優しい君

これの続きです。









リドウにジュードが攫われ、ルドガーたちは必死にその行方を捜した。

精霊たちの協力や、ユリウスの協力もあり、ルドガーたちはようやくジュードの行方を掴んだ。

急いで向かうと、そこには青白い顔でぐったりと横たわるジュードと、その傍にビズリーとリドウがいた。



「……橋を…、かけさせたのか!」



ぐったりするジュードを見たユリウスが声を荒げた。



「使えるものを有効活用して何が悪い?」
「まだ彼には役に立ってもらわねばならん。
リドウ、足止めを任せる。」
「ジュードにヒドイことしないでっ!!」



ぐったりしたジュードを荷物のように抱え上げたビズリーはエルの言葉にちらりと視線を向けた。



「……彼に感謝するんだな。
彼に力がなければ君の力を使わせてもらうところだったのだからな。」
「…え…?
…エルのせいで…ジュードが苦しんでるってこと…?」
「エル、そうじゃない!!
ジュードを道具のようにしか考えられないのが、悪いんだ!惑わされるな!」
「ルドガー…。」



今にも泣き出しそうに顔を歪めるエルにルドガーはそうじゃないと強く否定した。

あそこまで衰弱させておきながら、まだ苦しめようとしているのはビズリーだ。

あの様子だとジュードの命が尽きることになったとしてもジュードの力を使わせる気だろう。
それをエルのせいにするのは間違っている。



「エル。
ジュードは必ず私たちが助ける。」
「ジュードの言葉に私は救われた。
今度は私が救う番よ。」



そう言いながら、剣を手に戦闘態勢を取る2人のミラ。

まるで双子のような2人の姿にエルはゴシゴシと目をこすったあと、ミラたちに向かって口を開いた。



「お願い!ジュードを…ゼッタイ…ゼッタイに助けて…!!
ジュード、とっても優しいんだよ!
エルは優しいジュードが傷つくのもう見たくない!」
「…リドウは俺が引き受ける。
ルドガーたちはビズリーの方を頼む。」
「俺も力を貸そう。」
「ガイアスがそっちにつくなら、私もそっちにつくわ。」



リドウの相手はユリウス、ガイアス、ミュゼがすることになり、残りのメンバーはビズリーの相手をするために戦闘態勢をとった。



「…いいだろう。
後で邪魔をされても面倒だ。
ならば、ここで決着をつけ、審判に臨むとしよう。」



リドウ1人で、ルドガーたち全員の足止めをすることは不可能だと判断したビズリーは骸殻能力を解放し、ジュードを四角いキューブのようなものの中に閉じ込めた。



「ジュード!!」
「俺を倒さなければ、あのキューブの中から救い出すことは不可能だ。
さあ、この後の審判に臨むのは誰なのか…決めるとしよう!!」
「行くぞ!みんな!!」
「必ずジュードを助け出すわよ!」



2人のミラの言葉を合図に戦闘は開始された。




***



ビズリーは本当に強い。
それは彼にも譲れぬものがあるから。

だが、それはルドガーたちとて同じだ。

ジュードがこれまで頑張ってきたことも知っている。
ジュードの優しさを知っている。

だからこそ、ジュードのことを守りたい、助けたい。
そんな強い思いで戦った。

仲間たちの共通の想いは『ジュードを救い出す』
ただ、それだけだから。

数十分の激しい戦いが続き、勝利を掴んだのはルドガーたちだった。



「骸殻能力を使い始めて間もないとは思えんほどに成長したな…ルドガー…。」
「…俺を支えてくれた仲間がいてくれたからな。」



満身創痍といった状態で倒れるビズリーにルドガーは仲間たちへ視線を向けた。

そして、キューブの中に閉じ込められているジュードへと、視線を向けた。

世界の命運を背負う研究を続けるジュードは相当忙しいはずなのに、嫌な顔ひとつしないで協力してくれた。
ジュードがいてくれたから、仲間がいてくれたからルドガーは前に進むことが出来たのだ。



「………そう、か…。
仲…間…、俺にも…」



そう呟いたあと、ビズリーは静かに事切れた。

そして、そのすぐあと…キューブが弾けるように消え、ジュードの体は重力に逆らうことなく落下した。

すぐ近くでジュードが解放されるのを待っていたアルヴィンが受け止めたために、体を打ち付けるようなこともなかったが、安心は出来ない。

何故なら、激しい戦闘がすぐ近くであったのにも関わらず、ジュードは全く意識を取り戻さなかったからだ。



「…アルヴィン、ジュードは…?
大丈夫ですか?」
「かなり衰弱してることは分かるが…医者じゃないからなんとも言えないな…。」
「この中で医療に詳しいの…ジュードだけだもんね…。
……こんなにグッタリするなんて…。
橋をかけるってそんなに大変なんだ…。」
「…本来ならクルスニク一族の命を犠牲にすることで橋がかかるからな…。」



レイアの言葉を返答したのはユリウスだった。

ユリウスたちもリドウとの戦いに勝利したが、その表情は歪んでいた。



「命を犠牲にしなければ橋はかからない中、衰弱だけで済んだのがおかしい話なんだ。
……それだけ、彼の力が強いってことなんだろうけど…。
これ以上、力を使わせるようなことがあればいかに力が強いと言っても命の保証は出来ないな。」
「ジュードが死んじゃうってこと…?
そんなの、イヤ!!エル、ゼッタイにイヤ!!」



ユリウスの言葉にエルはルドガーにしがみつき泣いた。
まだ幼いエルには辛い事実なのは当然だ。
ルドガーたちとて、ユリウスの話を聞いて苦しいのだから。




「………み…んな…。」
「ジュード!!」



重苦しい空気に包まれる中、今にも消えそうな声がルドガーたちの鼓膜を揺らした。

小さな声ではあったが、ルドガーたちが聞き逃すはずがない。

1人残らず、ジュードへ視線を向けた。



「ジュード…!ジュードぉ…!!」
「エル…、ごめ…ん…ね?
心配…させ…たよね…。」
「ジュード…、エル…こわかった…!
ジュードがいなくなるなんて、ゼッタイにヤダ!!ヤダよ!!」
「………エル…、それに…ユリウスさん…。」



力無く仲間たちを見つめていたジュードはエルとユリウスを呼んだ。



「ジュード?」
「どうかしたのか?」



仲間たちが訝しげな…けれど心配そうな視線を向ける中、エルとユリウスにそれぞれ右手と左手を翳した。



「……っ、…まさか!!」
「ジュード…?」



不思議そうな表情を浮かべるエルとは違い、ユリウスは驚愕した。



「……これ…で…、だい…じょ…ぶ…。」



…そう言うと、ジュードは再び意識を失った。



「ジュード…!?」
「ジュード!?」



完全に意識を失ったジュードにエリーゼとレイアが慌ててジュードの名を呼ぶも、彼はその声に応えることはなかった。



「信じられない…。」
「兄さん…?」
「ここまで…とは…。」
「どういうことだ?」
「説明して。」



呆然とした様子のユリウスに2人のミラは説明を求めた。
ミラたちの言葉にユリウスは驚きを隠しきれない様子で言葉を発した。



「時歪の因子化が…完全に止まってるんだ。
いや、止まったというより治ったと言った方が正しいか…。
時歪の因子化を治すなんて聞いたことがない…。」
「ちょっと待って!!
それじゃあ…ジュードはまた力を使ったってこと!?
あれだけ衰弱してるのに力を使うなんて…バカよ!
お人好しにも程があるわよ!
…なんで…、そこまで!!」
「……ジュード…、優しいから…。
だから、エルたちのことを助けてくれたんだ…。
エルたちが苦しまなくていいように…。」
「エル…。」



ボロボロと涙を流しながらエルはジュードの手をギュッと握った。

ジュードはエルが手を握るといつも優しく握り返してくれていた。
けれど、今のジュードは握り返してくれない。
エルはそれが悲しくて嗚咽をもらした。

ルドガーはそんなエルの体を抱きしめることしか出来なかった。



「……行こう。」



優しすぎるからこそ、ユリウスとエルのことを助けたかったのだろう。
そんな優しさに、言葉にならない思いで支配される中、ミラが立ち上がり、たった一言…呟いた。



「ミラ…?」
「審判に臨もう。
それが今、私たちが為さねばならぬ使命だ。」
「……行くのか。」
「…兄さん、ジュードの事…頼んでもいいか…?」
「ルドガー…、お前だけにクルスニク一族の宿命を背負わせるわけにはいかない。
俺も行く。」
「……兄さんは…、ジュードが治してくれなければ…死んでいた。
…時歪の因子化するのも時間の問題だった。」
「だが、もう治してもらったんだ。
だったら俺も…」
「…治ったばかりで無茶をしてまた再発でもしたらジュードにまた力を使わせることになる。
だったら、兄さんにはジュードのことを守ってもらいたいんだ。」
「アルクノアの中にジュードくんが特殊な力を持っているってことを知ってる奴もいるだろうし、それがなくても研究を止めさせるために妨害しようとするだろうしな。
…今のジュードくんだったら狙われやすい。」
「必ずルドガーさんはお守りします。
ジュードさんのことを頼んでもよろしいですか?」



アルヴィンとローエンの言葉にユリウスは、ぐったりと横たわるジュードへ視線を向けた。



「………分かった。
必ず戻って来い。
…必ず戻って来たら俺にトマト料理フルコースを振る舞ってくれ。」
「ああ。
兄さん、ジュードのことを頼む!」



ユリウスに後を託されたルドガーは力強く頷いた。

弟の力強さを目の当たりにしたユリウスは後を託すことを選び、ジュードのことを何がなんでも守ると誓った。



「みんな、行くぞ!!」



ミラの言葉と共にルドガーたちは審判へ臨んだのだった…。

end

※※※

企画文の続きを…ということだったので、書いてみたものの…ジュードくん…ほとんど喋ってない…。

ユリウスさんもエルちゃんも好きだからみんなで幸せなハッピーエンドがあったら良かったのにな…。

力を使いすぎたジュードくんは弱体化してしまい、すぐに体調を崩す病弱体質になっちゃうのです。

それをクルスニク兄弟が過保護すぎるほどに構いまくってエルからも怒られてしまいながらも研究を続けるジュードくんがこの後にいます。

病弱とか萌えるから(*´ェ`*)
ただ、それだけ!!

天使なジュードくんが、病弱とか俺得!!

…すいません、暴走しました。

波音さま、こんなんですいません…。

もっといろいろ書きたかったものの、キリリクではおさまらないレベルでの長文になるそうだったのでだいぶ端折りましたが楽しんでもらえれば幸いです。

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