geloso(翔那 前提 翔砂)
ぐちゅり、いやらしい音が鼓膜を震わせます。
それと同時に僕のいやらしい部分を、翔ちゃんが何度も出入り。
目の前で繰り広げられるそれはもういやらしい光景に、僕のアタマは今にも爆発してしまいそう。
「那月…なつきぃ…」
「あぅ…しょおちゃ、んっ」
とろとろにとろけちゃいそうな顔をした翔ちゃんが、僕を見下ろしながら腰を振ります。
顔を真っ赤にして、汗で張りついた髪の毛を掻き上げながら何度も何度も。
ああ、こんな時も翔ちゃんはとても可愛いです。
腕を伸ばし抱き寄せた可愛い唇にキスをすれば、翔ちゃんはとても幸せそうに笑いました。
「…で、なんだよこの惨状は」
目を覚ました途端、広がる光景にひくりと青筋が浮かんだ。
乱れたシーツに脱ぎ散らかされた服、男独特のいかんともしがたい匂いに…下半身の、違和感。
何があったのかなんて一目瞭然だった。
もぞりと起き上がる。瞬間腰に感じる痛みに舌打ちした。
「おい、まだ体つらいだろ。寝てろって」
不意にバタンとドアの音がしたかと思えば、タオルを片手に現われたパンツ姿の"ルームメイト"。
「ほら横になれって、拭いてやるから…」
「チビのくせに、いっちょまえに気ィ利かせてるつもりか」
「……へ?」
癖のある髪を掻き上げながら、ルームメイトのチビ…もとい翔の方へ顔だけを向ける。
途端にチビは手にしていたタオルをぼとりと落とし、絶句した。
「なっ…え!?なんで砂月!?」
「知るか、寝返りうった時にでも眼鏡が外れたんだろ。それより…」
もぞり、ベッドから立ち上がる。
あらぬ場所からあらぬモノがたらりと足を伝って流れる感覚がして、あまりの不愉快さに再び舌打ちした。
ドアの前、青ざめた顔で立ち尽くすチビの目の前に立つ。
見下すように睨み付ければ、彼はただでさえ小さい体を今以上に縮こめて俺を見上げた。
ぐしゃり、チビの髪を掴み上げる。
「チビ、どういう事だこれは。テメェ那月に無理強いでもしたんじゃねーだろな」
「ごご誤解だ!那月から誘って…」
「それならそれで加減くらい出来ただろ」
ぐっ、と掴み上げる手に力を込めた。
チビは苦しそうに歯を噛み締める。こいつのこんな顔を那月が見たら、きっと怒るだろう。
それでも止めようとはしない。全ては、那月の為だから。
「事が終わった身体もそのままに寝付くほど、那月は疲れてんだ。今のあいつはちょっとした事でも気ィつけてやんなきゃいけねぇって知ってただろ」
「……悪い」
「悔しいが俺じゃずっとは那月を守ってやれない。だからお前に那月を見てやってくれって…"頼んだ"のに、これかよ」
吐き捨てるような物言いと同時に、掴んでいた手を離す。
よろめいたチビを押し退けてシャワールームへ向かうと、鏡に映った自分…いや、那月の身体が目に飛び込んできた。
あちらこちらに付けられた真っ赤な痕、こびりついた精液。
唐突に沸き上がるどす黒い感情。
こんなに好きなのに。俺は鬱血すら付けられない存在。
どうして那月と身体を隔てる存在になれなかったのか。
那月が誰を思っているのか、誰を求めているのか知っている分なおさら悲しかった。
そいつが本当は那月の事をとても大事にしているってのも、俺は知っているのに。
「…嫉妬なんて、するタマじゃないと思ってたんだがな」
自嘲気味に呟き、シャワールームのドアを開ける。
蛇口をひねれば流れ出る水の冷たさが少し、心地好かった。
「…あのさ、砂月」
ややあって遠慮がちに、ドアの向こうから声がする。
きゅっと蛇口をひねると、わずかな余韻を残して水がとまった。
がちゃり、開けた扉の前ではチビが気まずそうにこちらを覗き込む。
心なしか視線はキョロキョロと泳いでいた。
「その、いくら砂月でも身体は那月だろ。つらいんじゃねーかと思って…」
歯切れの悪い言い方。
確かに身体はギシギシと重い、だからと言ってシャワーを浴びてすぐ寝ればいいだけの事じゃないのか。
チビの言わんとするところがよく分からずつっ立ったままで居ると、その横を擦り抜けて彼は中へ入ってきた。
「おい…まて、何」
「いやだから、一人でその、後始末も大変だろうと思って」
「…後始末」
反芻して、唐突に気付く。
先程から垂れてくるモノは。
「っテメェ…!」
「仕方ねーだろ、文句は那月に言えよ!」
「出しやがったのはてめえだろーが!」
ああ、最悪だ。
分かってはいても意識しないようにしてきた、その生々しすぎる現実。
那月の、いや俺の、デリケートな場所が今まさに抱えている大問題。
「別に砂月が、自分で出来るんならいいけど」
「…無理だ」
「えっ」
シャワーを手にしたチビが、怪訝そうな顔で振り向く。
そんな顔すんなよ仕方ないだろ、だって俺。
「…男とシた事、ねぇよ。後始末の方法なんて知るわけないだろ!?」
壁についた両手が、震える。
腰を突きだすように俯けば、屈辱感と羞恥心で思わず顔が熱を帯びる。
くそ、何でこんな狭い場所に二人きりで、こんな事態になってるんだよ。
背後で視線の置場に困っているらしいチビは、やがて意を決したように大事な部分へ指をあてた。
一呼吸置いて侵入してくるその感覚に、思わず息を呑む。
「ひっ…!」
何だこれ、何だこれ。
痛みはない、嫌悪とも違う、ただひたすらに言い様のない不安が込み上げる。
チビの細い指がもう一本、ぐぷりと押し込まれた。
「っぐ…!」
張り詰めた呼吸、胸が苦しい。脈打つ心臓の速さですべてが押しつぶされてしまいそうだった。
こんな感覚知らない、何だこれ。膝がガクガクと震える。
奥まで挿し込まれた二本の指が、わずかに曲げられる。そのまま抉りだすようにずるり、と指が引き抜かれた。
とろり、大量の精液が流れ出る。
チビの、あいつの精液が。
どこから?あそこから、那月の、俺の、あそこから。
訳が分からない。俺と那月は違うのに、まるで俺があいつにそんな事されたみたいな感覚。
ぐぷり、再び奴の指が入る。
先程とは違う角度で、内壁をこすりながら引き抜かれる指。
どろどろ掻き出される精液、精液。
「あっ……」
ナカを撫でる指の動きから、意識を離せない。
ぐちゅりと擦られた粘膜は無意識に、奴の指に吸い付く。こんな、誰かを求めるような感覚、初めてだ。
後ろを振り返る。
気まずそうに、恥ずかしそうに、でもどこか満足そうに。俺のナカを抉りながら息を荒げるチビの、瞳。
その目に映っている姿は間違いなく…俺だった。
「…翔…」
「……えっ?」
彼の名を呼ぶ。
驚いた様にこちらを見つめた、その両の瞳に映った俺は。
とても淫らな姿を、していた。
「指じゃなくて、お前のソレ……挿れて、"翔ちゃん"」
ぐちゅり、いやらしい音が鼓膜を震わせる。
それと同時に俺のいやらしい部分を、翔が何度も出入り。
目の前で繰り広げられるそれはもういやらしい光景に、俺の頭は今にも爆発してしまいそう。
「砂月…さつきぃ…」
「んっ…しょう、翔…!」
バスタブに背中を預けて喘ぐ俺を、今にもとろけそうな顔をしたチビが見下ろしながら腰を振る。
顔を真っ赤にして、汗で張りついた髪の毛を掻き上げながら何度も何度も。
ああ、こんな風にお前は抱かれているのか、那月。
感覚の共有に喜び、それでもどこか嫉妬心は捨てきれない。誰に?あのチビに?それとも…
腕を伸ばし、頭を抱き寄せる。
は、は、と浅い息を繰り返す唇を塞いだ。
ちゅ、軽く触れ合わせただけのキス。
だめだ、物足りない、もっとくれよ。求める唇に彼の唇が近付き…触れ合うことなく、静止した。
「これ以上は本気のキスだから…だめだ、砂月」
寂しそうに、彼は笑う。
生まれて初めて俺は那月に嫉妬した。
END.←