要するに俺が、構われたい(龍レン)




猫を飼い始めた。
背丈ばかりが立派で、そのくせ大人ぶってばかりいる毛並みの良い猫だ。
甘えるように擦り寄ってくる時もあれば素っ気なく別のところへと消えていったり、俺はいつだって振り回されるばかり。
そんな我が侭猫は今、俺の隣でごろごろと丸まっている。

「リューヤさん、お腹が空いたなぁ」

遠まわしに作れと言っているその口調はあまりにも生意気で、本来なら小言のひとつでも言ってやりたいところだが俺の腹も同じようにさっきから騒がしく虫が鳴っている。
そうなると余計なことに労力を使うより素直に腹を満たすのが先なわけで。
結果、この猫を余計付け上がらせる事にしかならなかった。
作ってやった料理をうまそうに、それでもどこか上品そうな仕草で食ってはごろりと俺の膝に頭を乗せて寝転がる。
あまりの自由ぶりは一度きちんとしつけが必要かもしれない、そんな事を思いながらも見上げてくる澄んだ瞳にしかと見つめられてしまえば、その決心も容易く揺らぐもので。

「神宮寺、寝てばかりじゃ太るぞ」

せめてもの嫌味にとそんな事を言ってみればこいつは、いつの間に起き上がったかそろりと首元へ両腕を這わせ、生意気な猫よろしく俺の首筋へと歯を立てるのだった。

「いった……お前なぁ」

うらめしく見やった表情はいつにも増して生意気で、そのくせ一人前に色気を帯びた視線が向けられる。
その分、運動しようか。
どういうつもりかは知らないがそんな事を抜かすこいつに思わず、戸惑ってしまう。
これだから猫ってのは。翻弄されるのはいつだってこっちばかりで、けれどもその我が侭な態度すら可愛いものだからついつい主導権を握らせてしまう。
案の定、俺の両足の間へと腰を下ろした大柄の猫はいつもの調子で喉を鳴らしてじゃれつき始めた。

「……もう、好きにしろ」

甘やかすばかりで一向にしつけのならない猫を飼ってもう数ヶ月、それでも手放す気なんてさらさら無い。
そもそもこんな生意気なやつ、面倒見てやれるのなんて俺くらいだろう。
さわりと肌をくすぐるオレンジの長い毛並み、手持ち無沙汰の両手でそっと撫でつけながらくすりと笑えば、猫はどこか嬉しそうに、鳴くのだった。



END.









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