―3―
「サトシ、」
「兄…ちゃん…、なんでここに…?」
「サトシが旅に出てからずっと会っていなかっただろう?
だから、こうして会いにきたんだ。」
「そう、なんだ…。」
レッドは戸惑いの表情を浮かべるサトシに気づかないフリをしながら笑顔を浮かべた。
しかし、レッドから話を聞いてもサトシは相変わらず浮かない表情を浮かべている。
「サトシ…?」
「…おれ…、兄ちゃん…」
「…?
サトシ…?どうし…」
「あぁー!サトシ、こんなところにいたのね!」
どこか様子のおかしいサトシにレッドは首を傾げながらその理由を問いかけようとしたが、それは第三者の声によって遮られた。
それはサトシと共に旅をするヒカリのもの。
サトシはゆるゆると顔をあげると、ヒカリの方へ視線を向けた。
ヒカリの隣にはどこか心配そうな表情を浮かべるタケシもいた。
「って、えぇ!?
や、やだ!レッドさんですよね!?」
「え?あ、はい。」
「ほ、本物だ!
す、すごい!わ、私…、ヒカリって言います!
あ、握手してもらってもいいですか?」
サトシの隣に立つレッドに気づいたヒカリは興奮したように声をかけた。
戸惑いながらも、握手をするレッド。
ちらりとサトシの方に視線を向けるとサトシは複雑そうに表情を歪めていた。
「なによー、結局サトシもレッドさんが気になってたんじゃない!
まるで気のないそぶりでポケモンセンターに入るから違うのかと思ってたのに、サトシもレッドさんが近くに来たことに気付いて思わず声をかけたんでしょ?
まあ、別に私はそのおかげでレッドさんと握手が出来たからいいんだけど♪」
「…え?
サトシから…俺のこと聞いてない?」
「…?
何の話ですか?」
ヒカリの言葉にレッドは意味が分からず、そう問いかけていた。
しかし、レッドの言葉の意味をヒカリもタケシも理解出来ず、眉を寄せて首を傾げることしかできなかった。
「俺とサトシは兄弟なんだ。」
「「……………………。
Σ…えぇえぇえぇーーー!?」」
レッドから告げられた事実を聞いてヒカリとタケシは少し間を空けたあと、驚いたような声をあげた。
「…ピカピ…?」
ヒカリとタケシが驚きの声をあげる中、ピカチュウがサトシの顔をそっと覗き込むと、その顔は苦痛で歪んでいた。
サトシのそんな表情を見たことがなかったピカチュウは戸惑ったような声でサトシの名を呼んだ。
しかし、サトシは固く目を閉じ、必死に何かに耐えているようでピカチュウはそれ以上なにも言えなくなってしまった。
そして、それをレッドが見ていたことに目を閉じていたサトシは気付いていなかった。
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