飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


「んっ、、、、」

「よぉ、起きたか?」

目覚めて一番に見えた顔に戦闘態勢をとろうとしたが、手も足も動かなかった。そうだった。私は手と足を犠牲にして、生き残る道を選び、流石に意識を失ってしまって死んだと思わせれれば何とかなるかと思ったが、流石にそこまで鈍感ではなかったみたいだ。
周りを伺うと私からは見えないが後3人の気配がする。

「私は展示会のスタッフじゃないけど?」

私を攫う理由があるとすればそれくらいかっと思ってそう言ったが、それは知ってるっと男は言った。

「だったら早く殺せば?貴方達が欲しそうな情報なんて一つも持ってないよ、なんなら自分で死んだほうがいい?」

「待て待て待て、殺そうとは思ってねぇよ」

男は私の言葉に慌ててそう言った。だったら何で連れてきたんだよっと思いながら、男を見ると嘘はないように思える。素直そうな男だ。
ただ、情報もないこんな手足ももげかけた女を何故連れてきたのか。

「まぁ、俺の知りたいことは知ってそうだが」

男の後ろからもう一つの男の声がした。少し青年のような、無機質な声で初めてフェイタンに会った時の声を思い出した。お互い警戒心丸出しで何の感情も乗っていない短調な音。

「貴方達が欲しがるような情報持ってる自覚ないんだけどな」

どう転んだとしても私はきっともうここから逃げられないだろう。ただ、拷問されても何も知らないから出てくる情報もない。それに持っていたとしても、フェイタンの拷問で慣れてるし、生き返る時の痛みに比べれば拷問もマシに思えるのだから、何も恐れることはない。

「アナザーワールド」

知っているかっと付け加えられて聞かれたが知らないと答える。正確に言えばあの展示会で見たが、アレについては何も知らないから。ただ、展示会で見る前に自分の部屋で見たことはあるかもしれないけど。

「だったら、この文字に見覚えは?」

そう言って顔の見えなかった男は私に近づいてきた。上半身裸にコートのオールバック、こいつらはみんな露出狂なのかと顔は良いのに残念と思いながら黙って男が見せてくる手帳に目を向けた。

−これを読める人が自分以外にいるのかはわからないが、もしいるとするならサルヴァトーレ・ジュリアーノの財産を全て送ろうと思う。ただ、渡すだけでは面白くないので頑張って探してくれ。;)

誰だよこれ書いた奴っと思いながらサルヴァトーレ・ジュリアーノの財産って何だろうと考える。聞いたことのない名前だけど、文書は日本語で書かれている事を考えるとこれを書いた人は日本語だろうが一番最後の文字は海外の顔文字だった気がする。

「何とかいいな」

「読めるけど、意味はわからない」

私は本当の事を言った。オールバックの男は何が書いてある?っと聞いてくるので私は書いてある内容をそのまま伝えた。手帳にはまだ続きがあるのか、男はページをペラペラとめくりながら何か考えているのか口に手を当ている。

−あぁ、最悪、いつまでこの状態で生きながらえないといけないんだろ。

恐らくこれで私には生かされる価値ができてしまった。生きて帰れたなら手足がもげても良かったが、このままここで手足も動かぬまま生かされるくらいなら死んだほうがマシかもしれない。あぁ、どちらにしてももうフェイタンには会えないのかと思うと悲しくなってきた。

「パク」

「了解」

パクと呼ばれた女性がオールバックの男と入れ替わり私に近づいてきて、

「何を知ってるの?」

そう言って私の肩に触れた。しまったと思った時にはもう既に遅かった。今の私の脳内には、さっきの手帳の事ではなく、フェイタンとの日々が浮かんでいて、もし彼女の能力が記憶に関係しているなら非常にマズイ。

「うっ」

「パク!おい何したんだ!」

私が男と戦う時に入り口にいた女がそう叫んだがそんな事どうでもいい、私の大切なフェイタンとの記憶を覗かれたかと思うと腹立たしくて悔しくて仕方ない。

「待ってマチ、何もされてないわ、それより」

っとパクと呼ばれた女性が言った瞬間、慣れ親しんだ気配を感じて、彼が見えた瞬間私の意識は途絶えた。




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