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「お兄ちゃん!
大変だよ!シングが部屋のどこにも…って…。」
翌朝、慌てた様子でヒスイの部屋に入ってきたコハクは自分の目に映った光景に目を見開き、固まった。
そこにはシングを優しく抱きしめながら気持ち良さそうに眠るヒスイと、安心しきったような表情を浮かべてヒスイの胸の中で眠るシングがいた。
「ダメーーーーッ!
ずるいよ!お兄ちゃん!」
「Σな、なんだあ!?」
「…もう朝…?」
シングとヒスイを見たコハクは宿屋中に響き渡る声で叫んだ。
その声に慌てて飛び起きたヒスイと、まだ寝ぼけているのか、目を擦りながらゆっくり起き上がるシング。
2人の目に映ったのは、背後にメラメラと炎を燃やしながらシングとヒスイを見るコハクだった。
「…コハク?」
「どうしたの…?」
「どうしたの!?
敵!?」
「異常発生か?」
「何なに〜?
朝から肉体労働は勘弁してよ〜?」
コハクの叫び声に他の仲間たちもぞろぞろとヒスイの部屋に集まった。
「あ、みんな…おはよう。」
「お、おはよう…。」
「ヒスイ…?
なんで、シングがヒスイと一緒に寝ているのかしら?」
「あ、いや…。
シングが1人で寝るのが怖いって言うから一緒に…。」
「一緒に寝たって言うの!?
もう〜…いつも言ってるけど、ヒスイはシングを甘やかせすぎなの!」
「…仕方ねぇだろ。」
「仕方なくないよ!
お兄ちゃんばっかりシングと一緒に寝るなんてずるいよ!
私も一緒に寝る!」
「コハクの中にはリチア様がいらっしゃる。
いくらシングといえ、男女が同じベッドで一緒に寝ることは許可できない。」
「だから〜!
ヒスイはシングを甘やかせすぎるのがダメなんだってばー!」
「それよりも、シングがヒスイと寝るなら個室なんて取る必要なかったじゃない!
1人分の宿代がういたのに、なんで黙ってたの!?」
「あ…いや…。」
「無駄なお金を使う余裕はないのよ!?
分かってるの、ヒスイ!?
シングもシングよ!
せっかく久しぶりに個室を取れたのに、何でヒスイと一緒に寝るのよ!?」
「あ、ごめんなさい…。」
「宿代をアイテムに回すことも出来たのに、どうして気づかないのかしら?
私達は遊んでるわけじゃないのよ?
これから先のことも考えて無駄なお金を使わないように節約していかなきゃいけないのよ?
それと…」
この後、シングとヒスイはイネスの長い説教を聞くはめになる。
そんな中、シングはヒスイの手をそっと握り、嬉しそうに笑った。
ヒスイもシングの笑顔を見て、小さな微笑みを浮かべ2人は見つめ合った。
…そのすぐ後にイネスからげんこつをお見舞いされることになったのはまた別のお話…。
END
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