飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


家に着くと抑えていた感情が沸き立つように抑えが利かなくなる。玄関の中に入ると後ろから入ってきたリノンが普通に安心してそこにいるのが気に食わない。自分をこんなに振り回しておいて何も考えていないのか平然としているリノンを滅茶苦茶にしてやりたかった。

もう考えてやったのか、無意識だったのかはわからないがリノンの首を持って持ち上げた。後ろにあった扉にぶつかった音ともにリノンのむせ込んだ声が聞こえて、苦しいのか痛いのか自分の手を掴んできたが、その苦しそうな声もひずんだ顔も今は自分を満足させられない。

―足りないね

そう、直ぐに殺しても自分の今の感情を到底抑えられるものではないと思ってリノンを床に投げた。

「、、、くっ」

くぐもった声も何時ものように自分を興奮させるものではなかった。
打った場所が痛かったのか身体を丸めて痛みに耐えようとするリノンにもっとすべてを支配したくなる。

「なに寝てるね、来るよ」

そう言って髪を引っ張って趣味の部屋に入ってリノンを離した。そして、準備を始める。彼女を切望に叩き落としてやりたい。何時もと同じようなものではダメだと椅子ではなく磔用の台を置いた。
何を考えているのかリノンは部屋に入ってすぐの所に先程と同じように床にいる。

「そんなところに寝てるならこちに寝るよ」

と言って、リノンの髪を引っ張り上げてそのまま台の上に乗せた。
何でもいいリノンが絶望してもう止めてくれと悲願してそれでももう此処から逃げられないと絶望し、逃げる気も失せ去り。自分がいなければ生きていけないようになればいい。
痛みと自分の事しか考えられなくなってしまえばいいのだ。ただ与えられたものだけを感じれば、そうすれば、自分以外を見ることも。。。
フェイタンはそう思いながら、工業用のパワーボックスを手に取ってリノンに近づいた。

「フェイタン」

震えた声にどんな顔をしているのか見てやりたくなってリノンを見ると泣いていた。
見たかったはずだった。リノンの泣き顔を。。。無茶苦茶に壊してしまいたかったはずだ。望んでいたはずなのにそれはただ自分の心に傷をつけるだけだった。

「なんのつもりね、泣いたところで何も変わらないよ」

そう言ったフェイタンに何も言わずリノンはジッと見つめてくる。腹立たしさと悲しさと喪失感と全て全てリノンのせいで、頭が割れそうなくらい感情が頭の中でグルグルと回り、もう考えることを放棄した。

「大体、離れたら殺すいたね、それに!」


っと言ってから、全てをぶちまけてやろうと思ったのだが、少し自分が言おうとしていることを考えて気恥ずかしくなった。それでも、自分をこんなに支配している感情を吐き出してしまいたくて、、

「抵抗しなかたね」

フェイタンがそう言うとリノンは驚いた声を出した。そして、フェイタンは自分にも驚いた。この後続けようとしている自分の言葉にも

「フィンクスに肩を抱かれても抵抗しなかたね」

言ってしまえば楽だった。

「お前は私の物よ」

―だから、誰にも触れさせたくないね

だから、全てが自分の物になるように此処に閉じ込めておきたいだけど、今のリノンのようにこんな風に泣かせたいわけじゃないとリノンの涙を拭うとリノンは笑った。やっぱり、笑った顔が美しい。さっきまで泣いていたくせに何を笑っているのか聞くと

「フェイタンが望むら私はずっと此処にいるよ」

突拍子もなくそう返ってきたが、

「それを望んでいるわけじゃないね」

いやそれを望んでいる。望んでいるのだけど、そうではない。リノンはだったら好きにすればいいと言った。だが、もとよりリノンに有無も言わせずしているではないかと思っていると。

「フェイタンの望むままに、飽きれば、、、捨てれば良いから、私はフェイタンの物なんでしょ?」

と言ってくる。その瞬間、リノンの泣いていた理由がわかった気がした。もとよりリノンに逃げる気などなかったのだ。でなければ捨てるなんて言葉は出てこないだろうと思った。
そして、リノンは元々散々拷問しても泣きそうになったのはたった一度初めて身体を切断された自分の姿を見たときあの時だけだった。そしてあの時でさえ今のように泣いてはいなかったのだから。
だったら、リノンが恐れていたのは自分に捨てられるのではないかと思ったからなのではないかと思うと少し気が晴れた気がした。

「そうね、お前は私の物だたね」

それは不確かで、不明確で、だけど、聞けはしなかった。

ただ、口づけてこの前と同じようにリノンを抱いて思った。リノンを苦しめて殺して抱いて、全てを自分のものにしたくて誰にも渡したくなくて、だけど泣かせたくはないこの感情は、自分とは無縁だと思っていた感情で、けれども認めてしまえば簡単なことだった。

―愛してるね

そう呟いて撫でたリノンの眠りに落ちる顔は、痛みにひずんでいるわけでもないのに可愛いと思えた。



prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -