鳴門 | ナノ
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107.


「──始まったんだ。人繋ぎの最期の術が……」

なまえの全身が輪郭が曖昧なるほど強く光っているのが遠目に見える。同時に俺を含めた周りにいる奴らまでもがまるで呼応するかのように淡い光を帯び出し、胸元から伸びたチャクラ糸が宙を走った。
一本の糸が別のもう一本と繋がり、結び目が出来上がるとゆっくりと空気中に溶けていく。異変が起きたのはその直後のことだ。

「どう言うこと? 死んだはずの人たちが……!?」
「俺たちの気憶や感情を介してなまえが死んだ奴らに自分の寿命を分け与えているんだ」
「……だが、そんな奇跡みたいな芸当にリスクが伴わないはずがない。そんなことをしたらなまえは……」
「……そのとおりだ。この術を発動するための対価は人繋ぎの命。術の終わりと同時になまえは死ぬ」
「なっ!? そんなバカな話があるかよ! サスケも帰ってきてこれからだってっつーのに、なまえが死んじまったら意味ねえじゃんか!」

咄嗟に術を止めようとしたのだろう。しかし伸ばされたナルトの手がなまえの肩に触れた次の瞬間、バチンッと一瞬の破裂音を立てながら呆気なく弾き返された。

「無駄だ。術が発動した時点でこちらからなまえに干渉する術はない。どの道もう長くないんだ。最期くらいなまえの望むとおりにさせてやれ」



──こんなところに居たのか
……、ゲンマさん……
そろそろ日が暮れるな……隠れんぼはもう終いだ。ほら、帰んぞ?

──いくら悩んでどうにもならないこともある。そう言うのは追々考えていこうぜ? それに、俺だっている。頼りない兄貴になる気はさらさらないから少しずつやって行こうぜ
……ありがとう……お兄ちゃん
どういたしまして。全く、手のかかる妹だ

──俺がいるでしょ? 安心しろ。俺が必ず助けてやるから



オビトの言葉が合図だったかのように頭の中にいくつもの光景が流れ込んでくる。次々に場面が切り替わっていき、まるで虫食いのフィルムのようなそれは今までのなまえの記憶に間違いなかった。

「記憶も感情も、自分の命すら繋ぎの力に還元した人繋ぎは幸せな過去に包まれて最期を迎える……なまえはもう苦しみの中にいないんだ」
「……本当にこのまま終わっちまうのかよ……ッ。お前、言ったじゃねえか。自分は人繋ぎである前に木ノ葉の不知火なまえだって。なあ、なまえ!」

そうだ、ナルトの言うとおりだ。このまま終わっていいはずがない。
最早どこが痛いかも分からず、鉛のように重たく感じる体に鞭打ちどうにか立ち上がるとなまえの元まで足を動かし、崩れるように膝をついた。先ほどのナルトのように拒絶されるのを覚悟の上でなまえの肩へ手を伸ばせば、案の定決して軽くない衝撃を伴って弾き返そうとしてくる。

「……ッ、くっ……!」
「ゲンマ……!? お前だってボロボロなんだ。それ以上、なまえの拒絶を受けたら……」
「……ッ、いいから。黙って見てろ」

オビトの言うとおりなまえの肩に触れ続けている限りバチバチと雷遁のような痛みが襲ってくるが、意地でも離してやるものか。ギリギリと歯を食いしばりながらもう一方の手を後頭部に回し、なまえの体をそっと包み込んだ。

「なまえ……ッ! 言っただろ? 俺の手を取ったからには、簡単には死なせてやらねえって……」
「……ぅ、……げ、んま……?」

なまえの睫毛が微かに震え、薄く開いた唇が今にも消え入りそうな声で俺の名前を紡いだ。今のなまえに意識があるかどうか分からない。この際、例え無意識だろうと構わない。

「……ッ、ああ。あの時、送り出したのは俺の方だ。お前の口から聞けるまで意地でも離してやるかよ……!」

次の瞬間、視界の一切を奪われた。
後からカカシさんに聞いた話では、俺の体から新たに伸びた無数のチャクラ糸が俺たちを覆い隠したらしい。

「──なまえ……」

第四次忍界大戦が終結してしばらく。木ノ葉の里も少しずつではあるが復興しつつあり、なまえも一命を取り留めはしたが、あの日からずっと眠ったままだ。

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