飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


「何やてるか、甘いね」

気がつくとフェイタンが私の背後に立っていた。緊張か興奮か、恐怖かわからないが私の手は少し震えていた。むせ返る程の血の匂い。それは自分が拷問されている時によく知った匂いだが、自分の手についているそれは自分のものではない。

「無理か」

「大丈夫、やらせて」

何度も死を経験してる自分ならわかる。このまま置いておいても彼女は助からないだろう。それでも甘いと言うフェイタンは、私を試しているのだろう。高鳴る鼓動を必死に抑えながら彼女に近づいた。

「あっグッ、、ハァハァ、やめて」

血管しか切れなかったのかまだ、喋れる彼女は必死に命乞いしてくる。非現実的な光景と雰囲気に自分の身体が自分の身体ではないような感覚がする。
私は硬で強化した手を彼女の胸の下に突き刺し、横隔膜を切り裂いた。彼女の上半身が筋肉の反射でグッと起き上がりパッタッと倒れて数回痙攣したのち動かなくなった。

「行くね」

フェイタンはそう言って私を見た後、部屋を漁って見つけた服を私に渡した。私は、自分の服や顔に血がベットリと付いていることに気づいた。貰った服を持って着替えようと服に手を掛けると手が震えていてうまく脱げない。

「怖くなたか」

フェイタンは凄く優しい声音で私に問いかけた。怖くないと言うと嘘になる。自分が自分でなくなってしまったような、何か自分の中で崩れていくような気がして仕方ない。トクトクと鳴っている心臓は、フェイタンに拷問にかけられる時や抱かれる時のようなものに似ているようで違う、耳元で音がしているようで熱を帯びるどころか熱が冷めていくような感覚がする。

「リノン、もうついて来ない方がいいね、家で留守番してるよ」

フェイタンは私の頭を撫でながらそう言った。その瞬間胸がキュッと痛み先程とは比べられないくらいに手が震えて、キーンと耳鳴りのようなものが聞こえた。嫌だ、それだけは絶対に嫌だ。

「ヤダ、、、大丈夫だから、お願いだから、、、一緒にいたいの、、」

「リノンには向いてないね。別に捨てたりしない、待てればいいだけね」

フェイタンはいつも以上に優しく私を抱きしめてそう言った。フェイタンは必要ないとは言わなかった。家で留守番してればいいとは言われたが、いらないとは言われなかった。でも、それでも私はただフェイタンの帰りを待つのではなくて隣に立てるような女になりたい。

「頑張るから、、初めてだからビックリしただけだから」

私がそう言うとフェイタンは何も言わずにハァとため息をついた。駄々をこねる子供にどうしたものかと悩んでいるかのようにつかれたため息に心は暗くなっていく。涙が出て止まらなくなる。お願いだからっと言う私を撫でる何時もより優しいフェイタンに余計に胸が締め付けられる思いだった。

「仕方ないね。2週間ね。2週間でもう一つ戦闘できる発でも習得できれば連れててやるね。」

たぶんフェイタンはそれは不可能だと思っていて言っている事はわかっていた。前に発の能力は無意識に習得した人間もいるが大体は、半年以上の時間をかけて習得するものだと言っていた。だから私を諦めさせて家に帰すことを考えているという事は明らかだった。ただ、私は諦める気なんてない。

「絶対、出来たら連れてってくれる?嘘無しだよ」

「あぁ、わかたね。その代りワタシは手伝わないよ」

何時も修行の時とかに騙してくるフェイタンに私は釘を刺したら、フェイタンは私をどうにか家に返したいのか、協力はしないと言った。

―絶対連れてってもらうんだから

私の心はさっきより幾分かマシになっていた。


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