飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


初めて聞いた反抗的な言葉だった。リノンは何をしても甘んじて受け入れたし、自分の物だと言ったのにそれはまるで今までの言葉を全て翻すかのような言葉だった。

−逃げる?

逃げないし離れない、ワタシが望めばずっといると言った言葉は嘘だったのかっと思って、思い出す。自分は愛してるとも言ったのに彼女の口から愛の言葉の一つも出てきたことはない。煮えたぎる苛立ちに感情的にリノンを傷つけようとして、辞めた。

「ただら逃げるといいね」

そう言ってリノンを拘束したばかりの縄を解いて、リノンを見た。驚いた表情をしていた。いつもいつもコロコロと表情を変えるリノンに振り回されて、自分のペースを乱すそれが苛立ちと共に何処か心地いい気分にさせていたが、今日は違う。

「どうして?」

リノンから出た疑問にワタシは答えなかった。いや、答えれなかった。自分でも何故そう言ったのかわからなかった。欲しければ奪えばいいし、渡したくなければ閉じ込めておけば良いとそう思っていたはずだ。
けれど、今のリノンを痛めつけて閉じ込めた所で自分の物にはならない様な気がした。

「好きにすると良いね」

ワタシはそう言って部屋を出た。

今までの事を思い出して、当たり前だがリノンは何時もワタシが望めば、そうすると、ワタシが望めば側にいるとそう言っていた。決して望んではいなかったのだ。
そう思い至り、よく知らない気持ちになるが、その感情への名前の付け方がわからず、もう、考えるのをやめようと思うが、何度も何度もグルグルと同じ事を考えてしまう。自分はこれ程までに囚われて振り回され、そして、全て手に入れてしまいたいと思うくらい彼女を愛しているのにそれなのにと思うと酷く憎らしい。

「早かったわね」

広間に行くとパクノダがそう声を掛けてきたが返事を返す気にもなれず、横を素通りして、適当な場所に座る。自分の部屋に帰っても良かったが、今は、一人でいると同じ事を堂々巡りで考えてしまいそうで、っと思ってフェイタンは何て馬鹿な思考をしているんだっと自分に呆れた。

「リノンはどうしたの?」

「どうでも良いね」

今、それを考えたくなくて部屋に戻らなかったんだ。その話はやめろっと思いながらパクノダを睨んでそう言うとパクノダは溜息をついた。

「何かあったの?」

「逃げたいらしいから好きにさせたよ」

言うつもりは無かったのだが、何処かに吐き出したかった。いや、自分に言い聞かせたかったのかもしれない。自分が、そう選んだのだと。

「本気でリノンがそう思ってると思うの?」

この前会ったばかりのパクノダに何がわかるっと思いながらも、リノンが本当に逃げたければタイミングなどいくらでもあったはずだというのは理解していたので言い返せなかった。

「ちゃんと話した方が良いわよ」

記憶を見たからわかるけどあの子があなたの事嫌いにはならないわ。っとパクノダは言い残して居間から出て行った。

−何を話せと言うね


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