君の魅力


「やめろっ!!
ヨーギラスが苦しんでるじゃないか!!」



旅の道中、サトシたちはプラズマ団と遭遇した。
プラズマ団が色ちがいのヨーギラスを容赦なく攻撃している現場に出くわしたのだ。
ぐったりとしているヨーギラスを捕えようとしたプラズマ団からサトシは身を挺して庇った。



「サトシッ!!」
「おっと、これ以上邪魔されたら困るからな。
それ以上、動くなよ?」
「くっ!」
「どうしてこんなヒドイことするのよ!?」
「実験に使うからに決まってるだろ?
色ちがいのヨーギラスがこの辺にいるっていう情報を仕入れて来てみれば、情報通り。
捕まえようとするのは当然のことだ。
お前たちだって、ポケモンをゲットするために弱らせるだろ?」
「ふざけないでっ!
あんなの卑怯以外のなにものでもないわよっ!!」
「ヨーギラス一体に5人でけしかけるなんて…マナーもモラルもあったものじゃない!!」
「ふっ。
好きに喚いてろ。
邪魔をしたお前たちもだが、まずはあの黒髪のガキを料理してからだ。」
「サトシにヒドイことしないでっ!!」
「アイリス、僕たちも戦おう。
サトシを助けないと…!」
「うんっ!!」



サトシの元に駆け寄ろうとするも、3人のプラズマ団に邪魔をされ、デントとアイリスはモンスターボールを手に強く睨み付けた。

ヨーギラスを執拗に追っているプラズマ団は5人。
そのうちの3人は足止めのためにデントとアイリスの方にいるが、残りの2人はサトシ1人で相手にしなければならない。
更に、ヨーギラスを庇って怪我をしているサトシのことが気がかりだ。

とにかく早くサトシの元に向かわねばと、デントとアイリスはそれぞれ、ポケモンたちを繰り出したのだった。




***



「…っ、ピカチュウ!“10万ボルト”!
チャオブー!“かえんほうしゃ”!!」
「ピッカー!」
「チャオ!!」



デントとアイリスがバトルをしている頃、サトシはヨーギラスをプラズマ団から守るように抱き締めながら、ピカチュウとチャオブーに指示を飛ばしながらバトルをしていた。



「ココロモリ、“ちょうおんぱ”でピカチュウとチャオブーを押さえ込め!」
「コロー!」
「ダストダス、あのガキに向かって“ヘドロばくだん”!」
「あぐっ…!」
「ピカピ!!」
「チャオー!?」



プラズマ団はピカチュウとチャオブーを戦闘不能にすることを目的としておらず、“ちょうおんぱ”でピカチュウとチャオブーの動きを封じている隙にサトシへと攻撃をしかけた。

ヨーギラスを守るために受け身もとれずに、サトシはダストダスの攻撃をまともに受けて飛ばされた。
地面に叩き付けられる瞬間もサトシはヨーギラスにその衝撃がいかないように守ったために、ダメージも相当大きなものとなってしまった。



「ピカピ!!」
「チャオチャオ!!」



地面に叩き付けられたサトシは意識を失っていて、ピカチュウとチャオブーはサトシの元に駆け寄りながら涙を流した。

だが、プラズマ団が情けなどかけるはずもなく、サトシの方に気をとられて無防備なピカチュウとチャオブーに向かって追撃をしかけてきた。

ピカチュウとチャオブーが気付いた時にはもうすでに技を放って相殺することも出来ない状況でピカチュウとチャオブーはギュッと目を閉じた。

その時だった。



「エレキブル!“まもる”!!」



そんな声と共にピカチュウとチャオブーの前に立ち、エレキブルがその攻撃から守ってくれたのは。



「ピ、ピーカ?」
「久し振りだね、ピカチュウ。」



困惑するピカチュウに声をかけてきた1人の少年。
その少年を見て、ピカチュウは目を見開いた。



「なんだ、テメェ!?」
「…ロケット団といい、君たちといい、本当に見るに耐えない集団ってのはどこの地方にも存在するものなんだね。」
「なんだと!?」
「…サトシを傷付けた罪は重いよ?」
「ガキが、1人増えたところで怯む必要なんてねぇ!」
「たたみかけてやれば、そこに転がってるガキと同じ運命を辿ることになるぜ!」
「…カメックス!君もいってくれ!」



プラズマ団の挑発にも乗らず、シゲルは腰のモンスターボールを1つ取り出すと、カメックスを繰り出した。

それからはもう、圧倒的としか言いようがないバトルとなった。
カメックスの“ハイドロポンプ”一撃であっさり戦闘不能になったココロモリとダストダス。
更にエレキブルにはデントとアイリスが戦っているプラズマ団のポケモンたちに“かみなりパンチ”をお見舞いし、こちらも一発KO。
あっさりとやられてしまい、プラズマ団たちはお決まりの捨て台詞をはいたあと、逃げるように立ち去っていった。



「え、えっと…ありがとう。」
「たまたま通りがかっただけだ。
気にしないでくれ。
それより、サトシのダメージが大きすぎるな…。」
「サトシと知り合いなんですか?」



ヨーギラスに傷薬を使い、意識を失ったままのサトシの体を負担にならないようにゆっくり起こしながらのその言葉にアイリスがそう問いかけた。



「ああ、僕の名前はシゲル。
サトシと僕は幼馴染みなんだ。
僕もマサラタウン出身でね。
イッシュには研究のために訪れたんだけど…まさかこんな現場に出くわすとは思いもしなかったよ。」
「そうだったんですか…。」
「それよりも、どこかサトシとヨーギラスを休められそうな場所はないかな?
僕はイッシュに来たばかりでまだ土地勘もないんだ。」
「あ、それならこの先に小さな小屋があったと思うよ。」
「そうか。
じゃあ、そこでサトシの手当てをしよう。」



シゲルにそう言われ、デントとアイリスはシゲルと共に意識を失ったままのサトシを心配そうに見つめながら、小屋へと向かった。



「…どうやら、毒にやられてるみたいだね…。」
「毒消しってあった?デント。」
「いや、人間用のものはないんだ…。」
「えーっ!?
もう!私が毒に効く木の実を採ってくるわ!」
「じゃあ、僕はサトシの看病をしてるからよろしく頼むよ、アイリス。」
「木の実を採ってくるのは、私よ!?
そのあとは、私が看病するからね!」
「何をいってるんだ、アイリス?
僕の方が知識もあるんだ。
僕の方がサトシの看病をするにあたって、最適な人材だと思うけど?」
「知識がある?
毒に効く木の実も知らないくせに何言ってるの!?
サトシの看病は私がするの!ね!?キバゴ!」
「キ、キバ!」
「ほら、キバゴだってそう言ってる!」
「無理矢理頷いてる感がハンパないじゃないか。
とにかく、僕がサトシを看病するから。」
「私がするったら、するの!」
「僕だ!」
「私よ!」



サトシの看病を誰がするかで揉め始めたデントとアイリス。
その言い争いはどんどんヒートアップしていく。

今まで、サトシの怪我の手当てをすることに集中していたシゲルだったが、後ろでギャーギャー騒ぐ2人にぷちっと堪忍袋の緒が切れる音がした。



「…エレキブル。
あの2人を追い出してくれ。」
「エレッキ!」



シゲルは怒りからか、いつもより低い声でエレキブルにデントとアイリスを追い出してくれと頼むと、エレキブルもシゲルと同じように感じていたのか、デントとアイリスの首根っこを掴むとぽいっとゴミでも捨てるかのように小屋の外に追い出して、扉を閉めた。

更に小屋の中に入れないように扉にもたれかかったエレキブル。
小屋の扉は外からだと押して入らなければならないタイプのものだ。
平均体重が138キロもあるエレキブルがもたれかかれば、2人が扉を開けようとしても、開くはずがない。



「えっ!?ちょっと!!なんで!?
なんで追い出されなきゃいけないのよ!」
「サトシの看病をしないといけないんだ!
シゲル!開けてくれ!」



扉を叩きながら、中に入れてくれと叫ぶも、シゲルは華麗にスルー。
毒と怪我のせいか、発熱までしてしまっているサトシを心配そうに見つめながら、看病に徹した。



「ヨギー…。」
「…!
君も目を覚ましたみたいだね。
大丈夫かい?」
「ヨー…。」
「ああ、サトシのことが心配なんだね?
大丈夫。毒消しも射ったし、安静にしていれば直に目を覚ますと思うよ。」



サトシと同じように意識を失っていたヨーギラスが目を覚ますと、すぐにサトシの元にとてとてと近付いた。

サトシが、自分のことを庇ってくれたことは理解しているようで、シゲルの話を聞いたヨーギラスはサトシの頬にぺちっと優しく触れるとそのまま横になって眠った。

目を覚ました時に、人間に対して強い恐怖心を抱くのではないかと心配したが、本能で分かるのだろう。

ここにいる者たちならば、自分に危害は加えないと。
サトシに寄り添うように眠りについたヨーギラスを見つめたあと、シゲルは額に乗せたタオルを取ると、再びそれを冷たい水の中に浸した。
小屋にあった桶に入っている水はカメックスに出してもらったものだ。
これなら、外に出なくても問題ない。



「う…っ。」



それから一時間ほど経った頃、小さな呻き声をあげたサトシがようやく意識を取り戻した。



「サトシ、気分はどう?」
「シゲル…?
あ、…うん。だいぶいい………って、シゲル!?
………っ!」
「毒は中和されてるみたいだけど、君は重傷を負っているんだ。
急に動くなんて無茶するもんじゃない。」
「あ…、ごめん…。
…じゃなくて!なんでシゲルがここに!?あっ!ヨーギラスは!?」
「起きて早々、忙しないね、君は。
イッシュには研究のために立ち寄ったんだよ。
まさか、その道中で君の無茶な行動を目にするとは思いもしなかったよ。
それとヨーギラスなら君の隣で爆睡してるだろう?」
「ヨー…ギィ…。」



すぐ隣でくぅくぅと穏やかな寝息を立てて眠るヨーギラスを見たサトシは安堵したように微笑むと、そっとヨーギラスの体を撫でた。



「良かった…無事だったんだ…。」
「君は全然無事じゃないみたいだけどね?
もう少し無茶な行動は控えないと、命がいくつあっても足りないよ?」
「うっ…、でも…そっか。
シゲルが助けてくれたんだな…。
サンキュー!シゲル!!
…いって!」
「…全く…。
怪我人だって自覚はあるのかい?」
「でもさ、本当にヨーギラスが無事で良かった…。」
「ヨギ?ヨギー!!」
「おっ!起きたのか?
ヨーギラス、どこか痛いところはないか?」
「ヨギー。ヨーギー!!」
「怪我が少し良くなったら、お前のママのところまで連れていってやるから、それまで辛抱してくれよ?」
「ヨギー♪ヨーギッ!!」



包帯を身体中に巻いている大怪我を負いながらも、サトシはヨーギラスを安心させるように笑いかけた。
サトシの言葉にヨーギラスも嬉しそうに笑った。

いくらサトシに助けられたからと言って、同じ人間のプラズマ団にヒドイ目にあわされたこの状況下なら、サトシに対しても警戒心を露にしてもおかしくないはずなのに、ヨーギラスはサトシに対して全く警戒心を抱いていない。
嬉しそうにサトシの胸に飛び込むヨーギラス。

全身に怪我を負っているために、サトシは「いてぇっ!」と声をあげたが、ヨーギラスがハッとして離れようとしてもその体をぎゅうっと抱き締めて離そうとしなかった。

そして、同じテンポで優しく背中を叩かれ、ヨーギラスはうとうとしたあと、そのまま眠りについた。



「ずいぶんヨーギラスの扱いに慣れてるんだね?」
「ん?
ああ、前にもヨーギラスの子供を母親の元に返すために旅をしてたことがあるからさ。」
「…君のことだ。
どうせその時も無茶ばかりしたんだろうけどね?」
「し、してない!!」
「どうだか。
君の考える無茶と世間一般が考える無茶とは大きくかけ離れているようだけどね?」
「そんなことないと、思うけど…。」
「とにかく、まだ休んだ方がいいことは確かだ。
もう少し寝た方がいい。」
「俺は大丈夫だって。」
「そんな大怪我を負っておいて大丈夫なんて言われても全く説得力がないよ。
…少しでも早くヨーギラスを母親の元に返してあげるためにも、しっかり休息をとって、休むのが一番じゃないかと僕は思うけど。」
「…そう、だよな…。
うん、…シゲルの言う通りだ…。
ごめん。ちょっと俺…。」



そう言うと、サトシは再び眠りについた。
大丈夫だとは言っても全身に怪我を負っているこの状況ではそれはただの強がりでしかないだろう。

ヨーギラスのためと言った途端、あっさり引き下がるところもサトシらしい。

しばらく会えない状況が続いても変わらないサトシに嬉しくもあったが、同時にただ無茶ばかりのサトシを心配せずにはいられなかった。

けれど、何の躊躇いもなく体を張るサトシだからこそ、こうして人間に傷つけられたポケモンたちも心を開いていく。

それから、大怪我を負いながらも1週間ほどで良くなるという超人的な回復を見せたサトシは約束通り、ヨーギラスを母親の元に送り届けた。
それを見届けてからシゲルはサトシと別れたが、それまでの間、耳にタコが出来るほど無茶をするなと言い聞かせて別れたが…恐らくサトシのことだ。
絶対に無茶をするだろう。

シゲルはデントとアイリスと共に歩いていく背中を見つめながら、どうかサトシが無事であるようにと切に願ったのだった。


End

※※※

ヨーギラス、出したくて出しました!!
色ちがいだし、プラズマ団に狙われるだろうと勝手に妄想しました。

いっそのこと、ゲットさせたいぜ!と思ったのですが、何とか踏みとどまりました。

今回のデントとアイリスは空気がカケラも読めない感じになってしまった…( ̄〜 ̄;)

シゲルのポケモンで一発KOなのは、当たり前のことだと思うんだよねー。
ずっと手持ちにいれてたらレベルだって高いでしょ。って思ったのであっかり倒されたプラズマ団たち。

久々の怪我ネタだったので、こんなんで大丈夫なのか不安で仕方ないですが…早さん様!こんなものでよろしければお持ち帰りください!

リクエストありがとうございましたっ!

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