マサレン

昨日からもうずっと雨が降り続いていた。
窓の外、空は暗いままで空気だけではなく気持ちまでじめじめと重苦しくなってしまう。
折角のデートも雨の所為で断られてしまい暇を持て余したレンは、かといって何をするでもなくベッドでごろごろと時間を無駄に使っていた。

「あー暇だ」
「うるさい、課題をしろ」
「折角の休日にそんな事をわざわざしたくなんてないね」
「いつだろうとやる気ないだろうお前」

同じく部屋に居た真斗はぴんと背筋を伸ばして椅子に腰掛け、朝からもうずっと分厚い本に夢中でいる。
レンはちらりと視線を向けるが表紙に書かれた文字を窺う事はかなわず、つまらなそうに窓の外を見やった。
本来なら今頃ウィンドウショッピングでもしながら、ディナーの為にと小腹を空かせる準備でもしていた筈なのに。
恨めしそうに見やったところで雨は一向に止む気配を見せやしない。

「神宮寺、そもそも雨なら雨なりに屋内だけでのデートをすればよかったんじゃないのか」

本に視線を落としたまま、珍しく真斗からの問いかけ。
ごろ、と体勢を変えてレンは大きくため息を吐き出した。

「聖川、お前本当に分かってないな。レディ達にとって雨の日は服装からメイク、髪型に至るまで全てに気を使うから大変なのさ」
「……なぜ髪を気にする必要があるんだ」
「さらさらのお前には分からないって話だよ」

レンは自らの髪をひと房手に取る、艶やかな夕日色のセミロングは普段の彼の髪よりわずかにゆるいカーブを描いていた。
男のお前が気にしてどうする、と真斗は半ば呆れ気味に本を閉じるとベッドサイドに立ち、白い指で鮮やかな夕日色を掬い取った。
レンは戸惑いを隠せず、なに、と小さく声を漏らして真斗を見上げる。

「真っ直ぐでなくとも十分魅力的な髪だと思うぞ、自信を持て」
「……なんだいそれ」
「俺は嫌いじゃないって話だよ」

悪戯な笑みをひとつ残して、真斗の指先からさらりと夕日色がこぼれ落ちる。
そのひと房が頬をくすぐると同時に、レンの耳が僅かに赤らむのを視界の端で捉えていっそう真斗の口角は上がる。
レンの思わぬ一面を垣間見たようで非常に気分がいい、さて続きでも読もうかと本を手に取ったところではたと、本来挟まれているはずの栞が机の上にぽつんと置かれていることに気付き思わずさらさらの濃紺をくしゃりと掻き上げるのだった。



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