飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


あれからさらに3日後
いつもと同じ時間彼はリノンがいる部屋にやってきたが、いつもと違ったことに椅子に座らせた彼女は全身を痙攣させて呼吸を荒くしている。
一瞬で思いついたその症状は敗血症。いわば感染症だ。
その可能性が頭になかったというわけではない。いずれはこうなることは分かっていた上にそうでなくともいずれかは殺そうと思っていたのだからなんら動揺することはない。だが、

―惜しいね

そう思ってしまう自分に少しの驚きとそしてそう感じさせる彼女が腹立たしくて仕方ない。
自分をこんなにも翻弄しておいてあっさりとしかも自分が殺すのではなくたかが菌によってその体を侵食させ、自分が与えた苦痛より彼女の身体を不自由にさせるなんて。

「もう駄目ね、こうなったら終わりよ」

と呟きながらも内心では、
まったくもって面白くない。なんて思っていると彼女がフェイタンを見上げた。

その顔は悲痛に歪んだものでなく。初めて見た彼女の笑みだった。

「美しいね」

ほんとに腹立たしいと思いながら吐いた言葉と共に考えるよりも早く彼女を抱きしめていた。
そして同時に自分の行動に困惑する。
自分は何をしているのだろうかという事と彼女の現状への苛立ちそして、

自分以外のものがリノンを侵食するならば、自分が殺してやりたいという純粋な殺意。。

「ゴフッ」

耐えかねて口から洩れる彼女の血は美しい。
そして、彼女の身体の中もすべてが自分のものになった感覚はやはり自分を満たしていく、
だが、それもこれで終わってしまうのかと思うと喪失感を大きくした。

そっと彼女を腕の中から離してリノンの顔を見た。

もう虫の息の彼女の顔にはやかり笑みが浮かんでいた。
穏やかでいてまるで幸せそうな表情である。
見たいのはそんな顔ではないはずなのに美しいと思えて仕方なく、そしてそれは自分の手によってもたらされている。

「なんて、馬鹿な女ね」

と言った言葉はもう彼女には届いていないだろうが、フェイタンは彼女の腹に突っ込んだ手で彼女の中身を撫でた。
彼女の中は暖かくそして全てが綺麗なものに思える。
だが、いくら撫でまわしてももう彼女からあの美しい声も自分を満足させるあの表情も見ることはできなかった。



それでもフェイタンは彼女が冷たくなるまで彼女の隅々まで切り裂き彼女の全てを覗いた。
それこそどれくらいの時間が経ったかもわからないくらいに。。


ヴゥーヴゥーヴゥーヴゥー

―煩いね

何時から鳴っていたかわからない携帯を血塗れたまま掴んだ。
表示は『団長』
他の奴なら着信拒否にでもしてしまおうかと思っていたが、仕方ないと電話に出ることにした。

「何度も電話したんだが、取り込み中だったの?」

冒頭はキリリとした団長の声だったが最後の言葉は、青年のような声でまるで事情のさなかに電話で遮って悪かったと言いたげな言いようだ。
それを聞いて現実に戻ってきたような感覚に陥る。

「いや、少し手が離せなかたね」

「そうか、この前の仕事の件だが早まった。まぁ2・3日で終わると思うが。」

盗りに行くはずの絵の出展は3週間後だが、出展前の輸送時を狙うことにしたらしい。
基本的に蜘蛛は蜘蛛の意思に従うだから、拒否はあり得ないのだが、それでもこうしていちいち電話で連絡してくるあたり、彼が律儀であることがうかがえる。

「丁度よかたね、退屈していたところよ」

そう、今さっき玩具が壊れたところなのだから。。。。


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