―4―
とりあえず、サトシたちは落ち着ける場所に移動することにした。
移動したあと、レッドはこの街に来た理由を話しはじめた。
「俺はいろんな地方を回って旅をしてはいたけど、時々はマサラタウンに帰ってたんだ。
ただ、サトシも旅に出るようになってからはすれ違ってばかりで一度も会えなかったんだ。
だから、俺はこうしてサトシに会いに来たんだ。」
「そう、だったんですか…。」
「ちょっとサトシ!
こんなすごい人がお兄さんだったなんて知らなかった!
どうして教えてくれなかったのよ!?」
「俺も知らなかったぞ、サトシ?」
「えぇっ!?
タケシも知らなかったの!?」
「…………。」
一番長くサトシと旅を共にしていたタケシでさえ知らない事実を目の当たりにして、ヒカリは再び驚きの声をあげた。
てっきりタケシは知っているものだとばかり思っていたヒカリは驚くばかりだった。
「サトシ、なんで教えてくれなかったんだ?」
「……聞かれなかったから…。」
「当たり前よ!
一体誰がサトシとレッドさんが兄弟かもなんて考えるのよ?
サトシから教えてくれなきゃ分かるはずがないじゃない!」
「…なんでそこまで細かく説明しなきゃいけないんだよ。
今まで旅をしてきて知らなくても支障はなかっただろ?」
「それは…そうかもしれないけど…。
…ねえ、…サトシ、もしかして機嫌悪い?」
「…別に。」
部屋に移動してから、口数が一気に減ったサトシにヒカリはサトシの顔を覗き込みながらそう問いかけた。
その問いかけに対して、サトシはふいっと顔を背け、ヒカリと目を合わせようとしなかった。
「もう…、一体なんなのよー…?
…あれ?
ピカチュウは?」
「ピカチュウならピカと遊んでるよ。」
「ピカ?」
不機嫌な表情を浮かべるサトシにヒカリは訳が分からないと眉を寄せながらため息をついた。
その時、ヒカリはピカチュウがいないことに気付き、その姿を捜した。
そんなヒカリを見てレッドはピカと遊んでいると言ったが、レッドの言う“ピカ”というのが何を指すのかが分からずヒカリは不思議そうに首を傾げた。
「俺の相棒のピカチュウのことだよ。
俺はピカって呼んでるんだ。」
「へぇ〜…。
なぁんだ!
相棒がピカチュウってところまで一緒なんて、やっぱりサトシはレッドさんに憧れて…」
「兄ちゃんは関係ないッ!!」
レッドの相棒がサトシと同じピカチュウだと知ったヒカリはサトシはレッドに対する憧れからピカチュウを相棒に選んだのだと言おうとした。
しかし、サトシの大きな声に遮られて最後まで言葉を発することが出来なかった。
「サトシ…?」
「ピカチュウが相棒になったことと、兄ちゃんの相棒がピカチュウだってことも関係ない!
ピカチュウは俺が寝坊して出会ったパートナーで…、兄ちゃんとは関係ない!関係ないんだ!」
「サトシ?どうかしたのか?」
「…ッ!!
あ…、…ゴメン…。
お、おれ…ピカチュウたちの様子を見てくる!」
「あ…ッ!
サトシ!!」
途中で、自分が我を忘れてしまっていたことに気付いたサトシはバツが悪そうに顔を歪め、謝ったあと、ピカチュウの様子を見に行くためにその場をあとにした。
その背中はまるで何かを拒絶するような、何かから逃げるように見えた。
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