翔那

那月は日頃から何かと、俺のことばかりを優先するふしがある。

「あっ見て翔ちゃん、これ絶対似合いますよ!」

久々に服でも新調しようかと連れ立って向かった先、那月は服という服を片っ端から見回っては俺に合うか合わないか、それだけを気にしている。
折角なのだから自分に合う服も探せと言っても何が楽しいやら俺のコーディネートばかり、しかも馬鹿みたいに可愛いものを選ぶと思いきやえらく真面目でセンスがよいので咎めるのもつい気が引けてしまう。

「このタイプやっぱり流行ってるのかな、翔ちゃんのよく穿くパンツに合わせるならこっちのシルエットかなー」
「……もう好きにして」

ぶつぶつと独り言を呟きながら俺の体に服を当てて、うーん、と唸る姿はなんともおかしい。
だがこんな事が何時間も続いた頃には流石に早く帰宅したい一心であった。
結局那月の熱烈な要望でビビッドカラーのインナーと着まわしの利くパーカーを手にする。

「お前はなんも買わねーの?」
「はい、実は僕この前ピヨちゃんセーター買ったばかりで……」
「んなモン着て出かけるつもりかお前は!一緒にいて恥ずかしいわ!」

ディスプレイされたジャケットを適当に取り那月の体に当ててみる。
普段落ち着いた服装ばかりの彼には少々華美なデザインではあるが細身で長身なぶん見栄えは中々に良い。

「こっちとかさ、下ワイシャツでも結構オシャレじゃん。お前明るい色も合うと思うんだけど」
「ちょっと格好良すぎないかなぁ、翔ちゃんの方が似合うだろうし……」
「は?俺?」
「うん、こういう格好良い服は翔ちゃんにぴったりです!」

にっこり、なんて擬音が聞こえてきそうな程の笑みを浮かべる那月に思わず、言葉が詰まる。
普段あれだけ可愛い可愛い言っておいて、格好良いとか、いやあくまで洋服の話だけどちょっと嬉しいというか何というか満面の笑みで言われたら流石の俺だってさあ。

「翔ちゃん?」
「っ……いいから、お前も少しくらい冒険しろ!俺が買ってやる!」
「わー太っ腹さんですねぇ」

さっさとレジへ向かい会計を済ませる。
那月の分の袋を渡すと「ありがとう、大事に着ますね」とまたにっこり微笑まれて、その笑みがやけに可愛く見えてどうしようもなかった。
那月に買ってやったジャケットと俺の服があまりに似ていてペアルックとからかわれるのはまた別の話。



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