※幼馴染パロ
※来神
俺の家の前には大きな桜の木がある。
二階にある俺の部屋の窓は、この季節になると必ず、一面が花に埋め尽くされ、視界がいっぱいに桜色が広がる。
「桜、きれいだね」
「ん?そうだな」
今日は風が強いようだ。春一番かな。枝が大きく揺れで、扇をあおいでいるようにきらびやかに見える。
「具合よくなったら、外に見に行くか」
「俺元気だよ?」
「はいはい」
季節の変わり目はいつだって、体にこたえるもので、この花が咲いているのを外で見たことはあまりなかった。
シズちゃんは俺に付き合って、毎年ここから一緒に眺めてくれた。俺はそれで満足していた。シズちゃんと見れればそれでいい。
「窓開けるか」
「寒いのは嫌だな」
「今日あったかいぞ」
「本当に?じゃあ開けて」
つよい風が吹き込んでくる。カーテンが大きく舞い上がった。春の匂いがする。気持ちいい。空気は程よく冷たかった。
「水いるか?」
「ジュースが良い」
「ジュース?オレンジしかなかったと思うけど」
「ええー、グレープフルーツ買ってきてよ」
「なんで俺が、」
「嘘」
「は?」
「行かないで、ここに居て」
「はいはい」
あきれたような声で言う割にシズちゃんの表情はやわらかかった。
風に吹かれてシズちゃんの前髪が揺れる。のぞいたおでこが可愛いから思わず手を伸ばして、シズちゃんが俺にしてくれるみたいにおでこに手をくっつけてみた。
「なんだよ」
「べつにー」
何にも言わないでいたらおでこに当てていた手をつかまれた。
シズちゃんの手は子供みたいに温かいので気持ち良くて指を絡めてみたら、もう一度ぎゅっとつかみなおされた。
「早く学校こいよ、お前居ないとつまんねえ」
「シズちゃんが学校行かなきゃいいんじゃん」
「……そうか」
「そうだよ」
「よし、明日はさぼる」
「はあ?馬鹿か、駄目に決まってるだろ」
「いや、もう決めたから。大体お前が言い出したんだろ」
「馬鹿だねえ」
「お互いさまだ」
「シズちゃん」
手をぐっと引っ張って、目をじって見て、名前を呼ぶ。
キスしての合図だ。
ふんわり笑って近づいてくるシズちゃんは桜の花びらに囲まれて、きらきらして見えた。
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甘―――い!
もうやだこの人たち……w