんかったけど…

「…もしかしてユウジ、心霊特集見て怖なったんか?」

『せやねん。』

 からかう様にかけた言葉にもいつもやったら噛み付く勢いで否定する癖に、今日はやけに素直に答えたユウジ。

 ユウジがそんなビビりなイメージ無かったけど、意外やなぁ。そない怖かったんやろか。

 そう不思議に思ててちょっと返答に間が空いたら、その間を埋める様にユウジはポツリと呟いた。

『……ごめん、今のん嘘や。』

「え?」

『あないなパチモン、全然怖ないわ。
 せやけど、蔵に電話する理由が欲しかってん。』

「、え」

 え、何こいつ、いきなりそない可愛らしい事言い出しよって。

 思わず言葉を詰まらせれば、ユウジは甘える様な声色で『蔵と会えへんくて、寂しい。』なんて一言。

 確かにうちの中学は先週の金曜日、つまり他の中学校よりも早よ冬休み入った。
 それでそれ以降俺が推薦受験に向けて勉強とかでメールの遣り取りしか出来てへんし、クリスマスは会う約束しとるけど、ユウジに寂しい想いさせてしもてる。

 ユウジはメールとか電話とか直接顔見んで会話するのが苦手で、せやのにわざわざ理由作って電話して来たんや。
 そう思たらユウジへの愛しさで胸がいっぱいなって、せやからちょっとだけ話したい、なんて言うたユウジに告げた。

「今からそっち、行くわ。」

『え、もう夜遅いし危なくない?』

「大丈夫やって。直ぐに会いに行ったる。せやから、」

 待っとってな。

 そう言葉を続けたら、ずっと待ってる、やなんて嬉色を含んだユウジの返事が返って来て、俺は電源ボタンを押してからスピードスターも吃驚なスピードで家を出る準備をする。

 さぁ、早よ愛しいアイツに会いに行かな。

 姉貴に口早に出て来る事を告げて、俺は駅まで駆け出した。



理由
「ユウジ!」「蔵!遅いわ!」(そう言うて抱き付いて来る君が、むっちゃ愛しいねん!)


(12/23)


 個人的にユウジも白石もお化けとかは全然怖がって無いイメージがあります。2人共現物主義者って訳では無いしお化けがいないとまでは思って無いけど、テレビとかで見られるやつは大体パチモンやんなって思ってるタイプ。小春ちゃんもそのタイプかなぁ…。
 謙也と金ちゃんは幽霊信じてて、逆に超現代っ子な財前は信じて無さそう。でも財前はホラー映画とか怖くない癖に心霊番組は苦手だったら良い。
……何語ってるんだ美奈は(^p^)






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