First Kiss

ふたりの初めてのキスをテーマに
お相手:仁王雅治 / 幸村精市 / 日吉若 / 丸井ブン太 / 伊武深司 / 白石蔵ノ介 / 忍足侑士 / 芥川慈郎 / 忍足謙也 / 千石清純 / 向日岳人

※順不同

※リンクは貼っていないのでスクロールしてお読みください

※方言が分かりません

丸井ブン太

 付き合って初めてのバレンタイン、スイーツ好きの丸井くんに少しでも喜んで欲しくて、何回も作り直したチョコレートケーキ。
「お、美味しいかな…?」
 一口食べた彼におずおず聞けば「んー…」と目を瞑ってもぐもぐ。不安で仕方ないわたしをからかうように焦らす彼にもどかしくなる。
「も、もう!」「ハハ、わりい、反応が可愛くてさ。ケーキめっちゃうまいぜぃ!百点!」「ほんと…!?」
 うれしい言葉を言われてふわふわした気持ちになる。
「ほんとにサンキューな。お前あんま料理したことなかっただろぃ?なのに俺のために作ってくれてすげー嬉しいよ、マジで」
 本当に彼はずるい。わたしは顔が熱くて、口元が自然とにやにやするのを抑えられなかった。
「褒めすぎだよ!でも、良かったぁ…味見しすぎて、ちゃんと美味しいかもうわかんなくなって」
 自分の必死さを思い出して思わず笑いが零れた。
「じゃあ食ってみる?すげー美味いからさ。ほら、あーん」
 意地悪く笑う彼に負けて小さく口を開けば「あ、美味しい…かも」「な?」
「うん、よかっ…」チュ。「えっ?」
 ほっぺたに柔らかい感触がして顔をあげれば、目の前に丸井くんの顔があった。

「なあ…俺、もういっこ欲しいモンあんだけど」

 甘くて低い声に耳と背中がぞくぞくして、さっきの柔らかい感触の答えがわかった。
「あ、あ、丸井くん…」
 びっくりして恥ずかしくて声が出ない。「はは、かーわい」生クリームがとろとろ溶けて、わたしおかしくなっちゃいそうだよ。

忍足謙也

「いつまでメソメソしてんねん」
 謙也が呆れたように言った。そんなこと言われたって。わたしは口を尖らせて拗ねてみせる。彼氏に振られて1週間しか経ってないんだよ。
 親身に慰めたり笑わせようとしてくれた謙也にすっかり甘えていたら、とうとう呆れられてしまった。悲しくなって、またじわりと涙が浮かぶ。すると慌てふためいて「お、俺のせいか!?す、すまん」と眉をへたりと下げさせた。釣り目が下がると、黙っていれば硬派な顔立ちが一気に柔らかくなる。
「…ちょお強く言いすぎたかもしれへん」気まずそうな顔。
 いいよ、どうせ謙也もわたしにうんざりしたんでしょ。口にはしなかったけど表情には出ちゃって、あー、だとかうー、だとか謙也は唸って言いよどみ、ぽつりと呟いた。
「さっさと忘れたらええやん。自分を大事にしてくれへん奴なんか」
「簡単に言わないでよ」
「…まだ好きなんか?そいつんこと」
「…どうだろ」わたしは返答に困った。たぶん、振られたのが悲しいだけなのかも。
「あー、なんや、失恋には新しい恋がええって言うやろ」
 励ましかと思った。けど、目をウロウロさせながら少し顔を赤くする謙也が言う意味が分からないほど、わたしは鈍感じゃない。
 思わずまばたきして見つめると、彼はますます赤くなって、そっぽを向いて不機嫌そうに俯いている。熱が移ったようにわたしまで赤くなりそうだった。
「じゃあ…その相手になってくれるの?」
 謙也が急に顔を跳ね上げさせたせいで、唇に触れようとしたわたしの唇は端っこにズレてしまった。真っ赤に照れて言葉を失っている彼に胸が疼いてくるのを感じる。現金なわたしは、もうすっかり失恋の痛みなんか飛んでいってしまった。

芥川慈郎

 青い空、輝く太陽、ぽかぽかお天気。絶好のピクニック日和。芝生のある公園で、散歩したり、軽く運動したり、ジローくんと過ごすのんびりした時間。
 木の影に寄りかかって膝枕をしようとしたら「今日は俺と一緒に寝よ?」
 答える前に腕を引かれて、「わっ」腕の中に閉じ込められていた。華奢なのに逞しい腕。心音が早くなる。
 ジローくんの肩に頭を乗せて、柔らかい芝生の上にふたりで寝そべった。とても寝れないと思ったけど、ジローくんがうとうとしながら頭を撫でてくれて、気付けばわたしも眠っていた。
 どれくらいだろう、微睡みから目覚めたわたしは目の前の彼とぱっちり目が合って、珍しいな、ジローくんが先に起きてるなんて…えっ?ハッと意識が覚醒する。
 もしかして寝顔見られてた!?寝言言ってなかったかな…!
「お、起きてたの?」
「うん!可愛かったよー、えへへ」目を細められて胸がきゅうんとした。
「起きたら隣に好きな子が寝てるって、なんか、すっげーうれC…」
 零れるように彼が笑って、おでこにキスを落とす。ちゅう、ちゅっ、耳や髪をくすぐるように撫でながら、鼻や、頬や、耳朶…。
「ジ、ジローくん…」
 わたしはいっぱいいっぱいになって彼の胸を押したけど、逆にその手を捕まえられて。
「なあに?照れてんの?マジマジかわE」
 はむ、ちゅう、唇をふにふに食まれて、泣きそうでぎゅうと目を瞑ると、舌でちろりと舐められる。
 わたし、わたしこんな男らしいジローくん知らない。

忍足侑士

 新しくおろした浴衣を着て、髪も巻いて、慣れない下駄を履いたりなんてして。今日は待ちに待った夏祭りだ。
「お待たせ」神社の門の前でゆったりと立っていた侑士の着物姿に胸がときめく。
「全然待ってへんよ…ほな行こか」
 じっと頭からつま先まで眺めたのに彼は微笑むだけで何も言わないから不安になるけど、「人多いな…俺から離れんどき」
 ぎゅっと握られた手でそんなの吹き飛んじゃう。大きなてのひらに包まれながら縁日を回る。綿あめ、りんご飴、焼きそばたこ焼き、かき氷。お祭りの屋台ってどうしてこんなに特別に感じるんだろう?
 フ、と耳元で侑士の吹き出す声。
 「自分、ほんま美味そうに食うなあ」俺にも分けてや、左手で髪をかきあげながら、彼はわたしの腕を掴むとゆっくり箸を口に運ぶ。
 光に照らされる横顔が何だか色っぽくて真っ直ぐ見れない。
「そろそろ疲れたんちゃう?下駄って歩きづらいやろ」
 さり気ない優しさがくすぐったかった。木の影、人に隠れるようにわたし達は花火を見た。
「わ、近い!綺麗だね」
 夜空を彩る眩さに歓声を上げて振り返ると、目元を緩めた侑士と目が合った。
「せやなあ」その声があまりにも優しくて心臓が跳ねる。
「けど、自分のがずっと綺麗や。今日の格好ほんまに似合っとる」
 繋いだ手に力が込められる。からだがあつい。
「ゆ、侑士…」眼鏡越しの彼の瞳もきらきら潤んでいた。
 ゆっくり近づく唇にわたしはそっと目を閉じた。花火の音が瞼の裏に響く。きっとこのキスをずっと忘れない。
new | old
back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -