10/31 AM:07:00 (side.M)




ぱちりと目を覚ます。
ベッドサイドに置かれた時計を見やるとアラームに設定した時刻よりも数分早い時を指していた。
もっとも、今日はアラーム設定などしてはいないのだが。
いつもこうだ、規則正しい生活を心がけているお陰でのんびりと寝坊出来るはずの朝すら結局普段と変わりないサイクルを送るよう体がそのように作られてしまっている。
やや肌寒い冬の空気が頬を吹き抜け、捲り上げた布団から這い出した手足はその寒さに思わずぶるりと震えた。
部屋の対面、同室者のベッドへ視線を向ける。
羽毛の布団を頭まで被りまるで埋もれるように眠る蜂蜜色の髪の男。恐らくあと一時間は起きる気配などなさそうだ。
椅子の背にかけられたガウンを羽織ると途端に寒さはどこかへ消えた。
そのまま洗面所に向かい歯を磨いたり顔を洗ったり、少々癖のついた髪を丁寧にブローしたりとたっぷり時間をかけてみたが戻っても同室の男――神宮寺は相変わらず夢の中だった。
さてどうしたものか、と昨日の出来事を思い出す。
ハロウィンパーティーに神宮時も誘おうという話が出たのは仕方ないとして、声を掛ける役目が俺になってしまった事にあの時多少なりとも抗議すべきだったか。
クラスは別でも同室だから声を掛けるチャンスはいくらでもあると彼らは思ったのだろうが、あいにく神宮寺という男に常識は通用しない。
恐らくどこぞの女性と楽しんでいたのだろう、待てど暮らせど昨日は戻ってこなかった。
いい加減慣れはしたが言伝を預かっている身としては非常にやきもきする。こんな事なら確実に顔を合わせたであろう一ノ瀬にでも頼めばよかったと後悔した。
あと少しすれば朝食の時間、本来ならこんな男放ってとっとと食堂へ向かうところだがその間にどこかへ行かれては厄介だ。
仕方なくベッドに腰掛け読みかけの本を広げた。
ゆったりとした速度でページを捲る。時が一秒また一秒と進むたびに腹の虫が騒がしく鳴り始めるが、神宮寺は一向に起きる気配を見せない。
挙句服を着替え終えても相変わらずなので、いい加減苛立ちも最高潮となっていた。

「っ…起きろ神宮寺、いくら休日だからとそんな自堕落な生活が通用すると思うなよ!」

強引に布団を剥ぎ取れば、冬だというのに裸のまま眠る神宮寺が縮こまるように丸まっていた。
流石に寒いのだろうか、夢うつつの中掛け布団を探すように右手がもぞもぞと動く。
やがて見つからないことを不思議に思ったようで、とろんと未だ眠た気な瞳を開いた。

「こんなこんな時間まで寝こけているとはいい身分だな」
「…何で聖川がいんの」
「同室だからな、こればかりは諦めろ。あといい加減眠るときは何か着ろ」

剥ぎ取った布団を投げつける様にばふりと掛けなおせば、ぐえ、と色気もへったくれもない声が聞こえた。

「ときに神宮寺、今夜は何か予定があるのか」
「今夜?レディと昼からディナーまでのコースだねえ」

もぞもぞと布団から顔だけを覗かせた彼は、先ほどの一瞬で体を冷やしたのかぎゅっと布団を引き寄せ丸まっていた。
見下ろすとまるで毛虫みたいだ、この姿を取り巻きの女性達にも見せてやりたい。

「今夜、一十木の部屋でハロウィンパーティーをする。仮装必須だからもし来るのならその毛虫みたいな姿で来るといい」
「失礼な事を言うね……聖川、もしかしてそれ伝えるために待っててくれたの」

にやにやとした笑みを浮かべる神宮寺がやけに鬱陶しい。
仕方ないだろう、一十木達の頼みなのだから。告げようと口を開くが余計何かを言われそうな気がするので止めておいた。

「一応伝えたからな、俺は食堂に行く。精々貴様も食いっ逸れないようにしろよ」

さっきからもうずっと腹の虫は限界だった。
誰かさんを待ったせいで時間も大分押して、今日は夜までに衣装を用意せねばならんというのに。
ぶつぶつ文句を垂れながら部屋のドアを開ける。
振り向きざまに神宮寺を見やると彼はいまだにやにやと笑っていたので、そのむかつく面とおさらばするため少々乱暴にバタンとドアを閉めたのだった。


→10/31 PM:15:00 (side.T)








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