いいえこれはこいではありません。



Is this love...?
(これはあいだろうか?)
NO,it is not love.
(いいえ、それはあいではありません)



英文を写し指の筋肉を解して、少しだけ休憩する。しかしこの例文は凄い、これはあいではありません、だって。
手元の教科書を見て苦笑する。この教科書に描かれている二人の少女、片方は頬杖をついていかにも悩んでいるよう。頭上から雲のような、吹き出しのようなものが出ていた。

この英文によるとエマさんは恋をしているのだろうか、しかしその質問は友人であるジェシカさんに否定されている。なんとも酷い英文だ。

「にいちゃーんっ」

三つ離れた弟の声を聞き俺はなにと振り返る、いつ見ても自分の弟は寝てばかりだ。
頭を撫でて、起きなよと言えばサトシは愚痴を言いながら起き上がる。ったく小さい頃はあんなに可愛かったのに。

「宿題手伝って」

きた、この上目遣い。サトシの必殺技だ。小さい頃は良くこれに騙されていたけど俺はもう騙されない(サトシは意識してこれを使っているわけではないんだけど。)
俺はサトシから視線をほどくと、英文を写し始めた。次の英文は男視点みたいだ。

「兄ちゃんも自力でやってるんだから、サトシも頑張れよ」
「やだ、わかんないもん」

わからないんじゃなくて、やらないだけだろうサトシは。辛口になる唇を引き締めて溜め息を吐く。
するすると書いていた宿題の英文を写し終えて、肩を揉みまた最新式の格好良いシャープペンシルを握る。次は数学、これが一番苦手で後回しにしていたけどやっぱりやるハメになった。

「兄ちゃん、宿題」
「やだよ。肩揉んでもだめ」

ちぇっとサトシは俺の肩から手を退ける、少しだけやってもらいたかったけどサトシを甘えさせちゃいけない。しかしそれでも諦めないサトシは、

「にいちゃーん」

と俺を呼び続ける。当然俺は

「やだ」

と言うわけで。それなのにサトシはまだ諦めない。

「にいちゃーん」
「却下」

サトシはやれば出来るんだから、と内心呟く。いつだったか数学の点数を幼なじみのシゲルに馬鹿にされて、ムキになったサトシが数学を勉強し始めて次のテストでは98点のシゲルを抜かす99点をとったことがあった(その時シゲルはたったの一点違いだと鼻で笑ったけれど、30点以上を取ったことがないサトシが100点に一番近い99点を取るなんて信じられなかった。)
その時の母の顔と、シゲルを負かした自慢気なサトシの顔が思い浮かんで思わず笑ってしまった。

「にいちゃーん!」

まだ呼んでいたのか、はっとして止まっていた手を動かした。しかしそれも止まる、サトシの腕が腰に絡められたからだ。思わずどきりとした、これは驚いただけであのドキッじゃないよな…?
それでも嬉しいような恥ずかしいような感情が胸を満たして、俺の心はぽきりと静かに音を立てて折れてしまう。

「…………少しくらいは手伝ってやる」

やはり俺は弟に弱いようです、サトシの満面の笑みを見て俺も知らないうちに笑顔になっていた。



※※※

天ちゃんがコンプレックス完結祝いに素敵なレサトをプレゼントしてくださいました♪

レッドとサトシが兄弟な設定でサトシに甘いレッド兄さんなんてまた萌える設定でによによが止まらないっス!

天ちゃん、素敵な小説、ありがとうございました♪
もう感謝感激ですっ!

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