―2―
「ハァ…。」
ポケモンセンターの中に逃げるように入ったサトシは深いため息をついた。
その表情はいつもの元気はなく、落ち込んでいるように見えた。
「サトシ。」
「Σ……っ!?」
俯いたままポケモンセンターにあるソファに腰掛けていたサトシは誰かにそっと肩に手を置かれ、名前を呼ばれた。
その声も温もりも小さい頃からよく知るもので…。
サトシは恐る恐る後ろを振り返った。
「兄、ちゃん…。」
「久しぶりだな、サトシ。」
そこにいたのは、予想してた通り、自分の兄が立っていた。
***
たくさんの人に囲まれ、握手やらサインを求められていたレッドは正直、困惑していた。
レッドがこの街にやってきたのにはある目的があった。
それはずっと会っていないたった1人の弟に会うためだった。
思えば弟…、サトシとは彼が旅に出るようになってから1度も会っていない。
カントーから始まり、シンオウに至るまでの間、一時的に旅から帰ってきてもサトシはすぐに旅に出てしまってなかなか会えずじまいだった。
サトシが旅に出るようになったらサトシからも旅の話を聞ける、とそれを楽しみにしていたレッドにとってそれは悲しいことだった。
何故だろう?
レッドはサトシに避けられているようにも感じた。
不安に思ってグリーンに聞いてみたものの、「気のせいだろ?」と返されてしまったが、レッドはサトシのことが心配でたまらなかった。
オーキド博士やサトシと一緒に旅をし、博士の助手となったケンジから話を聞く限り、サトシは相当な無茶をしているらしい。
だから一度、サトシに会って話をしたいと思った。
いろいろと情報収集をし、サトシが次にたどり着くであろうこの街で待っていたのだが、気付いたらたくさんの人に囲まれてしまっていた。
どうしたものかと思案しているとレッドの耳に聞こえたのは、誰かの名前を呼ぶ声だった。
それが見知らぬ者の名前だったら気にもとめなかったが、それは自分が会いたいと思っていた弟の名前。
「サトシ…!?」
そう、ヒカリがサトシの名前を呼んだとき、レッドはそれをしっかり聞いていたのだ。
サトシがいる。
そう考えたら行動は早かった。
周りに集まる人に道を空けてくれるように頼みながらレッドはサトシが消えたポケモンセンターへ向かった。
サトシの姿を捜したレッドはすぐに目的の人物を見つけた。
トレードマークの帽子を被り、その近くにいる相棒のピカチュウ。
間違いなくサトシだった。
サトシは背を向けた状態でソファに腰掛けていて、レッドはゆっくりと近付き、サトシの肩に手をおいた後、弟の名前を呼んだ。
しかし返ってきたのは強く肩を震わせ、困惑した表情を浮かべるサトシの顔だった。
[
*←前
] | [
次→#
]
TOPへ戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -