指先より愛を込めて(龍レン)2




髪から名残惜しそうに手を離してレンは龍也の上から降りる。
誘うような目付きで見つめながらベッドに腰掛け、少々大袈裟に長い足を組んだ。
レンの態度に、はぁ……とため息を吐いた龍也はけれども彼のそんな生意気さをどうしても甘やかしてしまう。
睨み付けるような視線を向けながらもにやりと薄く笑って、うやうやしくレンの足元に膝をついた。
突き出された脚を持ち、丈の短い靴下をゆっくりと脱がす。布の下にのぞく骨張ったくるぶしに唇を寄せてちゅっと吸い上げながら指先へ滑らせてゆけば、滅多に受けることない刺激を堪えるようにびくびくと指先を丸めるのだった。
親指と人差し指の間へ舌を這わす。途端にレンは身を引くように脚を動かすが、龍也の手に掴まれてしまっているためそれは叶わない。
じたばたと藻掻く足の裏をべろりと舐めればレンの口から、ひゃあ、とどこか情けない声があがった。

「っ…脱がすなら早く、してほしいんだけど」
「はいはい」
「リューヤさん俺で遊んでるでしょ」
「んな事ねぇよ」

レンの肩を押せばいとも簡単にその身はベッドへ沈む。下着ごと服をずり下ろせば大きい割に華奢な身体があますところなく曝け出された。
立派に鍛えられた筋肉と、まだ柔らかさを残す二の腕や内腿。醸し出される色香は大人の男と同じなのに、どこか子供らしさも同時に感じさせるアンバランスな曲線。
うっすらと膨らむ涙袋を親指で撫ぜればレンの口から明るい笑みが零れる。あがる声さえ飲み込む勢いで龍也は彼の唇に食らい付いた。

「んっ……ふ、ぅ」

鼻に掛かる吐息は今にも溶けてしまいそうだった。
レンの手が龍也のシャツに伸びる。与えられる刺激に耐えているのか指を震わせながらネクタイを引き、時間をかけてゆっくりとボタンを外してゆく。
龍也の長い舌がレンの上顎を撫でる。歯列をなぞり、絡み付く舌の根元を突けばレンの喉はひくひくと震えた。
はだけたシャツはそのままに、レンの手は龍也の腹部を撫でる。指先がカツンとバックルにあたり、どこかぎこちなくベルトを引き抜こうと藻掻く。彼の手に重なるように龍也の手が触れ、導いてやるようにベルトを外した。
ボタンを外すと同時に、吸い付くように重ねられていたレンの唇が離れる。はぁ、と吐き出された熱い息と細く伝う糸が互いを繋ぐ様はなんとも性的興奮を煽った。
レンの両手がぐ、と龍也の肩を押し上げる。
彼の視線は龍也の下半身へと向けられており、ああ、と龍也は納得したようにレンの上から退いてごろりと背をベッドに預けた。
のそりと起き上がったレンは龍也の顔の上へ股がり腰を落とす。両足を広げるように抱え込んで、ジッパーを歯でくわえた。
勿体ぶるようにゆっくりとスライダーを滑らせ、トランクスごとずらすように脱がせた。
赤黒い龍也の性器はすでに反り立っている。レンは何の躊躇いもなく舌を這わせた。
側面や裏筋を、まるで形を確かめるように舐め上げる。そのたび彼の口からは、ん、と小さく声が漏れるのを龍也は少し可愛いなと思う。
龍也の目の前ではぴんと伸びたレンの性器が愛撫を待ち望むように震えていた。
けれども龍也の指はそこへと触れる事はない。根元で震える双つの塊の後ろ、わずかに膨れ上がる部分からつうとなぞり上げるように人差し指が撫でる。
形の好い双丘の間、閉ざされたそこはこれから与えられる刺激を期待してかひくりひくりと主張する。周りを指の腹でなぞるとレンはもどかしそうに腰を揺らした。
龍也の性器を喉の奥に付くほど深く銜え込んで、艶やかな夕日色の髪がぐちゃぐちゃになるのも気にならないのか一心不乱に顔を上下させている。
かろうじて根元を支えるように置かれたレンの指は彼自らの唾液に塗れていた。時々吸い上げるような音が、ず、と立てられる。その音にすら興奮するのかレンの後孔はじわりじわりと広がってゆく。
張り詰めた彼の性器からはだらしなく先走りが溢れ出し龍也の頬を濡らした。
親指を、引っ張るように後孔にあてた。それだけでレンのそこは柔らかく広がる。心なしか内壁はぬらぬらと光って見えて、なんて素直な身体だろうと龍也はくつくつと喉を鳴らす。
そのまま濡らしもせずに親指を中へと押し入れた。いとも簡単に根元まで飲み込むと、まだ足りないとでも言うように中の肉がひくひく指の腹を押す。
ぬぷりと抜き取り、今度は二本の指を同時に挿れる。流石に痛いのか龍也の性器をしゃぶる舌先が一瞬強ばるが、内壁を押し広げるように何度か擦ると彼の唇からは気持ちよさそうな喘ぎが漏れた。

「あっ……は、あ、ひんっ」
「神宮寺、口が止まってるぞ」
「だってそこ、ダメぇ…」

龍也の指が執拗に内壁を擦る。
指先で中を引っ掻くとまるで力が抜けたようにレンの腰が落とされた。
龍也の頬をレンの性器が滑る。腰が揺れるたびに擦り付けるものだから、思わず肉のないレンの尻をばしりと叩いた。

「痛っ!」
「お前が妙な事するからだ、腰上げろって」
「…無理、力入んない」
「じゃあ退いて横になれ」

のそりと身を起こして龍也の隣へ横たわるレンの表情は、普段の勝ち気な彼からは想像もつかないほど淫らで物欲しそうな顔だった。
組み敷くように乗りあがり、レンの脚の間に身体を滑り込ませる。抱え上げた両足を龍也の肩に掛けるよう広げれば、先程まで指を幾本も飲み込んでいたソコはだらしなく口を開いた。
レンの唾液に塗れた性器をずるりと擦り付ける。無意識なのか否か、ひくひくと収縮を繰り返す赤く充血した肉が先端を誘い込むようにくわえた。
ぐ、と龍也は僅かに腰を進める。レンの指先は手繰り寄せたシーツをぎゅっと掴み、瞳を伏せてそのあまりの質量に耐えていた。
何度繰り返したところで慣れることは無いのだろう、つらそうに下唇を噛み締める彼の額には汗が滲む。龍也は浮き出る汗を指先で拭うと、白く変色するほどに噛み締められたレンの唇を舌でつついた。
宥めるように舌先でなぞるとレンは、はぁ、と息を零して体中の緊張を僅かに緩める。

「ん…いいよ、もう大丈夫だから奥まで頂戴……?」

ねだるように龍也の瞳を見上げる彼の無自覚さに内心、恐ろしいモンだと龍也はため息を吐く。
男を喜ばせる事の何たるを始めから知っているのか、俺が教え込んだ成果か。
頼むから後者であれと願いながら龍也の雄は深く深く、レンを突き挿した。




「やっぱり好きだな、リューヤさんの手」

情事後の気だるい空気の中、ごろごろとベッドに横たわるレンが龍也の手を取り呟いた。
短く整えられた爪の先に唇を寄せてちゅっと音を立てる。

「手だけかよ」
「はは、もちろん他も好きだよ。だけど手は特別」

手のひらを柔らかく噛みながら、レンは真っすぐ龍也の瞳を見つめて笑う。

「だってリューヤさん、わざわざ手入れまでしてくれてるからね」
「っ……!?」

見透かすような笑みにどこか気恥ずかしさを覚えて、龍也はさっと視線を逸らす。
その様子に一層レンはけたけたと笑った。
知られたって困ることじゃないのに、しまったと龍也は頭を抱える。同性の、こんな子供相手に慣れないことはするもんじゃなかった。
努力が報われた喜びよりも、柄にも無い気遣いを知られた恥ずかしさの方が果てしなく大きい。

「まぁ、今日のも凄く善かったけどさ……」

レンの唇がすっと龍也の耳元へ近づく。
ひと呼吸置いて、囁くようにレンの声が耳をくすぐった。

「俺、リューヤさんに対してはちょっとマゾっ気あるんだよね」

レンの瞳を見つめる。なんてこともない様に彼は目を細めて、特徴的な目尻を一層垂れ下げるように微笑んだ。
そんな事言うなら今度は伸ばしに伸ばした爪で引っ掻くぞ。
冗談めいた言葉にレンは、それは嫌かなぁ、なんて笑うけれども。
どこか嬉しそうに頬が赤らんだのを見て、いっそ鬼畜なプレイでも覚えてやるべきか、と龍也は声にならないため息を吐いたのだった。



END.









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