なんとなく、調べてしまった。そうしたらすごい量の情報が出てくるわ出てくるわ、本当にこの子、バレー界では有名人だったんスねえ。校内のパソコン室でカチカチとマウスをクリックしまくっていると、今までと違う文章が目に入った。

「"事故"‥?」
「何やってんだ黄瀬」
「がっ‥笠松センパイこそなにやってんスか!」
「バカ、周りのギャラリー見てみろ、パソコン室でなんかあってんのかと思うじゃねーか。気になって覗いてみたらお前かよ、何やってんだと思ってな」

ああ成る程。オレがいるから集まったってことっスか。納得して軽く手を振ると、手を振った方向から黄色い声援が飛んできた。ついでに笠松センパイからのパンチも飛んできた。なんて理不尽なセンパイなんだろうか。‥だいぶ慣れたけど。

「何、お前バレー選手調べてんの?中間の勉強でもしろバカの癖に」
「いーじゃないスか別に!!!」
「‥って、この間の雑誌の奴じゃねえか」

画像欄から見つけた顔に逸早く反応を示した笠松センパイが、マウスをオレからぶんどってどんどん画像を遡っていく。「へえー」とか、「あ、コイツ知ってるわ」とか、なんでいつの間にか主導権を握られているのか。てか、虎侑サンとよくセットで写ってる子いるけど、あれか、リベロの兎佐選手とかいう子。まー確かに、画像欄で一番可愛いのは虎侑サンかな。タイプじゃないけど。

「うお、そういやこんな事故前にあったっけか」
「ああ、検索でヒットしたやつ」
「救急車と指名手配の車の激突、あれ酷かったわ。何台か車巻き込んでたよな」
「そうなんスか?」
「‥お前もっとニュースとか見た方がいいぞ。バカが表沙汰になる」
「そこそこ出来たらいーじゃないスか!」
「どの口がそこそことか言ってんだテメー!!」













「あっ」

どうしよう。なんか知らないけど、私虎侑陽菜子に突然のチャンス到来です。お昼の飲み物を買いに自販機まで来たら、日向先輩がいらっしゃいまして、目が合いました。

「あ‥えっと虎侑、さん?」

有難うございます日向先輩の口から名字いただきました!!!!思わずにやけそうになる頬っぺたを両手で抑えて、じっと目の前のイケメンを見つめる。そして、震えそうになる口を開けた。

「日向先輩、こんにちは!」

あっ、全く震えなかった。

「こんな所で‥何やってんだ‥?」
「あの、つぶつぶ苺オレ買いにきたんです!日向先輩は何を買いにきたんですか!?」
「あー、アクエリ‥」
「分かります!私もアクエリ派です!」
「そ、そうなんだ‥」

あーやばい日向先輩と喋ってるどうしよう!!自販機の前まで移動すると、日向先輩が少し避けてくれて優しさを感じた。ボタンを押している所を見られている。恥ずかしい。爪の状態は良好、綺麗、よし。ちらりと日向先輩に視線を移すと、どうやら日向先輩もこちらを見ているようだった。なんで見ているんだろうか。あー、ドキドキする!!

「あのさ虎侑さん‥」
「はい!!」
「つぶつぶ苺オレ買いにきたんだよな‥?」
「?はい!!」
「押そうとしてるの‥カフェモカだけど‥」
「えっ」

ピッ。

声が出たと同時にボタンを押してしまったのが運のつき、ガコンと下から出てきたのは暖かいカフェモカだった。成る程、それでこっちを見ていたんですね。お恥ずかしいとばかりに慌ててカフェモカの缶に手を伸ばす。

「熱っ!!!」
「そりゃーホットだもんな‥‥大丈夫か?」

2016.12.30

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