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 無題(3/37)



「じゃああの金髪の人は?」


あの人も生徒会?と示されていたのは会計だった。
肩につくくらいの金髪を今は後ろで縛っているから、耳の痛々しい数のピアスがおおやけになっている。目尻が少し下がっているのが雰囲気を柔そうにみせているが、実は強いらしい。あれで武道派だというからギャップで覚えた。


「あれは会計だよ、ちなみに隣の赤茶毛が庶務らしい」


黒染めが落ちてから定着している赤茶けた髪の奴は、俺らと同学年のやつだった。
クラス一緒になったことないから名前までは知らないが、結構泣きぼくろがエロいだとか、たらしとして有名。女たらしならまだしも、うちの学校には女はいない。いわば男たらしだ。

別に同性でお付き合いは一部でよくある。

あんだけ男だらけの密封地帯だしかたがないのかもしれない、とは思うがたらしは無いな。



「じゃ、じゃあそのっ…3人がさっきから大事そうにしてる」



彼女の視線がちらちらと伊神に送られた。
なに、まさかこの子は伊神みたいなのがタイプ?3人が大事にしてるって台詞は引っ掛かるけどとりあえずあんな俺様辛辣な伊神が、ねえ。まあ長いこと一緒にいると慣れるし、慣れたら芯が強くて良い奴だなと思うけど……ほんの数時間でそれを見破るなんて女子すげぇ。


「伊神、伊神千鶴。一番おすすめだよ」

「えっ、あ、もしかして真崎君も伊神君のことを……いや何でもないの!気にしないでありがとうっ」

「あ うん」

「あの……よければアドレス交換しない?」




こうして俺らの合コンは幕を閉じた。

結局生徒会3人に連れられ男だけの二次会にいき、皆が飲んで潰れるという大誤算が起きたけど
最後までオレンジジュースでねばったおれはぐでぐでになってる5人を放っておいて店をでた。帰る訳じゃない、さすがに学園で厄介事を起こしたくは無いし、酒臭さがひけばタクシーに5人詰めて自分は歩くつもり。

我等が誇る生徒会様が無断外泊朝帰りっていうのも、いただけないしな。


「はあ…」


問うタイミングをのがしたから伊神がなんで生徒会と仲が良いのかわかんないままだ。

まあ明日に酔いが響いてなかったらきこう。













「うっぷー……うえぇ」

「やめろその声」


だろうなと言うべきか、伊神も犬飼も俺の部屋で転がっている。
もう陽が上って授業があと数時間ではじまるというのに、なんて傍迷惑な奴らだ。二日酔いになるなら次の日が休みかどうか考えろよ。

帰り道の自販機で買ったミネラルウォーターを一本ずつふたりにあてては、飲むようにと言い聞かせる。


「な゙ぁんでまざきは酔ってないわけ〜え」


犬飼の症状のほうが軽いことには驚いたけど、立てる様じゃないのか床から赤らんだ眼で睨んでくる。


「飲んでないから。ほら伊神、うつ伏せてると余計しんどいだろ」

「う、うえぇ」

「だからやめろその声」


触るたびにあの吐き気を移すような声をあげるものだから、なかなか伊神を起こせない。
朝ごはんを食べにいきたいのだが、部屋に二人残して食べに行くのは嫌だ。いや寂しいとかじゃなく自分の部屋にひとを入れること自体抵抗があるのに、自分がいない間だれか部屋に置いとくのなんてもってのほかだろ。勝手にいじられたりするの困るし、気力なさそうだけどまあ念のため。

うなだれたままの二人と付属キッチンを見比べる。


「仕方がない、のか…」


朝ごはんを作ろう。



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