アスベルたちといっしょ!
「ソフィ、こんなところにいたのか。」
「アスベル。」
「ベルにぃだぁ!!」
「ルーク?
ソフィ、ルークと一緒にいるなんて珍しいな。」
ソフィを捜していたアスベルはバンエルティア号の甲板で見つけ、声をかけた。
すると、ソフィの背後からルークがひょこっと顔を出してきた。
それに気付いたアスベルは目を丸くした。
「ソフィねぇとね、おはなのたねをうえてたのっ!」
見てみて!と言いながらルークはアスベルに小さな植木鉢を見せてきた。
「私のはね、これだよ。」
そしてソフィも嬉しそうにアスベルに自分の植木鉢を見せた。
「2人とも、どんな種を植えたんだ?」
「おれはね、セレニャのたね!」
「私はね、クロソフィの種だよ。」
「セレニャ…?」
「アスベル、たぶんセレニアの花のことだと思うわ。」
「シェリア!!」
「シェリねぇ!みてみて〜!!
おれがうえた、セレニャのたね!」
「シェリア、私も植えたんだよ。
芽が出るように、頑張るね。」
「ふふっ、2人はいつの間にか仲良くなってたのね。」
「うん。
ルークと一緒にいるの、楽しいよ。」
「おれも、ソフィねぇといっしょ、たのしいよっ♪」
えへへ、と笑い合う2人は自分達が植えた種の話を楽しそうにしていた。
「シェリア、何か用があったんじゃないのか?」
「あ、特に予定がなかったから、クエストにアスベルとソフィを誘おうかと思って捜していたの。」
「え?
じゃあ…、」
「でも、今日はやめたわ。」
「…?」
クエストを一緒に受けるために、アスベルとソフィを捜し、誘いにきたシェリアだったが、クエストを受けるのをやめた、と言った。
アスベルはその理由が分からず、思わず首を傾げた。
そしてアスベルが不思議に感じていることを察したシェリアはソフィとルークの方に視線を向けたまま、口を開いた。
「だって、ソフィとルークの邪魔はできないわ。
あんなに楽しそうなんだもの。」
そう言いながら2人を見つめるシェリアの目はとても穏やかで優しいものだった。
「確かに…。
ソフィ、いつもよりイキイキしているように感じるよ。」
「まるで姉弟みたいよね。」
「ああ。」
シェリアに言われ、ソフィとルークを見れば、ソフィがいつもより楽しそうで、シェリアの言う通り今の2人の邪魔は出来ないと感じてしまう。
「ソフィねぇ、おれのたねがね、はなをさかせたら、ソフィねぇにプレゼントするねっ!」
「ほんとう?」
「うんっ!」
「じゃあ、私も花が咲いたらルークにあげるね。」
「じゃあ、こうかんだねっ!」
「うん。
絶対に花を咲かせて交換しようね。」
「うんっ!!
おれ、がんばって、せわするねっ!」
キャイキャイ騒ぐソフィとルークは、今の種が花を咲かせたら次はどんな種を植えるかで盛り上がっていた。
「ヒューバートは…元気にしてるかな…?」
「アスベル?」
「ソフィとルークを見てたら、ヒューバートは今、どうしてるのかが気になったんだ。」
「…ヒューバートのことだから、元気にしてるわよ。」
「そうだな…。」
ソフィとルークを見て弟のヒューバートのことを思い出したアスベルは少し悲しそうに笑った。
「ベルにぃ!!」
「Σ…わあっ!?」
ついつい感傷に浸ってしまっていたアスベルにルークは飛び付くように抱きついてきて、アスベルは驚きの声をあげた。
「ベルにぃは、ソフィねぇと、おれと、どっちがはやいとおもう?」
「早い?走るスピードのことか?」
「ううん。
ルークと私のどっちが早く花を咲かせられるかな?」
「2人が頑張って世話をした分、きっと早く花を咲かせると思う。」
「ソフィねぇ、がんばろーねっ!
ベルにぃは、なにか…うえないの?」
「俺?」
「うん、アスベルも一緒に何か育てよう。」
「ベルにぃと、ソフィねぇと、おれと、いっしょにそだてよう♪
きっと、たのしーよっ!!」
「そうだな…。
じゃあ、一緒に何か育てようかな。」
「やったー♪
じゃあね、ロックシュに、あたらしいやつをもらってくるっ!」
「私も行く。」
「ベルにぃもいっしょにいこっ!
シェリねぇは、しんぱんねっ!」
「私は審判役なのね?
わかったわ。」
「いこいこっ!」
「ルーク、そんなに引っ張らなくても一緒に行くから!」
ぐいぐい引っ張られながらバンエルティア号内に入っていったアスベルたちの後をゆっくり追いながらシェリアは嬉しそうに笑った。
「ヒューバートのことを思い出して寂しそうにしていたアスベルを、ルークは簡単に変えてしまったわね…。」
気持ちが落ちかけたアスベル。
だが今は、ルークと楽しそうに笑っている。
それを見たシェリアはルークに感謝した。
「ベルにぃ!!
チキンのたねはあるかな?」
「チキンは花じゃないから、無理だろうな…。」
「じゃあ、エビ!」
「エビも花じゃないから…。」
「むぅ…。」
「じゃあ、イチゴは?」
「イチゴ!イチゴのたねはあるの!?」
「ロックスが持ってたらだけど、もし持ってたらイチゴの種を植えるよ。」
「あのね、もしイチゴになったら、ちょっとちょうだい?」
「わかった。」
「ベルにぃ!!やくそくだよ!」
「ああ、やくそくだ。」
「アスベル、私も。」
「ソフィとも約束だ。」
「「えへへっ♪」」
約束を交わす3人を見つめながらシェリアは、思わずクスリと笑った。
「(こうして見てると3人とも、兄弟に見えるわね…。)」
微笑ましいその光景にシェリアは少し離れたところで3人を見守った。
***
「ルーク、なんだそれは?」
「あっ、アシュにぃ!
おかえりっ!!
あのねっ、ソフィねぇと、こうかんなのっ!
それで、ベルにぃは、イチゴなの!!」
「それを育てたら交換するのか。
イチゴは交換しないのか?」
「うんっ!
ベルにぃ、やさしーもん!!」
「……そうか。
よかったな。」
「…今のルークの言葉の意味をよく、アッシュは理解出来たわよね…。」
「アッシュとルークは兄弟ですもの♪
わたくしも、ルークとアッシュくらい、心を通わせたいですわ…。」
傍目から見て、何を言ってるのかわからないルークの言葉を正確に理解しているアッシュをティアは感心したように見つめた。
余談だが、アスベルに対抗心を燃やしたアッシュはリンゴを育てようとして、アンジュにどこにリンゴの木を植えるんだと、強制正座させられた挙げ句、1時間ほど説教されたのだった…。
※※※
前回よりは、兄ちゃんヒドイ目に遭ってない…よね?
しかし、まあ…アッシュさん、本当にごめん。
いつか…報われるよ!
……たぶん。
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