28

 校舎を通り過ぎ、駐輪場の近くにあった茶道部の活動場所へ赴く。茶道部の先輩は暖かく迎え入れてくれ、二人は作法を一通り見学する事になった。


「夏希、どうするの?」
「うーん……」


 茶道部、少し気にかけていた弓道部、その他諸々の見学を追え、夏希と弥生の二人は教室に戻ってきていた。そこで夏希は何部に入ろうか、頭を悩ませていた。

 時計を見ると、もう少しでチャイムが鳴りそうだ。さっさと決めて、帰る準備をしなければ。


「やっぱり茶道部かなあ……」
「弓道部は良いの?」
「かっこいいけどさ……私には合わなさそう。よし、決めた」


 サラサラと所属する部活動を書く。書き終わった後、シャーペンを筆箱の中にしまい、紙を出す為に席を立った。


「結局茶道部かあ……夏希が運動部になったら、一緒に帰れる可能性も高くなると思ったんだけど」


 弥生は残念そうにそう言いながら、夏希の後についてくる。

 部活動の紙は教卓に提出されていた。皆適当に置いているものだから、バラバラに広がっている。

 それを一つに纏め、席に戻った後チャイムが鳴る。戸田がまるで図ったようなタイミングで入ってきて、紙を持ちながら「んじゃ、解散」とヒラヒラ手を振りながらまた出て行ってしまった。

 教室に居る時間が一分満たないって。ホームルームもしないままで終わってしまって良いのだろうか。というか、何か戸田に関しての感想が毎日同じような気がする。いい加減慣れなければ。


「夏希ー、どこかに寄っていく?」


 駐輪場に向かいながら、弥生は夏希に問いかけてきた。夏希は鞄の中に入っている財布の中に幾ら入っているかを思い出し、今月はまだ余裕かなと思って頷いた。


「うん。……あれ? 弥生って部活、いつからだっけ?」
「月曜日。遊べるのは日曜までだよー。夏希は?」
「私は来週の水曜からだと思う。茶道部って週一だし」
「えー、良いなー」
「だから選んだんですー」
「っても、早く帰れる時は何してんの? 暇じゃない?」
「暇ってことはないけど……バイト探そうかなあ。お金欲しいし」


 自転車に乗りながら、考える。

 そろそろ携帯を新しくしたいが、親曰く自分でバイトして金を貯めて買いなさいとのことなので、バイトを探して携帯を買おうと思う。落としてばっかで傷だらけだし、夏モデルが出る前にお金を貯めたいものだ。


「何か良いバイトとかある?」
「え? うーん……コンビニとかバイト募集出てたような気がする。私が帰る方の、でも夏希も知ってるよね? 結構新しい所」
「ああ……あそこ。バイト募集してたんだ」
「うん。電話してみたら? 早めにね。あ、見ておいてあげようか?」
「お願い。メールして?」
「オッケー!」


 そんな会話をしていると、コンビニに着いた。余談だが、夏希と弥生の帰り道にはコンビニがやたら多く建っている。しかも全て違うコンビニ。自転車で帰れる道にこんなに多く建っているなんて、儲かるのだろうか。

 そのコンビニは、座って話せるスペースが設けられていた。夏希は小腹が空いたので適当に何か買ってから、そのスペースに置かれていたテーブルに荷物を置いて弥生を待った。

 テーブルに来た弥生は、夕飯が食べられなくなりそうな量の買い物をしていた。それを全て食べるのだろうか。これから夕飯なのではないのか。

 呆れながら弥生と雑談をし始める。話し始めるとついつい話し込んでしまって、時間が経つのも忘れてしまった。ふと外を見ると、もう暗くなっている。そろそろ帰らないと。


「弥生、もうそろそろ帰ろうか」
「うん、そうしよっか」
「あ、あとバイトの件、忘れないでね」
「分かってるって! じゃーねー!」


 バイバイ、と返してから、夏希は自分の家に帰っていった。
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