―7―
「サトシ…、大丈夫かしら…?」
「レッドさんがついてるから大丈夫だよ。」
「うん…。」
数時間後、サトシはベッドの上に横たわっていた。
すぐに解毒はしたものの、サトシは高熱をだし、未だ意識が戻らないままだった。
「でも…、驚いたな…。」
「レッドさんのこと?」
「ああ。
あんな動揺した姿なんて正直、想像つかなかったからな…。」
「それだけレッドさんにとってサトシは大切な存在だってことなんじゃない?」
「そうだな…。
サトシのことはレッドさんに任せて、俺達は旅の準備をしよう。」
「そうね。」
サトシのそばを離れず、看病をし続けるレッド。
そのかいがいしい姿にタケシもヒカリも邪魔をしてはいけないのだと感じたのだろう。
2人は自分にできることをすることにした。
***
「サトシ…。」
「ピーカ?」
「あ、ピカ…。
ピカもサトシが心配なのか?」
「ピカチュ!」
「そっか…。
ピカ、ピカチュウは?」
「ピーカ…。」
ベッドに横たわり荒い呼吸を繰り返すサトシ。
レッドはベッドの横にある椅子に腰掛けながら、そんなサトシの看病を続けていた。
ピカに声をかけられ、レッドはその頭をそっと撫でながら会話を交わした。
人とポケモンで言葉は通じなくとも、ピカとの付き合いが長いレッドにはピカが何を言いたいのかだいたいを察することができた。
ふと、レッドはサトシのピカチュウの姿が見えないことに気付き、ピカに居場所を問うた。
その問いかけにピカは悲しそうに顔を歪めながら部屋のすみへ視線を向けた。
ピカの視線を追えば、部屋のすみには耳を垂れ下げ、沈み込むピカチュウがいた。
それを見たレッドは座っていた椅子から立ち上がり、ピカチュウの元に足を運んだ。
「ピカチュウ、サトシのそばにいなくていいのか?」
「ピーカ…、ピカピ…ピカ、チャー…。」
「ピカチュウのせいじゃない。
サトシだって目を覚ました時、ピカチュウが落ち込んでたら心配するよ」
「ピーカ…。」
「大丈夫。大丈夫だから。
だからあまり自分を責めるなよ?」
「ピッカ…。
ピッピカ、ピカチュ!」
「よし!
一緒にサトシの看病をしよう。」
「ピッカ!」
レッドに励まされ、元気を取り戻したピカチュウはレッドと一緒にサトシを看病することにした。
ピカチュウはレッドと会うのは今日が初めてだったが、サトシとはまた違う温かさに救われた。
ピカチュウは自分のせいでサトシが苦しんでいるのだと沈んでいた。
そんなピカチュウをレッドは気遣い、優しく励ましてくれた。
きっとレッドもピカチュウが言いたいことの全てを理解して言っているわけではないのだろう。
だが、レッドの言葉はまるでピカチュウの気持ちを全て理解した上で言っているようにも感じた。
レッドとて、自分がサトシの近くにいなかったからサトシが今、苦しんでいるのだと心のどこかで自分を責めているはずなのに。
それでも、自分のことより、ピカチュウを気遣って励ましてくれた。
ピカチュウはその優しさに心から感謝した。
―――サトシ。
サトシのお兄さんはとっても優しい人だよ。
ピカチュウはレッドと一緒に看病しながら心の中でそっと呟いた。
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