5人の王子様の話5
コンビニで雑誌を立ち読みしていた。
エロ本を堂々と開いて 次のページへ進もうとしたら、ふと、視線を感じて顔をあげる。
「ひい」
イケメンがガラスに貼り付いてこちらをみていた。
まるで夜の自動販売機に引っ付いている蛾のように気持ち悪い。鳥肌がたった。
「……、…」
何か口パクで伝えてくるイケメンに、分かった。となにも分からないまま頷いてエロ本を閉じて、直す。
さ、アイスを買ったら帰ろう。
夜中のコンビニがなんとなく好きで、更にはエロ本を読んでからのアイスが堪らなく好き。
今日は何を買おうかなとアイスの什器を覗き込むと、お客の来店する音がした。
カランカラン、そんな音。
「いらっしゃいませー」
さっき俺がエロ本を読んでるの写メってた店員さんが、元気よく声で出迎える。
俺は思わずコンビニの出入口方面をみて、やばい。そう口からこぼして逃げた。
奴が来そうな方向とは逆の方向に、丁度見えないように絶妙な駆け引きで回り込むとそのまま静かにコンビニの外へ走る。
俺の直感からして、きっとあれはイケメン。
俺のエロ本立ち読みをガラスに貼りついて見てたあのイケメンだ。
「ふう、夜中のコンビニなんて行くもんじゃないぜ」
いい汗かいたけどな。
湿ってすらないさらさらな額を拭うと、帰路についた。
まるでバースデーケーキのロウソクのように感覚を空けて取り付けられている街灯を追いかけるように歩いていたら、重なる足音があることに気づく。
ぺたん、ぺたん
こつん、こつん
こ、これはちまたに噂のストーカー。
兄ならまだしも俺にそれは無いか、とすればなんだ帰り道が一緒なだけか。
ホッと胸を撫で下ろし、ちょっとジョギングでもしようかと走りだしかけた瞬間
「由季いいいいいい、こんなところで会えるなんて運命だよねえええ」
「ぎゃあああああ」
がばあ、いつの間にこんな近くにいたのか後ろから抱きついてきた野郎に、ご近所迷惑も気にせず叫んでしまった。
焦りに焦ってヘドバンをかます。
「ぐおふ」
「ぜえ、はあ。え、だ、だれですか」
先ほどのコンビニで蛾の真似していたイケメンだった。
今度は本当に汗を拭い、道路に尻餅をついたイケメンの言葉を思い返す。
由季?たしか兄の名前を呼んだ気がする。
ん……?よく見たら、王子様の1人か
「酷いよ由季〜…どんな僕でも受け止めてくれると言ったくせに、やっぱり、僕なんて……そうだよね、不細工はやっぱり顔を出してはいけないんだ。眼鏡をしなくては、前髪を伸ばさねば、元に戻すよ、だから僕を捨てないで、見捨てないで由季」
くっそ重たい奴だな
めそめそ、泣き真似をしているのか本当に泣いているのか定かではないがなるほど眼鏡をしていない。
とゆうことは、誰だ?もしかして、あの根暗おたくか。
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