鳴門 | ナノ
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104.


「──良かったのか?」
「うん。本来、私はここにいないはずの存在だから。それに、四代目が向こうへ逝けたのなら後でいくらでも話せる」
「……そうか」

カグヤの封印に成功し六道仙人と歴代の五影の手によって元の世界へと戻され、つい先ほど穢土転生された四代目とも別れを告げた。
せっかく会えたのだから一言、二言くらい話したかったけれど、きっとナルトの気持ちはそれ以上だろうから。好き嫌いせずにちゃんと食べていることやお風呂にも毎日欠かさず入っていること。友だちがたくさん出来たことに、最も尊敬する自来也様のこと。

「とにかく! 母ちゃんの言ったこと全部上手くいってねえけど、そこそこ頑張ってんだ! 夢だってちゃんとある。俺ってば、父ちゃんを超す火影になる! あっちで母ちゃんにも伝えてくれ。俺のことは全然心配すんなって! しっかりやってんだって!」
「分かった。全部しっかり伝えておくよ」

オビトには同じところへ逝くようなことを言ったが、実際は一つの魂が転生を繰り返す存在である私が四代目と同じところへ逝くことはない。オビトもそのことに気づいているから敢えて尋ねてきたのだろうが、すんなり引き下がったのは私と同じ気持ちだからだろうか。
四代目の体が淡い光をまとい肉体から解放された魂が空へと昇っていく直前まで浮かぶ限りの想いを言葉にし続けるナルトを見ていたら、わざわざ割って入るなんて野暮な真似が出来るはずもないと。それに、まだ全てが終わったわけじゃない。

「サスケ! それがお前の今の夢だってのか? まだお前はただ復讐を望んでいるって言うのか!?」
「確かにかつてはただ破壊を望み、復讐だけが目的だった。だが、今は違う。破壊し、そして創り直すのさ。闇を抱えぬ里。忍世界を一新する! 俺が掲げるもの……それは革命だ」
「上手くいかぬものだ。力を一方に託した結果がかつてのインドラとアシュラ、そして両方に託した結果も今や同じ」
「いや、兄弟喧嘩はここで終わりにするってばよ!」

無限月読の中で眠り続ける五影の処刑を宣言し、一瞥しただけで尾獣たちの動きを止めたかと思うと残らず地爆天星に閉じ込めたサスケは恐らくインドラの転生者の中でも一際強大な力を有し、それを十分に使いこなせている。
今のところ予想出来る限り最悪な展開を一直線に進んでいるにも関わらず、不思議とそれに釣り合うほどの絶望を感じていない。それはきっと無限月読を解術するためには尾獣の力と輪廻眼をそれぞれ持つ二人が互いに子の印を結ぶ必要があると知り、それを尾獣を捕らえたことで自分一人でも可能になったと解釈したサスケの前に立ちはだかるナルトの目に力強い光を見つけたから。

「ナルト、今やお前は尾獣たち全員の人柱力だ。もちろん、お前の中の尾獣のチャクラも後々全て始末するつもりだ。つまり、お前は死ぬんだ。必然的にな」

ふと、そこで言葉を切ったサスケの視線がナルトから外れ、こちらへと向けられた。

「それと、あんたもだ。人繋ぎはカグヤの時代に生まれ、インドラとアシュラの因縁、そして忍世界の闇とともに存在し続けてきた。あんたたちの呪いが続く限り、いくら革命を謳ったところでそれは忍世界の一新にはほど遠い」
「尾獣のこともなまえのことも、俺がそうさせねーの分かってんよな!」
「……やはり、まずはお前か。場所を変える。お前なら分かっているな?」
「……ッ、私にはどうすることも出来ないって本当は分かってる。サスケくんのことが大好きでこんなに想っているのに、寄り添うことも刺し違えることも出来ずにこうやって駄々を捏ねて泣くことしか出来ない。みっともないよね、本当。でも、少しでも私のことが心の隅っこにでもあるなら、お願い。もう遠くへ行かないで! ずっと一緒にいれば、いつかまた昔みたいに」
「……お前は本当にうざいな」

声を張り上げ必死に引き止めようとするサクラをサスケの写輪眼が射抜いた瞬間、彼女は意識を失い、そのまま倒れ込んでしまった。

「……サクラはお前をずっと助けたかったんだ」
「恋愛ごっこでも楽しめってか? 俺にはそいつを好く道理も、好かれる道理もない」
「理由があるのは人を嫌いになる時だけで良い。サクラはお前を自分のものにしたいんじゃなく、ただ助けたいんだ。お前に殺されかけたこともあるこの子が今でもお前のことを想い、涙を流すのはお前を愛して苦しんでいるからだ」
「……それが失敗した過去の縛りなのかもな」

どうやら、絶望を感じなかった理由はナルトだけではなかったらしい。サクラの訴えに耳を傾けることなくこの場から立ち去ることも極端なことを言えば手にかけることだって出来たのに、敢えて幻術をかけて気絶させたのはサスケなりの優しさに違いないからだ。
同じうちはの出身だからこそ分かる。一族の深い闇の中にいても、サスケの心が憎しみに囚われてそのようなことを言っているわけではないのだと。

「サスケ、君がイタチの弟で良かった。心からそう思うよ」

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