鳴門 | ナノ
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85.


「ゲンマ、いきなりで悪いが俺の言うとおりにしてくれないか?」

長十郎が今まで溜め込んでいたチャクラを爆発させるように剣を変化させ、敵を一刀両断したすぐ後のこと。シカクさんが頭の中に直接語りかけてきたのだ。

「急を要する事態のため何を言ってもツッコミはなしだ! まず、本物のマダラが穢土転生で復活した」
「すみません。ツッコんで良いですか?」
「なしだと言ったはずだ」

よほど切羽詰まっているらしくところどころ省かれた説明で分かったことと言えば、穢土転生されたうちはマダラが我愛羅たちの守る戦場に現れ強大な力を前に一気に不利な状況へと追い込まれたことくらいだ。今まで自らをうちはマダラと名乗っていた仮面の男は偽者だったと言うことなのか。もし、そうだとしたらあの男は一体何者なのか。分からないことも聞きたいことも山のようにあるが、今は口を挟まない方が賢明だろう。ひとまずシカクさんの言葉に大人しく耳を傾ける。

「マダラと互角に渡り合えるとしたら五影しかいないだろう。天送の術で雷影様と五代目が先着する。お前たちは飛雷神の術で水影様と飛べ」
「何つうか、やるしかないみたいですね。ライドウ! イワシ!」

呼び寄せるなりたった今シカクさんから聞いたことをライドウとイワシ、そして水影様にも伝え、全員で頷いたと同時に彼女を囲み互いの指先を重ね合わせた。

「それにしても一瞬で移動って四代目火影の術のはずでしょ?」
「今は五代目ですが、俺たちは元々四代目火影の護衛小隊の忍です。飛雷神の術は四代目から教わったものです」
「ただ、四代目と違って三人でやらないと出来なくて……窮屈ですみません」
「綱手様にマーキングを施してあります。綱手様が戦場に着き次第、我々も飛びます!」
「了解よ。遅れるのは婚期だけで十分です!」

今だ、と頭の中に響くシカクさんの合図を頼りにチャクラを一気に練り上げた。







「うわっ!」

独特な浮遊感に包まれながら周囲の景色が変わったことを確認しグッと足元に力を込めると、突然現れた俺たちに驚くナルトの声が耳に入った。どうやら俺たちは無事に水影様を送り届けることが出来たらしい。四代目が亡くなってからと言うもの長らく使っていなかったのだが、腕が鈍っていないようで一安心と言ったところか。

「皆、まだ生きているってことは遅れずに済んだようね」
「やっと暴れられる! 待ちくたびれたわ!」
「さあ、準備は出来た!」
「やっぱり長生きはしてみるもんじゃぜ。まさか五影揃って共に戦う日が来るとはな」

五代目が土影様と我愛羅の回復に回り、雷影様と水影様が先陣を切った。出し惜しみはなしだと言わんばかりに周囲の地形を巻き込み変えてしまうほどの強力な術を繰り出し、マダラを追いつめていく光景に圧倒されながらも俺の目はなまえを捉えて離さなかった。

「お前たちは俺とあとの二人を狙うぞ。協力しろ」
「いや、なまえは俺がやる。あんたはライドウたちともう一人を頼む」
「何を言っているんだ! 相手は暁だぞ。せめて二手に分かれるべきだ!」
「あんたの言い分はもっともだしそれが正しいってことも分かっちゃいるが、悪いがこれだけは絶対に譲れねえんだ」

今の状況で俺個人の感情を優先させるべきじゃないことは承知の上で、恐らく二度目はないだろうこの機会を逃す訳にはいかないのだ。

「ゲンマ、覚悟は決まったのか?」
「そんなもんこの戦いが始まった時からとっくに決まっていますよ」
「そうか。ならばなまえのことはお前に任せる。思う存分やり合ってこい!」
「ま、待ってくれってばよ! あんた、なまえを連れ戻すためにあんなに頑張っていたじゃねーか。なのに、やり合うって……戦争が始まった途端、さっさと諦めちまうのかよ! 本気で妹と戦えちまうのかよ!」
「誰が簡単に諦めてやるかよ。とは言え、俺たちは兄妹であると同時に忍だからな……これ以上、あいつが罪を重ねないための覚悟なら決めるしかねーだろ」

だから手を出すな、と未だに納得が行っていない様子のナルトに釘を刺す。敢えて口にすることで背中を押してくれた五代目だけじゃなく、残りの影たちも口を挟んでこないと言うことは俺の好きなようにさせてくれると言うことなのだろう。全くもってありがたい。心内で感謝しつつ、静かにこちらを見下ろしたままのなまえへと向かって一歩を踏み出した。

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