曇天の下

私が曇家に居候して
もう5年も経つ

そして天火に恋をして
4年になる


天火と恋人になって
2年にも…なる…










『笑え!!』


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「…おかえり白子」


俯いて悲しい表情をした白子が帰って来た


「……本当に良かったの?」

「え…?…何が?」

「……天火の最期を…」

「…………いいの」



私は短く答える事しか出来なかった


「だって、空丸や宙太郎の方が悲しいのに
私まで悲しくなっちゃったら…なんか…駄目な気がするから…」

「………」



重々しい沈黙が居間に流れる
私の手が震える


「…さってと、お夕飯の準備しないとね」


沈黙に耐えきれず、私は席をたち
白子の横を通り抜け台所に向かった


「…天火の最期……か…」



実感が湧かない
だって"天火"だもん
あの天火がこの世から…消える…なんて…



「…はぁ…」


どこか悲しい気分になっても、私の口から溢れるのは
嗚咽じゃなくて溜め息


「…今日は空丸と宙太郎の好きな物を作らないと、ね」



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あれから数日
私は未だに涙も見せていない

だけど笑顔も見せていない

「陽…陽は天火の事…好きだったんだよね?」

「…"だった"じゃないよ…今も好き」

「…そっか…ねぇ…

俺陽の事好きだったんだよね」


白子の目付きが変わり
押し倒されて首筋に唇を這わせられる


「し、らす…?や、止めてよっ…私は天火が…」

「天火はもう居ない」


その言葉にズキリと胸が痛む


その間に白子の手は
私の着物の帯を解く


「やっ…やだやだっ、止めて…!!助け…助けてっ…天火!天火ぁっ!!」









「…ほら」

「っ…え…?」


白子の手が止まり
優しく私に声を掛けた

「天火を呼んでも天火はもう来てくれない」
「あ…ぁ、っ……」

「泣いたっていいんだ…喪失の悲しみなんて…堪えなくていいんだ」

「っ……て、か…天火っ…天火ぁぁぁぁ」


やっと悲しさが芽生えた
私は白子に縋りつき、子供みたいに泣きじゃくった




白子が教えてくれた
天火の最期の言葉

『笑え!』

私も…また笑えるようになるかな…



『空丸…宙太郎…白子…みんな……陽…愛してる』

END


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