じゃれ合いは計画的に(翔那)




「…あ」

引き出しを探る手がとまる。
小さな箱、てっきり中身のあるものだと思い持ち上げたそれは見事に空っぽだった。

「…ごめん那月、ゴムもうなかった」
「え」

俺の両足の間、床へ座り込み必死に奉仕していた那月が顔を上げる。
赤らんだ頬にとろんとした目つき、ぬらぬらといやらしく光る唇に思わずぐっと唾を飲み込む。
己の動揺を悟られぬよう、視線をそらしながらこつんと空箱で彼の頭をたたいた。

「えっ…と、買い忘れてた。わりぃ」
「そう、ですか…じゃあ今日はこのままお口で、翔ちゃんのこと気持ち良くしてあげますね」

にへらと微笑む那月は、既に唾液まみれの俺の性器を両手で包むと、そっと頬摺りした。
視線を俺へと向けたまま、真っ赤な舌でぺろぺろと側面を舐め上げられる。
たったそれだけで先端からは、情けないかな先走りがあふれ出てしまった。

「あっ、あ…那月、あったかくてきもちい」
「ふふっ、かわいいです」
「可愛くねーからもっかい舐めて」
「はぁい」

順応に口開く那月の唇に、ぱくりとくわえられてしまった俺の性器。
吸い付くように窄められた唇の奥から、ん、ん、とひっきりなしに声が漏れる。
少々グロテスクな赤黒いそれが彼の咥内を満たし、蹂躙している。
唐突にその事実が、なんだかたまらなく興奮を煽った。

「…那月、やっぱベッド上がって。俺もしたい」




裸の俺とは違い、かろうじてシャツと下着をつけたままの那月。
いそいそベッドへ上がると、俺とは頭を逆方向…まぁ、いわゆるあれな体勢となるように那月は跨がった。
下着を脱ごうと伸ばされた手を、そっと制止する。
一瞬きょとんと俺を見やった那月は、ややあってその意図に気付いたのか顔を赤らめた。

「…翔ちゃん、ヘンタイです」
「べ、別にいいだろ…」

下着の上からやわやわと、那月の性器を触る。
既に大きくなり始めていたそれは、布越しの感触が気持ち良いのかぴくぴくと震えた。
那月は俺の脚を広げるように腕を這わせ、その間に顔を埋める。
ぬめり、と局部を生温かな舌が包み込んだ。

「んぅ……っふ、ん…」

那月が頭を動かすたびに、無意識なのか腰も揺れる。
それってやらしいよなぁ…なんて思ってしまう辺り、おかしいのだろうか。
那月の腰を引き寄せ、布越しに性器をついばむ。
唇ではむはむとくわえるように、側面を刺激すると
情けなくも俺のモノより一回り大きい那月のソレは、あっという間にはち切れんばかりになった。
ぴちゃり、舌を這わす。下着の湿る感覚が気になるのか、逃げるように那月は腰をわずかに上げた。

「あ、ぅ…翔ちゃん、それヤです」
「……だめ?」
「うぅ〜…」

いかにもわざとらしく、ねだる様に駄々をこねる。
別にいじめたい訳じゃないけど、こうして困った姿を見るのが案外好きだ。
那月はしばらく嫌々と腰を動かしていたが、やがて諦めたのか再び奉仕行為へ没頭しだした。
彼の細長い指が、濃厚にモノを愛撫する。
熱く柔らかな舌と相まってその刺激がなんともたまらない。

「ぁ、うわ…やばい、出そう…」
「ン…ふふ、しょーちゃんかわいいです」
「なっ……お前なぁ…」

余裕こいた那月の発言に、情けないような悔しいような。
男としてここで気持ち良くなる訳にはいかない、という変なプライドが働く。
尚も愛撫を続ける那月の、うっすら筋肉のついた尻をひっ掴む。
やんわり揉みしだけばひぃ、とかはぅ、とか変な声をあげ始める彼がなんともおかしい。
下着の裾をずらす。何かを悟ったか、くすぐったがる声はぴたりと止んだ。
きゅっと閉ざされた秘部に指をあてる。
円をなぞるように周りを刺激すれば、わずかにひくりと震えた。

「あっ…の、翔ちゃん、そこは…」
「ちょっとだけ、な?」
「…うぅ…」

いつの間にか愛撫は止まっている。ごくり、まるで期待をするように彼の喉が鳴った。
こうなってしまえばもう、主導権はこっちのもんだ。
ぱくりと、強引に肉を割り開く。
真っ赤な肉壁に誘われるように、舌を差し入れた。ぴちゃり、わざと音を立てる。

「ぁ…ダメ、ですそんなとこ…しょう、ちゃん…」

嫌々と那月が首を振る。
俺の性器に顔をうずめたままそんな事するもんだから、時々頬やメガネが当たってちょっと気持ちいい。
唾液まみれの那月のソコに指を入れる。
すんなりと飲み込んだうえ、足りないと言わんばかりにきゅうきゅうと収縮した。

「那月、ヘンタイ」
「ひどい…」
「つーか、ごめん、横になって」
「…え?」

きょとんとしながらも順応に、那月は仰向けに寝転がる。
長くしなやかな両脚を広げ、自ら支えるように促すと
ようやく事を理解したのか気まずそうに俺を見上げた。
俺はと言えばお構いなしに、ずらした下着の間に指をすべり込ませる。ぴたり、誘うように口を開けた那月のソコへと性器をあてがった。

「待って、ゴムないって…」
「イヤ?」
「いや、じゃないですけど…その…」
「たまには、このまましたい」
「うぅ…翔ちゃんのバカ…」

うらめしそうに呟く那月は、けれども声とは裏腹に俺を受け入れた。
ぐ、とほんの少し力をこめただけで後はすんなり根元まで飲み込まれてしまう。
かといって緩いわけではなく、適度な締め付けが心地よい。
ゆっくりと抜き挿しを繰り返せばずらしたままの下着が擦れて、中々悪くなかった。
腰を動かすたびに感じる、吸い付き。普段の行為にはないその生々しさに、溶けてしまいそうだ。

「あー…きもちい、俺もうやばいかも」
「しょ、ちゃん…しょおちゃん…!」

引き寄せるように自らの脚を抱えて、那月は眉を寄せる。
角度をかえて何度も、貪るように突く。下着のなかで那月の性器が、苦しそうにうずいていた。
触ってほしいのだろう。ちらちらと俺に視線を寄越すが、気付かないフリをした。
ぎゅう、とナカの締め付けがいっそうきつくなる。
限界に逆らえるはずもなく、びくびくと脈打つその奥に欲を注ぎ込んだ。




「翔ちゃんひどいです!」

眼鏡の向こう、ぐしゃぐしゃに濡れた瞳でうらめしそうに那月が俺を睨み付ける。
結局あの後すぐに那月も果て、お互い気持ち良くなれたのだからオールオッケー。
…とは、ならなかった。
てっきり愛撫がほしいのだろうと思っていた彼の視線は、実のところまったく別で。

「いつもはゴム付けてるからいいですけどね!中に出されたら後がすっっっごく大変なんです!分かってますか!」
「だから、悪かったって…」

くどい程の説教に、思わず疲弊してしまう。
大体お前だってノリノリだったくせに…ぶつぶつ呟くが、決して大声での反論は出来なかった。
まぁ、謝ったし。明日になれば那月もきっと許してくれるはず。
いそいそと逃げるようにベッドへ潜り込む。

「翔ちゃん、話はまだ終わってませんよ」
「勘弁しろよぉ…俺もう眠い」
「ダメです寝かせません!」

那月はがばりと強引に布団をはぎ取った。
が、そのまま隣に潜り込んでぎゅっと俺に抱きつく。
というよりは俺が一方的に抱き締められてるだけ、なんだけど。

「…那月、怒ってんじゃなかったのかよ?」
「翔ちゃんがまるまってるの、かわいくて」
「なんだそりゃ」

ごろごろとまるで子供みたいにじゃれついてくる那月。
もう先程のことは忘れたのか、すうすう寝息を立て始めた。
そのくせ抱き締めてくる腕はつよい。振り解こうとしたって適いっこないので諦めた。

…要するに、終わり良ければすべて良しという事で。
たまには普段と違う遊びも大事だよな、なんて自分に言い訳しながら。
大きな那月の両腕をぎゅっと抱き返して、俺は目を閉じた。



END.









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