再会と懐かしい唄


Nと共に旅をすることになったサトシたちはとある港町へとやって来た。

その町の広場にある壁画が見たいと言うNの申し出により、一行は広場に向かった。



「Nさん、ここは?」
「サトシくんはカントーから来たみたいだから知ってるかもしれないけど…、この町はあるポケモンを神と崇め、信仰している町なんだ。」
「神と崇められるポケモン…。
ドラゴンポケモンかな!?」
「本当にアイリスはドラゴンポケモンが好きだよね…。
まあ、アイリスのビンテージだから、当然のことだけどね。」
「あっ、あれじゃないですか?」



そんな会話を交わしていると、壁画を見つけたサトシが声をあげて、その壁画のある場所へ駆け寄った。



「もう、本当に子供ね!
待ちなさいよ、サトシ!!」



Nたちを置いて先に走っていったサトシにアイリスは呆れながらも声をあげた。
しかし、壁画の前で立ち止まったサトシは何も言葉を発することなく、まるで立ち尽くしているかのようだった。

その様子を不思議に思いながらも、Nたちも壁画の前で立ち止まった。



「見たこともないポケモンね…。」
「Nさんは、このポケモンの名前は分かるんですか?」
「いや、僕も名前までは…。」
「ルギア…。」
「「「えっ…?」」」



壁画に描かれたポケモンの正体が見たこともないもので、首を傾げる3人。
しかし、サトシだけはぽつりと呟いた。
聞いたことのないポケモンの名前に首を傾げるデントとアイリス。

しかし、Nだけはその名前に心当たりがあり、少し驚いた様子はそのままに言葉を発した。



「確か…、海の神と呼ばれるポケモンだったと思う。
この壁画に描かれたポケモンがルギア?
でも、サトシくんはどうしてそれを?」
「……えっと、たまたま…というか…。
でも、…なんか懐かしくなってきたな、ピカチュウ。」
「ピッカァ。
ピカピ、ピカピカチュ!!」
「えっ?ピカチュウ?」



懐かしそうに目を細めるサトシに、ピカチュウは何を思ったのか、いつもの定位置のサトシの肩から飛び降りると、突然駆け出していってしまった。

意味が分からずにいるサトシにNはピカチュウが海に行こうと誘っているのだと告げた。

Nの言葉に、サトシは目を見開いたあと、ピカチュウのあとを追いかけ、Nたちもそのあとに続いた。



「ピカピ!ピッカチュウ!」
「これは…。」



ピカチュウのあとを追いかけたサトシ。
ピカチュウは町の外れにいて、サトシたちを待っていたかのように、そこにいた。

サトシはピカチュウのいる場所を見て、驚きに目を見開いた。

少し廃れてしまっているが、そこはオレンジ諸島を旅した時に3つの宝を集めて、おさめ…、フルーラが笛を吹いたあの場所とそっくりだったのだ。

さすがにその先に炎の島、雷の島、氷の島は見当たらなかったが、それでもあの時のことを思い出すには十分な場所だった。



「ずいぶん廃れた場所だね…。」
「かなり昔からある場所のようだけど…。」
「でも、どうしてここに?」

「〜♪…〜〜〜♪」



ピカチュウが、この場へ誘った理由が分からず、戸惑う3人。
しかし、そんな3人の気も知らず、サトシは鼻歌を唄い始めた。



「サ、サトシ…?」



突然、鼻歌を紡ぎ始めたサトシに、本日何度目かも分からない戸惑いを覚える3人。
しかし、サトシは目を閉じてただ、その歌を唄いつづけた。

途中まで戸惑っていたNたちも気付いたら名前も知らないその鼻歌を聞き入っていた。



『…〜〜♪』



すると、サトシが唄う鼻歌と同じ声が響き渡った。

その声にサトシも唄うのを止め、閉じていた目を開いた。

その視線の先に竜巻が巻き起こり、Nたちは思わず身構えた。



『優れたる操り人、サトシ。』
「…ル、ルギア!?」



竜巻が消え、現れたのは一体のポケモン。
それを見たサトシは驚きの声をあげた。



「ど、どうしてここに…!?」
『サトシ、お前が私を呼んだのだろう。』
「へっ?
あ、フルーラの笛の音の鼻歌のことか!?
いや、それにしたってここはイッシュ地方だぜ!?
オレンジ諸島からどれだけ離れていると思ってるんだよ!?」
『この世界は全て海で繋がっている。
私は海の神。
この程度のこと、造作もない。』
「えっ、ええ?」
『私を呼んだのは、お前だぞ、サトシ。』
「まさかルギアが姿を見せるとは思ってもいなかったんだよ!
懐かしくなって、鼻歌は唄ったけど…!
この唄を知っていたらどこでも誰でも姿を現さなきゃいけなくならないか!?」
『私を呼べるのは、優れたる操り人…、サトシ。
お前だけだ。』
「そ、そうなのか?」

「サ、サトシ…?」
「お取り込み中のところ、申し訳ないんだけど…ちょっと…いい?」



ルギアとの会話に気を取られていたサトシは、デントとアイリスに声をかけられ、我に返った。
ルギアの登場に気を取られ、3人のことをすっかり忘れていたのだ。
振り返ってみると、戸惑った様子の3人がいた。
Nにいたっては、目が点になるほど驚いている。



「そのポケモンって、壁画に描かれたポケモンよね?」
「ああ、そうだけど?」
「サトシはどこでそのポケモン…ルギアと?」
『サトシがオレンジ諸島を旅していた時、世界に危機が訪れた。
サトシはその時、優れたる操り人となって世界を救ったのだ。』
「世界を救った…?」
「サトシが…?」
「そんな大層なものじゃないって!
あの時は、ただ必死だっただけだし!」
『だが、命を懸け、世界を救ったことに変わりはない。
私を狙う者の攻撃を私と共に受け、意識を失いながらも、己の役目を果たしたこともまた事実。
サトシ、あの時は言えなかった礼を今、ここで言わせてほしい。
ありがとう、サトシ。』
「俺の方こそ、ありがとう。
あの時、ルギアが力を貸してくれたから、ファイヤー、サンダー、フリーザーの怒りをしずめることができたんだから。」



そう言って笑うサトシに、ルギアも目を細めて笑った。
そしてそのあと、体をサトシの前に屈めてみせた。



「…ルギア?」
『あの時のように、私の背に乗れ。』
「いいのか?」
『あれから、どのような旅をしたのか聞かせてくれ。』
「…うん!!
ピカチュウ。」
「ピッカ!」



ルギアの言葉に嬉しそうに笑ったあと、サトシは親友を呼んだ。
呼ばれただけでその意図を察したピカチュウはいつもの定位置…サトシの肩へと飛び乗った。

そして、それを確認したルギアはバサリと羽ばたくと空へと舞い上がった。

サトシはルギアと再会できたことによる喜びが強くて気付いていないようだが、Nたちはただ呆然としている。
見ているこちらが思わず笑ってしまうほどだ。

ルギアと共に空の散歩に行ってしまったサトシを見つめながらNは口を開いた。



「ルギアと、知り合いだったなんて…思いもしなかったな…。」
「サトシって本当に不思議なトレーナーよね…。
あの調子じゃ他にも伝説のポケモンに会ってるんじゃない…?」
「さっきも、さらっとファイアー、サンダー、フリーザーの名前を口にしてたしね…。」



N、アイリス、デントは頭が全くついていけないその展開に動揺しつつも、なんとか言葉を発したが、それも力のないものとなってしまった。

そして、それからルギアと思う存分話して、楽しかったー!と言って満足気に別れたサトシを待っていたのは質問の嵐だった。

そしてサトシの口から語られた伝説、幻、神と呼ばれるポケモンの遭遇率に頭から煙をだして倒れたアイリスと、驚きすぎて瞬きを無駄に繰り返すデントとフリーズして動かなくなったNの姿があるポケモンセンターで目撃されることになる。

End

※※※

サトシくんって、伝説、幻、神と呼ばれるポケモンに会っても自分からめったに言いませんよねー。

聞かれたら、答えるけど「え?なんかすごいことなのか?」とかキョトンとした顔で言ってそう!!

それがサトシくんなんだぜ!!
Nさんもびっくり。

あれだけ遭遇しているのに、一体もゲットしてないのも私はびっくりですが。

朝霧様、このような駄文でよろしければお持ち帰りくださいです!!
リクエストありがとうございました!

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