―9―
「…サトシ……?」
少しずつ意識が浮上していく中、誰かに名前を呼ばれ、サトシは声のした方にゆっくりと視線を向けた。
そこには心配そうにサトシを見るレッドがいた。
「…兄ちゃ……。」
「良かった…、良かったサトシ…。」
「おれ…?」
「熱が高いからまだ寝てた方がいい。」
起き上がろうとしたサトシにレッドはそっとその肩を押し、それを制した。
「ピカピ…!ピカピ…っ!」
「ピカチュウ…。」
「ピカ、ピカチュウ!ピカー!」
「ごめん、ピカチュウ…。
心配かけて…。」
「チャー…。」
レッドに再び寝かされたサトシは自分の胸に飛びつき、泣きそうな声で自分の名前を呼ぶピカチュウをそっと抱きしめ、謝罪した。
ピカチュウを抱きしめたサトシはその小さな体が震えてることに気づき、眉尻をさげた。
「サトシ、」
「兄ちゃん…。」
「サトシのこと…、守ってやれなくてごめん…。」
「兄ちゃんは悪くない…。
俺が勝手にやって…、勝手に迷惑かけて…。
俺は…最低だ…。」
「サトシ…?」
腕で目を覆い隠したサトシは誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。
レッドはこんなに弱気なサトシを見たことがなくて、頭を撫でようとそっと手を伸ばした。
―――バシッ!
そのすぐ後、渇いた音が部屋に響き渡った。
それはサトシがレッドの手を払いのけた音。
レッドは訳が分からず、払われ、行き場を失った手をそのままにサトシをただ見ていることしか出来なかった。
「…兄ちゃんに…心配してもらう資格なんて…俺にはない…。」
「サ…トシ…?」
「俺…、自分勝手で……最低な奴だ…。」
「サトシ、お前…、一体何を…?」
「なにも…ない…。」
「何もないはずがないだろ!
俺は…サトシが大切で…心配なんだ!」
「俺には…!
俺には!!
…兄ちゃんに大切に思ってもらう資格も、心配してもらう資格もない!」
「どうしてそんな悲しいことを言うんだ!?」
「だって…っ!
だって…兄ちゃんは何も悪くないのに…、…自分勝手な理由で兄ちゃんを避けた!
迷惑をかけた!
俺は…矛盾してるんだ!
俺は最低な奴なんだ…。」
「だから俺と一緒にいる資格はないと?」
「……………。」
レッドの問いかけにサトシは沈黙した。
言葉はなくとも、それは肯定の意を示すもので…。
そんなサトシの反応を見たレッドは許せず…――。
―――バチンッ
サトシの頬を思いっきりひっぱたいていた。
[
*←前
] | [
次→#
]
TOPへ戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -