First Kiss

ふたりの初めてのキスをテーマに
お相手:仁王雅治 / 幸村精市 / 日吉若 / 丸井ブン太 / 伊武深司 / 白石蔵ノ介 / 忍足侑士 / 芥川慈郎 / 忍足謙也 / 千石清純 / 向日岳人

※順不同

※リンクは貼っていないのでスクロールしてお読みください

※方言が分かりません

白石蔵ノ介

 完璧なデートプランを立てて完璧なファーストキスを演出するつもりの白石は、しかし部活が忙しくなかなかタイミングを掴めずにいた。週に数回一緒に帰る通学時間しか取れる時間がない。
 日の沈みそうなもう遅い夕方、伸びる影がふたつ並ぶ。
 今週はあまり会える時間が無かったから帰るのが名残惜しくて、顔を見合わせ公園に寄り道。滑り台を駆け上がって笑って、ブランコをどっちが高く焦げるか全力で勝負して笑いあって、まるで少年少女のようにふたりははしゃいだ。
「ふ、はあ、疲れたね、あはは」
「ほんま俺らガキちゃう?いつぶりやろ、こういうの」
 ふと沈黙が訪れ、きいきい、ブランコが静かに揺れる。
 飴色に照らされる彼女の横顔を盗み見、あまりにも綺麗で白石はパッと顔を逸らした。
「も、もう帰らんとな…」
「うん…でも、まだ帰りたくないなあ」
 え、顔を向ければ彼女が切なそうな顔で白石を上目遣いに見つめた。どく、一瞬息が詰まる。
「…もうちょっと一緒にいたい……」
 白石は気付けば衝動的に彼女に口付けていた。「え、え、」
 戸惑う彼女にさらにキスの雨を降らす。すっかり彼女の息が上がった頃、やっと白石は口を離した。ぎゅう、と抱きしめて彼女の肩に顔をうずめる。
 耳を赤くしながら「あんま可愛ええこと言わんでや…こんな余裕ないキスするつもりやなかったのに…」
 ほんまかっこわる、呟く白石に彼女はきゅう、と心臓が締め付けられる。「で、でもうれしかったよ…」回された腕に力が込められて「はあ、かなわんわ、ほんま」

伊武深司

 高校生の彼女は伊武よりずっと落ち着いてて、大人で、そんなところに憧れていたけどやっぱりちょっと悔しい。ドギマギさせられるのも、デートを引っ張ってくれるのも、たくさん話しかけてくれるのもいつも彼女で、微かにコンプレックスがある。
 今日も些細なことで拗ねて「ほら、また子供扱い…嫌になるよなあ、ちょっと年上だからってすぐ人を下に見てさ…俺のことなんかガキだとでも思ってるんだろうなあ…」ぶつぶつ、ぶつぶつ。
 最初は受け流していた彼女もうんざりして「もお〜うるさい!」いつも宥めてくれるのに初めて強い口調で言われてショックを受ける伊武。
「うるさいてなんだよ…所詮あんたも俺の事ウザイって思うんだ…へえ…まあ俺が悪いんだけどさ…でもそんなストレートに言うこともないんじゃないの、元はと言えばあんたが俺のことガキ扱いするのがきっかけなんだし…俺の気持ちも少しは考えてくれてもいいんじゃない…なんてこんなのもガキの戯言なんだろうな、まったく嫌になるよなあ…って、え、」「黙って」
 目の前が暗くなって、言葉が紡げなくなった。唇に柔らかいものが当たっている。「な、なに、今…」
 耳まで赤くしてフリーズする伊武に、彼女は悪戯が成功したようにへへっと笑って、「ね?子ども扱いなんてしてないでしょ?」

日吉若

 一学年年上のあの人は、ぼけぼけして能天気でアホ極まりないけど、悔しいことに、正直モテる。俺に笑いかけてきたように、どうせ色んな奴に笑顔を振りまいているに決まってる。
 そんなの分かっていたことだ。それがあの人の魅力だし、俺だってあの人のそういう天真爛漫さや真っ直ぐさが…す、好きだと思った。けど、感情と理屈は別物だったようだ。
「あの男、誰なんですか」
「た、ただの同級生だよ…」
 今の俺はみっともないくらいに余裕が無い。元々鋭い目はもっと極悪になってるだろう。
「あの距離で?ハッ…あんたにとってはそうでも、あいつにとってはそうじゃない。あんたはいつもそうだ。誰にでもいい顔して気を持たせて」
「わたしはそんな、そんなつもりじゃ…」
 声が潤み始め、ようやく俺は正気に戻った。なんてみっともないんだ、俺は…。
「すみません…でも、あんたを誰にも渡したくないんです。少しは自覚してくださいよ、頼むから…。あんたは自分で思うよりずっと魅力的なんだ」
「…い、今すごく恥ずかしいこと言ってるって分かっるる…?」
 彼女は真っ赤になって俯いた。
「ふふ、少し怖かったけど、そんな風に想ってくれてたなんて知らなかった…嬉しい」彼女が俺の肩に寄りかかり、俺はそっと髪を撫でた。心臓が痛いほどバクバクして、背中に汗が流れた。彼女を俺だけの物にしたいと思った。
「…いいですか」「…うん」
 空き教室の隅で初めて合わせた唇は、少しにがくて、くるしいくらいに甘かった。
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