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「え……忘年会?」


叔父はこの時期忘年会で店を貸切にすることが多いと言って、メニューを張り切って考えている。

おれはその試作品を写メってツイッターに乗せる。


この店のアカウントで呟いて、俺のアカウントでリツイート。


じぶんのリアルでリツイートするはずが

ゲーム用のアカウントで間違えてそれをしたことが 過去に一度。
そのせいで俺がここの付近に住んでるんじゃないかと疑惑がもちあがったが、なんとか誤魔化した。

ただしつこい奴も何人かいて、先日のようにオフ会をここでする奴がでてきたのだ。


主にカイドウ。


一方的に容姿は知ってしまったが、黒縁メガネに黒髪を七三分け。
いかにも営業マンって感じのスーツ決めて、喋り方がやけに説教くさい。カイドウっていうのも、本名かららしく二階堂が名字なんだとか。御堅そう。

まあ都内住みなやつは結構多くて、頻繁にここを活用されるようになった。売り上げとしては万々歳な結果だが、一方的に知っているというのはなんだか気まずい。


「いやーいつもご贔屓にしてくれてる二階堂さんが、忘年会の予約をしたいって言ってくれてな」

「カイド……え、何人くらい?」

「多ければ30くるって」


それ間違いなくあのグルの忘年会だよな。

集まろうと思えば、さすがランカー金持ち集団というのか。

休みさえあれば地方からでも飛んできてしまうらしく、前年の忘年会には20人近くあつまったんだとか。いまのカイドウのグルは30人程度、ほぼ全員集める気なのか。


しくったな…。


じつは先日あまりにしつこいカイドウの尋問にうっかり口を滑らせた。


《昨日あのカフェでお前をみたんだからな!》

《え?昨日は行ってないけど》


昨日、は。

打ち込んだらすぐチャットに発信してしまう右手が初めて憎らしくなる。

一瞬固まってすぐ《いやまああのカフェ行ったのどれくらい前だったかな〜》なんて誤魔化したつもりだったが、目ざといカイドウにはばれたのかもしれない。昨日は、なんて、いつも来ているような台詞じゃないか。


「はあ…いっそアカウント作り直そうかな」


そうはいえど、配信直後から使っていたアカウントだ。
アバターや名前に愛着がないわけではない。可愛いだけを意識した女の子アバ、ゆゆという名前。何年前だろう…会社員になった年に、ストレス発散でつくったから3年…そろそろ4年くらいたつか。

そんなアカウントをやすやす消せるわけもなく。

築いてきたゲーム内でのフレンドたちもすべてが惜しい。


「うーん、ありすちゃんに相談するか」


女の子アバとして飄々と通しているありすちゃんも、似たような悩みを抱えていた。

アカウントを男に作り変えたいけど、惜しいと。だからこそ仲良くもなったのだが、今までの流れでおれが男だというのもまだ言っていない。


「とりあえず試作品食べたら片して帰ろう」


ひと口、忘年会で使われるだろうパーティクラッカーをたべた。





『まじで……?』


予想以上に忘年会の話に食いついてきたありすちゃんに、叔父から聞いたというのは伏せて風の噂で、なんて打ち込む。

実はクエに誘うのに楽だから、LINEもしている仲だったりする。

相変わらず打ち込むのがめんどくさいと、ありすちゃんだけマイクを起動しているけど。俺は打ち込んで未読を増やしていく。LINE開かずに通知で読んでるな。


『待てよ。ゆゆちゃんいかないよね』

《行かないよ!》

『じゃあ俺もパスだな。ゆゆちゃんダシにしてカイドウからの誘い断ろう』


すでに誘われる気満々でいるのか。

まあ、誘われるんだろうな。

ありすちゃんは人気者だ。ランカーな上にかなり顔がひろい。ただこつこつと強くなっていく個人主義スタイルじゃなく、いろんな人に絡んで弱者から強者まで、いろんな人を連れてクエストに行くからかなり好かれている。

ただそのおかげで、構ってちゃんのメンヘラビッチと異名があるのも事実。

でもそれは嫉妬からくる噂というか、実際面と向かって悪口を言ってくるやつはいないし。そもそも男でビッチとかしっくりこない、構ってちゃんなのはガチだ。こうして誰かと話してないとすぐ病みツイートしだす。
おれは案外、それが面白いけど。



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