飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


どれくらいの日が経っただろうか。
もうかれこれ何ヶ月も此処にいるような気がするが、
実際はさほど何日も経っていないだろう。
意識を失った回数的には10回をゆうに超えるが、寝た回数ではなく。
痛みに耐えかねて意識が飛んだことも考えれば、まだ3日か4日程だと思う。

「強情な女ね」

セリフは何とも皮肉を含めた言いようだがそのセリフとは裏腹に
彼は楽しそうな笑いを含んだ音色を吐いた。

―身に覚えがないもんを吐けと言われても、、

私は内心で毒づきながらもそんなことを言えば、
もう折られる骨もないこの身にさらに傷が増えることが明確なので、
黙り込んだ。

「ヒュッ―」

何も言わなかったことが面白くなかったのか首を絞められた。
器官を潰れないぎりぎりで絞められているのか。
圧迫感とともに器官に通る空気が凶器のように微かに痛む。

―ぁっちょっと気持ちい。

この顔もわからない男を狂ってると思いっているが、
それと同時にこんな事をされているにもかかわらず、
痛みとは少し違う苦しさと酸素が減ったことによりボーっとしてくる感覚に
少しの悦を感じる自分も相当可笑しいと感じる。

―これが俗にゆうストックホルム症候群?

確か被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと、まぁ、簡単に結えば自己防衛本能。
そんなことを考えていると首にかけられていた手が離される。

「ゴホッ、、、ハッ、、、ゴホッゴホッ」

一気に酸素が取り入れられたことによって酸素を取り入れるべく荒れる呼吸と
絞めつけられていたことによって喉に蓄積された水分を体が排除すべく咳き込むと少し気分を良くしたのか、
目の前から彼がいなくなったことがわかる。

「お前、名前何ね」


その質問はいつもと違う質問だった。
この数日間、どこから来た。どうやって部屋に入ってきた。誰の指図か。の3つをローテーションで聞かれてきた。
もちろん私は私の部屋で倒れたわけで、だから此処も私の部屋だと思っていた。
だが、彼の今までの質問から察するに私は彼の部屋に突然現れたという事らしい。
とそんなことを考えていると、、、

「ハッそれも言えないか」

―パシュッ
「アァッ――――ゥっ」

指が一本無くなった。
身体の一部が切り離されたのは初めてだ。
痛みは慣れはしないが、耐えることが出来る。
でも、切り離されたもう戻ることはない体の一部を失った喪失感は、
今までの痛みには比べ物にならないくらい私の心を揺らす。

「言う気になれないか。足の指の方がよかたか」

「、、、ぁ、リノン、やめ、、やめて」

名乗ったとともに此処にきて初めて拒絶の言葉を吐いた。
嫌じゃなかったわけではないが、拒絶したところで彼が私をいたぶることを止めないことは明白だった。
だからこそ、無駄に拒絶せず、1日目の質問には事実私は自分の部屋にいただけで気が付いたらこの状況に陥っていたと、
ありのまましか語らなかった。だが、それは信じてもらえず。2日目からはひたすら沈黙を守っていた。

しかし、指の喪失は私にとって痛み以上の恐怖を与えた。

「そう、何時もそれくらい従順でいると良いね、リノン」

―あぁ、もう正常な判断なんて出来てないのかも

指が無くなった痛みが引いたわけではないのにもかかわらず、
撫でられた頬から熱が帯びる感覚がそれ以上に鮮明に感じられて仕方なかった。


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