飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


私はフェイタンに抱えられて、前と同じ部屋に連れて来られる。フェイタンは私の頬にキスを落とすと扉を開けて、私を下ろした。

「おねだりしてみるね」

フェイタンはいつにも増して意地悪だ。フェイタンから出るめずら可愛い言い方にときめくものの内容は私の苦手なものだ。今回の事でフェイタンは私が無欲だと思っていた事を改めたと言っていた。欲しいとかしたいとか、して欲しいとか、何かを求める事が苦手な私を私も自覚したのだけど。いきなりハードルが高い。

「言わないなら何もしないし、出るか」

フェイタンはそう言って部屋の出口のドアノブに手をかけた。また、同じようにギクシャクしたくはない。フェイタンの手を思わず止めて、深呼吸する。

「何時もみたいにいじめて」

私に言える精一杯の言葉だ。恥ずかしい恥ずかしいっと顔に熱が帯びて息が少し荒くなるのを抑えながら、何か他に言い方はなかったか、フェイタンには伝わったか。グルグルと考えているとフェイタンが私の頬を手で撫でながら

「違うね、リノンが望んだよ。ワタシにいたぶられたいと」

キュッと心が掴まれたように跳ねた気がする。そうだ。何時もと違う。あの喧嘩した日と同じで自分で選んで此処にいる。そしてあの日と違うのは、私の心をフェイタンに見透かされているという事。そしてそれでもなお、フェイタンは私を受け止めてくれると言う事。

「嫌ならいつでもやめるね」

そう言ったフェイタンは楽しそうにそして優しく笑った。何時もは嫌と叫んでも絶対にやめてくれないのに、フェイタンは私が本気で嫌がっていないという事がわかったからか、そんな事を言ってくる。

「意地悪」

「元々ね」

フェイタンはそう言って座るねっと椅子ではなく、大きなクッションを指差した。不思議に思いながらもフェイタンに身を委ねる事にしようと私は言われた通りクッションに座ると

「始めるね、手出すよ」

「え?!」

何時もは手も足も拘束し、動けない状態にするのに今日は、自由というか逃げようと思えば逃げられる状態で、いや、違う私が望んでいるのだから逃げるという選択肢なんて無いのだから、だけどと言い訳と切望が交互にやってくる。

「身体が逃げるなら嫌と言うまで追いかけてやるね」

あぁ、私の心臓は破裂してしまうのではないだろうかというくらい鼓動している。少しの恐怖と恥ずかしさとフェイタンへの愛で心臓は耳元で音がするような気がするくらい高鳴っていく。
ゆっくりと恐る恐る右手を差し出すとフェイタンは私の手に口付けて手を握って私の中指の爪をゆっくりと剥いでいく。

「ぁっぅ、、あぁぁっくっ」

あまりの痛みに差し出した方の腕を反対の手で握り身体は硬直し、丸まる。キーンとなる耳鳴りと意識が自分の身体から数歩離れた場所に行きながらも拘束されていない身体を必死にフェイタンを拒絶しないように自分の意思で押さえ込む。

「可愛いね」

そう言って私の唇を奪い。口内を執念に舐めとり、私の息を絡めとってくる。息がしづらくてトクトクと心臓が酸素を求めて早くなっていくのがわかる。そして、フェイタンが深くキスをして私の頭を押さえた瞬間、爪のなくなった場所を握り潰された感覚がした。

「んんんんっ」

痛い痛い痛いっと頭の中で連呼しながらも、その考えまで全て連れ去られていきそうなくらい深い口付けに呼吸もできず、意識を飛ばしそうになる。

「痛いか?」

フェイタンは私から口を話してそう聞いてくる。少し霞む意識の中必死に呼吸をしながら、フェイタンを見てなんて妖艶な表情をするんだっと思った。痛みなんて吹っ飛ぶんじゃないかってくらいフェイタンのその顔にドキドキする。もう、痛みでか、酸欠でか、それともトキメキなのかわからない。

「ハァ、ハァ、痛い」

そう言った私の血が流れる指をフェイタンは口に含んだ。痛いなんてものじゃない。私は思わず、フェイタンが持つ自分の手をフェイタンから返してもらうために強く引っ張ってしまう。その手をフェイタンは優しく引き剥がして、私の身体をクッションに押し付けた。
私の手は痛みに耐えるためにクッションを必死に掴む。

「痛いだけか」

わからない。わからないけど、フェイタンが私の指を舐めたり噛んだりやめたりするのに合わせて自分の身体が自分の物ではなくなったように自分の意思に反して動く事でフェイタンに全てを支配されているような感覚は嫌いじゃない、いや、好きだ。



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