飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


『どうして、どうしてサルヴァトーレ!!』

『仕方ないんだ。僕のせいだから、だから、』

青い髪をした中年の男が茶色の髪をした男の人を抱えている姿が薄らと見える。身体を動かそうにも生き返る時の様に自分の身体が何処にあるのかわからず、私は成り行きを見守ることにした。
茶色の髪をした男があの手帳に載っていたサルヴァトーレならあの青い髪をした人物はあの天空競技場であった人物だろうけど、どういう関係なのだろうか。

『お願い死なないでくれ』

『無理だよリシュアン、時を戻せても傷はそれじゃ治らない。』

『だったら君の女神を俺に!』

リシュアン、、リシュアン・ドーテ!本を一番初めに売った人物。二人は友人だったという事か。
サルヴァトーレと呼ばれた彼を見てみると胸の付近から血が出ていて恐らく止血したとしてももう長く無い事がわかる。サルヴァトーレの腕の中には今にも動き出しそうな小さな白鳥が抱きかかえられている。
ふと、リシュアンと言う男が言った女神と言うセリフに手帳にあった女神の事を思い出した。
女神と言うのは宝石か何かかと思っていたが、どうやら違うようだ。

『ごめんね、それは出来ない。君が死んだら僕は生きていけないから』

『俺も同じだ!!だから、お願いだからその力を俺に!』

会話から察するに女神と言うのは能力の事の様で、女神を使うと死んでしまうという事、恐らくであるが死ぬほどの傷でも癒すことが出来るという事が伺える。

『君が僕の立場でも同じだったでしょ、だから、許して』

『サルヴァトーレ、、、、おぃ、、置いて行かないでくれ!!!』

サルヴァトーレがリシュアンの頬を撫でていた手がスルリと落ちた。

「リシュアンは僕が死んだことを忘れてしまったんだよ」

自分の身体が何処にあるのかすらわからないのに頭の中で誰かがそう言ったのがわかった。そして、目の前の映像と共に僕がっと言ったあたり、私に声をかけてきた人は恐らくサルヴァトーレであると言っているのだろうが、なら死んだ人間がどうやって今、私に話しかけてきているのだろうか。

「異世界の扉って知ってるかい?あれは僕の身体と魂から作られたものなんだよ。今は君の中に眠ってるけどね」

とりあえず、今自分の身に何が起きているのか、此処が何処かもわからない私は、このサルヴァトーレの話を黙って聞くことにした。

『どうして!!どうしてだよ!!』

目の前ではリシュアンがサルヴァトーレを抱きしめて小さな白鳥に向かってそんな風に叫んでいるのがわかる。すると、あの白鳥には時を戻す力があるんだよ。だけど、死んだ人間に効果は無いからねっと聞こえたと同時に眩しくなった。
とっさに目を閉じた後、直ぐに目を開けると私はフェイタンの部屋のシャワールームの前にいた。
一瞬気を失っていただけかと思ったが、アジトの中にフィンクスの気配が無い事と目の前には銀髪の男が立っていた事でそれだけではない事を理解する。

「ごめんね。でも、リシュアンの為に今君を合わせることは出来ないんだ」

「全然、話が読めないのにダメと言われても従えないに決まってるでしょ」

そうだよねっと言った彼はベッドに腰掛けてニコッと笑ってくる。
長くなるけど聞いてくれるかい?と言う彼はとても人のよさそうな笑顔で調子が狂う。本当なら今すぐフェイタンに連絡して今皆がどうしているのか確認するのが先決なのだろうけど。。。

「なるべく、端的に話して」

「善処するよ」



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