平和島くんの花嫁候補・1

ー来神シズイザ ♀
静雄の母親=静香さんが出てきます。


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平和島くんの花嫁候補


来神に入学してから毎日のように行われていた俺、平和島静雄と見た目だけは極上の女、折原臨也の鬼ごっこ。
顔を会わせれば互いに悪態をつき鬼ごっこが始まる。そして無意識に手加減しているのか俺はやたらとすばしっこい臨也を取り逃がしていた 。
大抵は臨也が先に何か仕掛けてくるのだが
今日はめずらしく何も仕掛けてこなかった。

物足りなさを感じつつ平和に越したことはねえな。と思いながら学校を後にし自宅への道のりをのんびりと歩く。明日は土曜で休みだしごろごろすっかなぁ、と明日の予定を考えていれば進行方向約100メートル先、本日学校で姿を見せなかった臨也が眉間にシワを寄せて俺を睨んでいる。あからさまにピリピリとしたオーラを放ちながらすげえ睨んでやがる。

睨んではいるものの動く気配はないようなのでスタスタと歩いてさっさと臨也の横を通りすぎようとした。のだが1メートルほど前に差し掛かったとたん臨也はお得意のナイフ、ではなく鞄を振りかざし俺に叩きつけてきた。

「臨也てめえ今日は大人しくしてたと思ったら…。」

「死ね!バカ!!」

「あ?」

「さっさと死んじゃえバカバカバーーーーか!!」

ばしばしと鞄で俺を叩く臨也。いつもならナイフで切りつけて良く動く口であーだこーだむかつくことを言うくせに今日は死ね!とバカ!を連呼している。

あまりにいつもとは様子が違うので仕方なくばしばし鞄で殴られてやりながら臨也を観察する。駄々をこねる子供のように鞄を振り回す臨也はどこか必死だ。

しばらくすると、人を散々ばしばし殴っておいて疲れたのか鞄を持った腕をだらりと下げた臨也がぜぇぜぇと息をはく。

「っはあ。ぅ、しずちゃんのばか…。」

「てめえはさっきからバカと死ね以外言えねえのかよ。いざ…。」

ふと視線を俯いていた臨也のつむじから下に下げれば視界に赤い筋が入った。
臨也のプリーツスカートからスラリと伸びる細くて白い太ももに伝う赤い血。
ギョッとした俺が思わず臨也の肩を掴んで顔をあげさせれば真っ青な顔をした臨也が瞳に涙をためていた。
泣くほど痛い癖になにしてんだコイツは。

「ばか野郎お前怪我してるくせに何やってんだ!」

「は?シズちゃん何いって……怪我なんて、してな……。」

最後まで言い切らずに臨也の身体がフラりと傾きそのまま俺の胸へと倒れ込む。

「臨也?」

「……。」

「おい、臨也!?」

気を失った臨也はぐったりとしていて、しかも足には血が伝っていて…。

焦った俺はとりあえず臨也を横抱きに抱えあげると一目散に自宅を目指した。

始めてた抱えあげた臨也の身体は驚くほど華奢で軽かった。








「おふくろ!!!!」

「あら、おかえりなさい。ってあらあら?」

「臨也のやつ足から血出てて、泣きそうだなとか思ったらぶっ倒れて、顔真っ青で、血出てるし軽いしぐったりしてっし!!」

「はいはい、落ち着きなさい。」


慌てて臨也を連れ帰った自宅ではおふくろがリビングで洗濯物を畳んでいた。弟の幽はまだ帰っていないらしい。

臨也を抱えた俺を見て一応は驚いたものの、状況を察してくれたらしい、畳んであったバスタオルをソファに広げるとここに寝かせなさいと指示した。

「おふくろ…」

「ああ、とりあえず静雄は買い物行ってきてちょうだい。」

着替えさせてあげないといけないからあんたは丁度いいからお使いに出ていけ。と、おふくろはさらさらと簡単なメモを書くと財布と一緒に俺に押し付け邪魔だからさっさと行った行ったと追い払うようにして家から追い出した。

メモの内容は頭痛薬で有名な某イ○゛とプリンとボックスティッシュにトイレットペーパー。ティッシュとトイレットペーパーなんて明らかにかさ張って自分で買うのは面倒だから押し付けたとしか思えない。

コンビニでプリン買ってそれから薬局だ。

おふくろの落ち着きようからするとたぶん臨也は大事ないようだ。俺も家に戻るまでに落ち着こう、とおとなしく買い物に行くのだった。





買い物を終え、家に帰れば臨也は未だにソファで寝ていた。顔色は相変わらず悪いままで眉間には辛いのかじゃっかん皺がよっている。夕飯の用意をしていたおふくろにプリンと薬を手渡せばありがとうと受けとり冷蔵庫にプリンをしまいに行きすぐにリビングへ戻ってきた。

「なあ、こいつ怪我大丈夫なのか?」

キツそうな面してる…と続ければおふくろはケロリとした様子で俺を見て笑う。

「怪我なんてしてないわよ。この子。」

「は?でも血が…。」

「鈍いわねえ、あんた。生理よせ・い・り・」

「せっ…!!」

男の俺には全く縁のない女子特有の月のモノ。保健の授業で昔習いはしたものの男の俺からすればそんなもの本当に存在するのかという程度の認識だ。
臨也も生物学上女なわけで当然生理くらいある。当たり前だ。しかしその当たり前が普段からは全く感じられないだけあって今俺が受けた衝撃は大きい。

「ところでこの子の名前は?」

「臨也。」

「臨也ちゃんね。じゃあ静雄、とりあえず臨也ちゃんあんたの部屋に運んであげなさい。風邪引くといけないしちゃんとベッドで寝かせてあげなきゃ。」

「おう…。」

おふくろに言われて再び臨也の軽い身体をそっと抱き上げる。
振動で起こさないようにとなるべくそっと階段をあがり自室に入れば後ろからついてきたおふくろがテキパキと布団を整えてくれた。そしておふくろが一階に戻っていき部屋には俺と臨也の二人きりになった。

俺の布団で臨也が寝るなんて日が来るとは…。

ベッドの下に腰を下ろして眠る臨也を観察しながら、こいつが目覚ましたらどうすりゃいいんだ?とぼんやり考えるのだった。





続く★
…………………………

もうちょい先まで書けてますがここが区切りいいので。ちなみにこの話はにょたあんそろに寄稿したシズイザ♀の元となるお話です。時系列的にこのお話が先。

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