飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


―カハッ!!

クロロがリシュアンの腕の中からスワンクロックを盗ろうと近づいた瞬間。リシュアンがシアンの心臓を貫いた。

「リシュ。。。アン・・・」

「ハハハハ!!!残念だな。彼の身体は僕の物だ!どうだ、愛していたものから殺される気持ちがお前にわかるか!!」

そう言いながらリシュアンの身体に入っているサントは何度もシアンの胸を刺す、血は出てはいないが、シアンの顔からは痛みは感じているのか、サントの剣から逃げようともがいているのがわかった。
その瞬間、私は此奴らを殺して全て終わらせようと思った。
もうなにもないなら、せめてこの元凶達を葬って。。

私は手から出た血を二人に向かって2度放った。そうだ、気が動転していて忘れていた。
一打目は黒い空間に吸い込まれたが二打目はサントの肩にあたる。それを確認して直ぐに三打目をサントの胸目掛けて放つが少しずれて肩に刺さった。

「ぅぁっ。。。。このアマ!!!!」

「やめてくれ!」

私がさらに攻撃しようとするのをシアンが止める。身体はリシュアンの物だからか。
私はそれを無視してリシュアンの身体にもう一撃攻撃した。心臓を潰した感触に気持ち悪さを覚えながら引き抜くと、サントは逃げるでもなくシアンに抱きついた。

「殺せよ!!!俺が憎いだろ!!殺してくれよサルヴァトーレ!!」

「ごめん、ごめん。サントいやリシュアン」

シアンは倒れたサントを抱えて座り、サントに謝りながら彼の手を取っている。

「君は最後まで残酷なんだね。」

「なんで、こんな」

「君に同じ気持ちを味わってほしかった。あの時の俺の気持ちを、、そして気づいてほしかった俺が何者なのか」

シアンの腕の中にいるサントいやリシュアンは、サント・フレーレスなのだろう。この世界で長年にわたり、リシュアン・ドーテとして生きた同一人物。

「君が憎くて仕方なかった!!俺をおいて、、、」

シアンから聞いた話だと、サントは彼を恨んでいたから元の世界に戻したくないと言っていて、彼は女神を手に入れたいが為にスワンクロックと異世界の扉を集めようとしていたと言っていたが、恐らくまったくもって反対だろう。
彼はサントは自分を殺したサルヴァトーレを愛していたからこそこの世界に召喚し、自分をリシュアンと偽ることで彼に近づいた。
これは私の憶測だが、彼はもう一度彼に殺されたかったのではないだろうか、それと同時に彼に殺されたかった。

「ごめん、でも、それでも君を愛してるからこそ君には生きて欲しかった。」

「君のその純粋さは、、、残酷すぎるよ」

静かに眠るように目を閉じたサントをサルヴァトーレは抱きしめながら泣いていた。。

「好きってさ、そんな綺麗なもんじゃないよ」

私はそう言いながら横たわっているフェイタンを抱き上げた。思ったよりも軽いんだな。
何時も私なんて軽く腕一本で持ち上げちゃうし、ちょっと小突かれただけで吹っ飛ばされちゃうから、もっともっと大きく感じてた。
もう、私を抱きしめてはくれないの?もう愛してるって言ってはくれないの?
一度興奮から覚めた思考はグルグルと吐き気のするような考えを治めてはくれない。

「これは君にあげるよ」

そう言ってサルヴァトーレが私が抱きかかえているフェイタンの上にスワンクロックを置いた。

「ねぇ、クロロ私が連れて帰っていい?」

「あぁ」




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