無茶ダメ、ゼッタイ。

これこれの続きです。




「ジュード、大丈夫か?」
「ルドガー…、うん…だいじょうぶ…だよ。
心配させて…ごめんね…」
「ずいぶん熱が高いな…。」



ベッドに横たわるジュードを心配そうに見つめるのはルドガーとユリウス。

研究中に高熱を出して倒れたジュード。
バランから連絡を受け、すぐにルドガーが駆けつけてみれば、研究所にある仮眠室のベッドに横たわるジュードは熱に浮かされていた。
意識のないジュードを抱え、ルドガーはユリウスと共に住む自分のマンションへ連れ帰った。

そして、そのすぐ後にユリウスが帰宅して兄弟でジュードの看病にあたっていたのだ。



「ぼくなら…だいじょうぶ…だから、2人とも…、ゆっくりやすんで…」
「俺が2日前にそう言った時、ジュードは『そんなに心配しなくても無理しないから大丈夫だよ』って言ったよな?
全然、大丈夫じゃなかったじゃないか。」
「ルドガー…、それに…ユリウスさんも…あの時のことに責任とか感じてるなら本当に気にしないで…。
僕がしたくて…した…だけ…だから…」
「ジュード…?」
「どうやら眠ったようだね。
…かなり熱も高いのに…、それでも他人をこうも気遣うなんてな…。
本当に優しい子だ。」



そう言いながらユリウスはジュードの頭を優しく撫でた。



「兄さんやエルが助かったのは…ジュードが助けてくれたからだ。
体に強い負担がかかることだって分かってたはずなのに…それでも助けてくれた。
…そんなジュードに俺は…何を返したらいいんだろう…。」



高熱で気絶するように意識を失い、眠るジュードを見つめながらルドガーがポツリと呟いた。

ルドガーはジュードのことが好きだ。
仲間としてというより、恋愛感情として。

ジュードは出会ったばかりの自分を忙しい合間を縫って助けてくれた。
ジュードを通じてアルヴィンたちとも知り合い、たくさんの仲間に助けてもらった。

ルドガーを助けてくれた仲間はジュードがいたから繋がりを持つことが出来たのだ。

出会った時から今に至るが、いつも助けてもらってばかりだ。

ミラのこと、ユリウスやエルのことも。

ジュードのクルスニクの鍵としての力は本当に強い。
だが、その代償としてジュードは健康的な体を失った。

少しでも無茶をすればすぐに倒れるようになってしまった。
徹夜など以ての外。

だが、研究者として簡単に休めるほど時間に余裕はない。
ほぼ完成に近いと言ってもまだまだ課題が多いとバランから聞かされていた。

そして、ちょっと目を離すとすぐに無茶をするから気にかけてあげて欲しいとバランに言われてもいた。

だからこそ、ジュードが倒れる2日前に様子を伺いに行ったのだが…その時、ジュードは大丈夫だと言って笑った。

ルドガーとユリウスは今、兄弟でクランスピア社の2トップとして働いている。
ルドガーとて、忙しい身だ。

それを知ってるからこそジュードは体調を崩していることを悟られないように振る舞った。

いつものように穏やかに笑うジュードのことを信用して会社に戻ったルドガー。
しかしたった2日後にジュードが倒れたと聞いたルドガーはジュードの言葉を鵜呑みにしてしまった自分に腹を立てた。

いつだって自分より他人を気遣うとっても優しい人だということを、分かっていたはずなのに。
それなのに「大丈夫」という言葉を信じてアッサリ帰った2日前の自分をひっぱたいてやりたくなった。

そしてもう一つ、許せないのは。



「…俺がジュードのそばにいたいから、気にしてるのに…体が弱くなったせいで迷惑をかけて、気を遣われてるんだって思われてるなんて…イヤだ。」
「……ルドガー。
思うだけじゃ伝わらないぞ。
言葉にしてちゃんと伝えるんだ。
大切に思ってること。
そばにいたいから会いに行くんだということ。
言葉にして伝えないと伝わらないことだってある。
特に彼の場合は他人を気遣いすぎるあまり、自分へ向けられる好意に気付かないこともあるようだからな。」
「……そうだな…。」



ユリウスの言葉にルドガーも目を伏せながら頷いた。



「…明日1日は彼についているといい。
お前の分の仕事も俺がきっちり終わらせておくから。」
「でも…」
「病気になると気持ちが沈んでしまいがちだ。
特に世界の命運を背負う研究をしているからこそ、余計に焦ってしまうと思う。
責任感も強いし、第一人者として知られている分、周りからの強い期待に押しつぶされてしまうことだってある。
そんな時に体調を崩して倒れた。
更に俺たちにまで迷惑をかけたと思ってる。
それを支えてやらなきゃいけないんじゃないか?」
「……ああ、そうだな…。
分かった。よろしく頼むよ、兄さん。」
「ああ、任せておけ。」



そう言うと、ユリウスは静かに部屋を後にした。
それを目で見送った後、ルドガーはジュードの手をそっと握った。



「ん…」
「ジュード…?」



ジュードの手を握り、ずっとそばにいたルドガーはジュードが小さな声をあげたことに気付き、静かに名前を呼んだ。



「ルド…ガー…?」
「あ、起きなくていい。
まだ熱も高いんだ、休んでたほうがいい。」
「でも…やすんでる暇なんて…」
「焦るな、ジュード。
もうヒントは得てるし、少しずつ手応えだって感じてるんだろ?
焦って無理をしたっていい結果は生まれないと思うぞ。
休む時に休まないとダメだ。」
「……ごめんね…、ぼく…すごく迷惑かけてるよね…。」
「迷惑なんかじゃない!!」
「…ルドガー…?」



申し訳なさそうな様子のジュードの言葉をルドガーはすぐに否定した。

ユリウスの言う通りだ。
言葉にしないと伝わらない。

どうしてジュードを心配するのか、そばにいるのか、それを言葉にしなくては。



「俺が…ジュードのことを心配するのは、ジュードが好きだから、だから…そばにいたいんだ。
兄さんやエルのことを助けてくれたからそばにいるんじゃない。
ジュードのことが本当に大切だから、そばにいたいんだ!
それを、迷惑かけたとか、かけられたとかそんな風に線を引かれるのはイヤだ。
ジュード、お前のことが好きだ、いや…愛してるんだ。
だから…」
「わ、分かったから…!!
ちょ、そ、それ以上は…!!」



ルドガーの言葉に熱で火照っているはずの頬を更に赤く染めながらジュードはルドガーの言葉を遮った。

真顔で告白されて、ただ恥ずかしかった。



「何だよ、そんな…遮らなくても…」
「だって…そんな風に言われることなんて…ないから…恥ずかしくて…。
……でも、ルドガー…、気にかけてくれて…本当にありがとう。
…そうだね…、研究だって1人でやってる訳じゃないんだもんね…。
…ルドガーの言う通りだよ。」
「ん?なにが?」



ジュードの言葉にルドガーは目を瞬かせた。
何が言う通りなのだろう?

そんな疑問を抱いてジュードを見つめれば、ジュードは自分の手を握るルドガーの手を握り返しながら言葉を発した。



「…体が思うように動かなくて…、ちょっとしたことですぐに体調を崩しちゃうから…、早く成果を上げて何とかしないといけないって…焦ってたんだ。
でも焦って研究をしてるからか…、全然うまくいかなくて…このままじゃダメだ、ミラとの約束も果たせないって…更に焦って…満足に睡眠も取らずに研究を続けて…結局…、倒れちゃった。
焦りが更に焦りを生んじゃったんだ。
…本当にダメだよね、ぼく…。」
「ジュード、俺は…、ジュードが助けてくれなかったら今、ここにいない。
兄さんやエルだって助けられなかった。
本当に感謝してる。
でも1人で無茶はしないで欲しい。
ジュードが倒れたって聞いて…頭の芯から冷えていくような感覚を覚えたんだ。
倒れる前に会いに行った時…、もっと気にかけてればジュードは倒れなくて済んだんじゃないかって。」
「違うよ、ルドガー。
僕が自分の限界を見極められてなかったから…。
これでも医学者なのに…自分の体調管理を疎かにしたから…」
「…じゃあ、もう2度と体調管理を疎かにしないでくれよ。
いや、疎かにさせないためにもジュードにはここに住んでもらうってのもひとつの手か…。」
「な、何言ってるの、ルドガー!
ユリウスさんだっているでしょう?それにエルだって!」
「兄さんなら二つ返事で了承してくれると思う。
兄さんもジュードのことをかなり気に入ってるみたいだし。
エルにいたってはジュードのことが本当に大好きみたいだし、逆に喜ぶと思うぞ?
俺だってジュードのことが本当に好きだから…」
「わ、分かった!
も、もう無茶して倒れるようなことしないから…!」
「…約束だからな?」
「う、…うん…。
ルドガーは本当に優しいね。」
「ジュードは特別だ。
さっきも言っただろ?
愛してるんだって。
何度も言わせるなよ、ジュード。」
「な、何言ってるの!!もう!」



ルドガーの言葉にジュードは恥ずかしすぎて顔を背けた。

これで少しは無茶をしないようにしてくれればいいのだが…。

顔を背けたジュードの頭を撫でようと手を伸ばしたそんな時だった。



「エル、知ってるよ!
こういうのを砂を吐くほどゲロアマって言うんだよね!」
「いや、砂糖を吐くほどゲロ甘だろう」
「エ、エ、エル!?」
「に、兄さんまで…!!な、なんで…!」
「ルドガー、お前のゲロ甘な告白なら筒抜けだったぞ?
声、全く抑えようとしてなかっただろ?」
「エルもちょっと前に帰ってきたの!
ゲロアマアイシテル攻撃、スゴかったね!ルドガー!」
「……っ!!!!」



この後、恥ずかしさのあまりジュードは気絶するように倒れ、ルドガーは恥ずかしさのあまり、ユリウスとエルの顔をしばらくマトモに見られなかったと言う…。

そして、ジュードもよほど恥ずかしかったのか、無茶は控えるようになった。



end

※※※

優しい君の続編で無茶をして倒れたジュードがクルスニク一族に愛される話…というリクエストだったのにルドガー氏が真顔で好きだと告白するお話になってしまった…。
ユリウスさんはちょっと面白がってます笑

しばらくの間、ジュードくんはきっとルドガーとユリウスとエルに会う度に恥ずかしそうに顔を赤くして俯いてマトモに顔が見れなくなってたら萌える…!!

恥ずかしがる天使なジュードくん!
素敵じゃないの!!

匿名さま、こんな駄作でよろしければお受け取りください。

リクエスト、ありがとうございましたっ!

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