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「全く…。
病人がいるのに騒ぐなんて信じられないよ!」
「シング…。」
「ん?」
アッシュたちを追い出したシングは呆れたような表情を浮かべながらぽつりとそんな言葉をこぼした。
それを見ていたルークはシングの名を呼んだ。
それに気付いたシングはルークを見つめながら首を傾げていた。
「おれ…、倒れる前に…シングが俺を呼ぶ声…聞こえてた…。」
「…ルーク…。」
「何か…よく分からないけど…、嬉しかった…。」
「ルーク…、守れなくて…ごめん…。」
嬉しかった、というルークにシングはルークを守ることが出来なかったふがいない自分が許せなくて、悔しくてルークに向かって謝罪の言葉を返した。
しかし、ルークは首を横にふり、静かに口を開いた。
「シングが…そばにいてくれれば…それだけで俺はすごく嬉しいんだ。
だから…謝らないで…。」
「うん…。
ありがとう、ルーク…。
…さあ、もう寝よう?
早くよくなるためにも、今は休息が必要だと思うし。」
「うん…。」
ルークの手を優しく握りながら声をかけるシングの声にルークは再びゆっくり意識を沈めていった。
「嬉しい…、か…。
ねえ、ルーク…、俺はルークが心から幸せだと感じて笑えるようになるために…、ルークのことをもっと支えられるように…、頑張るから。
強くなるから。
だから…俺のことを信じてね。」
今はまだスピルーンが不足しすぎていて、虚ろなスピリアだけど、それでもルークはルークなりに必死に考えている。
スピルーンが不足しているとしても、きっとルークのスピリアは向き合わねばならない問題が多くて、葛藤しているのだろう。
だが、人が当たり前のように悩み、葛藤した末に答えを導き出すことが出来るような問題でも、ルークにはスピルーンが欠けているため、導き出す“答え”を見つけることが出来ない。
だからこそ、シングは強く思った。
傷つきやすくて、繊細で脆いルークの支えになれるような人間になりたいと。
かつて、自分が負のスピリアに支配されて壊れそうになった時に支えてくれた仲間のような存在になれたら…。
シングはルークの看病を徹夜でしながら強くそう思ったのだった…。
予断だが、ルークの部屋の入り口で騒ぎ続けていたアッシュたちをシングは容赦なくソーマを振るい、ルークがよくなるまでの立ち入りを禁止したという…。
更にルークの状態がよくなった後、アッシュたちはルークを過保護なまでに魔物から守っていたのは言うまでもない。
END
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