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 実は狙われてるんですよ




新しく住みはじめたマンションの隣人がホモだった。
通いはじめた大学の先生がホモだった。あれ、今ホモって流行りなのかなとかアホウなこと考えてみたけど、ホモにはやりもなにもないだろ。あーだめだ眠たくて脳味噌が働いてないな。ごはん朝は要らないや、カーディガン着たらもう行こう。
ガチャリ扉を開くと「あ」という声がきこえて そちらを向く。鍵を閉めた仕草の隣人がそこにいた。

「…おはよございます」
「うん、おはよ」

緩い黒髪のウェーブがふわりと揺れた。隣人はどこか美人さんだと言わざるを得ない雰囲気を纏っていて、ホモだってカミングアウトされたときも「あーそうなんですか」程度の驚きに留まった。え、驚いてなさげ?いやあのときは引っ越しやらなんやらで寝てなくて眠たかったんだ。

「大久保くん、今から学校?」
「あ、今日は1限なんもないんです」
「そっかー暇ならまたご飯食べにおいでよ。大久保くんは放っておくと食べなさそうで心配だなあ」

ホモ。と、いうところを抜かすと驚くほどに普通な隣人。斎籐さん。
いやむしろ凄くいい人な気もする。ごはんはそれなりに作れるけど、面倒くさがりで作らず食べずな俺に晩御飯をご馳走してくれたり。鍵を忘れた俺を泊めて朝ごはんを作ってくれたりした。その間、一応ホモだのなんだのを気にしてみたけど向こうはその気ゼロらしく、お友達のように笑っていた。考えすぎた自分がむしろ恥ずかしかったよ。きっと斎籐さんからすれば五歳もはなれた大学のガキは、弟並みに恋愛対象外なんだろう。
今度ビーフシチューが食べたいだとかすき焼きしたいだとか、一人じゃ作れないものをリクエストすると「考えとく」大久保くん肉ばかり食べてそうだし、と、見透かされた。実は野菜は自分から摂取しないタイプなんだ。

「まあ、斎籐さんが作るなら何でも美味しいですけどね」
「お口に合うなら嬉しいよ」
「そんなに腕磨くと、女の顔がたちませんよー」
「良いんだよ、俺、ホモだしね」
「……ああ」

目が覚めた。モヤが張ったような頭のなかが一気に明るくなり、そういえばそうだったなと頷かせる。

「じゃあいい奥さんになりますね」

冗談でそう言うと、少しまばたきしてから恥ずかしそうにはにかんで「夫なんだけどね」という。まず男同士で女役とかあるんだろうか。そこら辺べつに俺が知らなくていい現実かもしれないから、特に深くは追求せずにいよう。






(あーはやく
斎藤さんのビーフシチュー食べたい)
(あーはやく
大久保が気になってるって伝えたい

実は狙われてるんですよ