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レッドに頬をひっぱたかれたサトシはしばらくの間、それを理解できずに目を開いたまま固まった。
レッドにひっぱたかれたのだと理解したのは、自分の頬がジンとした痛みと熱を伝えてきたから。
「兄ちゃん…?」
「サトシ…!
お前は…お前は本気でそれを言ってるのか!?
本気で…そう思ってるのか!?」
「なんでそんなに怒るんだよ…。
だって…俺は兄ちゃんに迷惑をかけてばかりだし…兄ちゃんみたいに強くもないし…」
「俺はサトシの良さをたくさん知ってる!!
昔からお前は誰よりも優しい奴だった!
それは今だってそうだ!
なのに…どうして自分を卑下するようなことしか言えないんだ!?」
「兄ちゃんに…兄ちゃんに俺の気持ちなんか分かるはずない!!
俺が…どれだけ悩んだかも…苦しんだのかも…どうして避けたのかも…兄ちゃんには分からない!!」
「どうしてそう決め付けるんだ!?
言ってもいないうちから決め付けるなんて…サトシらしくないだろ!?」
「俺らしい?
俺らしいってなんだよ!?
ずっと旅ばかりして時々しか会ってなかった兄ちゃんが俺の何を知ってるって言うんだよ!?」
「……それは…っ!」
「兄ちゃんなんかに…俺の気持ちなんて分かるはずがない…。
分かるはずがないんだ!!」
「サトシ…。」
頭を振りながらそう言ったサトシをレッドは悲しそうな表情を浮かべて見つめることしか出来なかった。
確かにサトシの言う通り、自分が旅に出るようになってからサトシに会う回数も話す回数も格段に減った。
たまにマサラタウンに帰ってきて、サトシに旅の話をするとサトシは嬉しそうな表情を浮かべながらそれを聞いていたが、サトシの今の言葉を聞く限り、複雑な思いを抱えながらも無理して笑っていたのかもしれない。
人一倍優しい心を持ったサトシのことだ。
複雑な思いを抱えていてもレッドに打ち明けたくても打ち明けられなかったのかもしれない。
そう考えた時、レッドはサトシの言葉を否定することが出来なかった。
サトシが何を思い、悩んできたのか、それはサトシ本人にしか分からない。
「…サトシは…俺が嫌いなのか…?」
「……っ?!」
悲しそうに目を伏せながら呟かれた言葉にサトシは目を見開き、顔をあげた。
そして、レッドの顔を見た瞬間…サトシは自分が口走ってしまったことに気づき、後悔した。
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