そばにいるよ
今でも時々、ボクのことを“役立たず”だと捨てたマスターのことを思い出す。
マスターに捨てられたあの日、相性ではボクの方が有利な草タイプのポケモンが相手とバトルしたのがきっかけだった。
そのポケモンと戦う前のバトルでもボクはずっと負けてばかりで、マスターが苛立っているのは分かってた。
だけどね、マスター。
ボクも必死に頑張ってたんだってこと、認めてほしかった。
頑張ったけどその草タイプのポケモンに負けて、そのトレーナーにも「弱いポカブだな。」って笑われて…。
マスターは悔しそうに拳を握りしめてた。
ごめんなさい。
ボクが負けたから。
だからマスターはバカにされてしまう。
もっともっと強くならなきゃマスターが悔しい思いをすることのないように。
今以上に頑張るよ。
そう、思っていたのに…。
マスターはボクに言った。
「お前みたいな役立たずはいらない。
お前みたいな弱い奴なんかいたせいで俺はバカにされたんだ!
お前みたいな役立たずの雑魚なんてゲットしたがる奴なんていないんだよ。
仮にゲットしたとしても、すぐに弱いって気付いて捨てられるに決まってるんだよ!」
そう言ってマスターはボクをヒモにくくりつけて柱に繋いで旅に出た。
弱くてごめんなさい。
だけど、ボク…頑張るから!!
負けないように強くなるから!!
だから、おいていかないで!!
マスター…!!
イヤだ!!独りはイヤだ!!
ねえ、マスター…!!
「ポカブ!!」
「……ッ!!」
必死にマスターの背中を追いかけようとしていたボクを呼ぶ声。
その声を聞いてボクはハッとした。
「大丈夫か?
すごくうなされてたんだぜ?」
そう言いながら心配そうにボクの顔を覗き込むのは捨てられたあとに出会った新しいマスターのサトシ。
ボクが今まで見ていたのは夢だったのだとやっと気付いた。
『すぐに弱いって気付いて捨てられるに決まってるんだよ!!』
ふいに頭によぎったのは前のマスターの言葉。
今のマスターのサトシもボクのことを捨てるのかな?
そんな不安に襲われた。
サトシは前のマスターと違ってバトルで負けても怒ったりしない。
いつも「ありがとう。よく頑張ってくれたな。」って褒めてくれる。
でも、不安になるんだよ。
またあんな悲しい思いをするんじゃないかって。
こんなボクって最低だよね。
サトシのこと、大好きなのに。
なのに、サトシのことを信じられないボクは最低なんだ。
「ポカブ。」
「カ、カブ?」
「今日は一緒に寝ようぜ!」
「ポカァ!?」
「だってさ、ポカブの辛そうな顔を見て、放っておけるはずがないだろ?
辛い時はそばにいるから。」
「……ッ!!」
そう言ってサトシはボクの体をギュッと抱き締めてくれた。
その優しさに、あたたかさにボクはサトシの腕の中で泣いた。
そうしたら、サトシはボクの背中を優しく擦ってくれた。
そうだよね…。
サトシはいつもそう。
優しくてあったかくて。
不安に襲われたボクにサトシは「そばにいるから」って言ってくれた。
そばにいる。
そばにいてくれる。
サトシはボクのことを捨てたりするような人じゃないって。
自然にそう思わせてくれた。
大好きなサトシ。
ありがとう。
ボクもサトシのそばにいるよ。
一緒にそばにいて、笑いあっていられるように。
今はただ、泣かせてね。
次の日からは、大丈夫。
きっと笑えるようになるから。
サトシのそばで、一緒に強くなるから。
ありがとう。
大好きなサトシ。
※※※
はうぅ。
本当に私はポカブネタが多いなぁ。
このお話は“ポケ*トレ物語”という素敵な企画に参加させていただきまして、その企画文でございます。
ポカブを抱き締めるサトシの後ろの方でミジュマル辺りがハンカチとか加えて嫉妬してるといいよ★
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