大人になりなさいよ、ガキ

「邪魔するぞウミー…って…なんだ居たのかお前等」
「あら、ゲンマじゃない」
「何、お前も来たの」
「悪いかよカカシ」
「別に」

病室のドアが開いた先に、私とカカシが思わず目線を寄せると、そこには花を手にしたゲンマが立っていた。あー、いやだ。こんな所でこの二人が鉢合わせるなんて私も運が悪い。

当の本人達と言えば一瞬バチッと睨み合ったかと思えば、何事もなかったかのようにゲンマが私に花を渡してカカシはいつもの本を手にとっていた。シカマルの言葉を借りるようで悪いけど本当にこの2人は面倒くさい。周りから見れば2人ともプレイボーイで女に固執してない感じがするけど、とある忍達の間のみ2人が恋敵であることは有名。そのお相手と言えば今現在この病室で眠り続ける女性、翡翠ウミ。

魔性の女…というわけでは決してないけど…まあ、相当鈍いっていうか…恋とか愛とかなんてまだよく分かってないだろう。いつからこの2人がウミを好きになったかなんて言うのは知らないけど、とにかく気付いた時には静かなバトルが繰り広げられていたのは確かなことだった。

「ゲンマは任務じゃないの?」
「内勤の休憩が回ってきたから来たんだよ。大体カカシこそ任務どうしたんだよ」
「俺はいーの。用がないなら早く退室してネ」
「休憩だっつったろーが」
「狭い部屋に大人3人はキツイでしょーよ」
「じゃあカカシが出ろよ」
「それは無理なお願いだね」
「2人ともここで喧嘩しないでくれる?」
「「………」」

私が間に入るとすぐ様冷戦態勢になる2人の様子を見て溜息を吐いた。こんなネチネチ嫉妬野郎のどこがいいんだか…くノ一の皆さん見てください。これがあのクールで素敵なイケメンと噂のお2人ですよ。好きな女の子に自分の想いすらぶちまけられないなんともひ弱な成人男子なんですよ。草食なのか肉食なのかどっちかにしてほしいわほんと。

「ウミの調子は?」
「…まだなんとも言えないよ。外傷はあるけどちゃんと治ってきてるし」
「ふーん。前見た時より顔色は確かによくなってんな」
「前って…お前いつ来たの?」
「入院したって聞いてすぐ。…別にそんな怖い顔しなくても病人を取って食ったりなんかしてねーよ」
「いーやお前なら分かんないね」
「ちょっと、」
「そういうカカシこそよからぬことでもしてんじゃねーだろーな」
「一緒にしないでほしいんだけど」
「ちょっと!喧嘩しないでって言ってるでしょ!」
「「……」」

何このやりとり…いつまで続くわけ?一々2人の言い合いになりそうな空気を止めながら、ゲンマに渡された花を空きの花瓶に入れ替えとりあえずパイプ椅子を自分の近くに出すと、ゲンマに手招きして座るよう促した。

「とりあえず座って。で、喧嘩しない。2人ともウミを取られたくないっていうことはよーく分かったから」
「「……」」
「言っとくけど、選ぶのはウミ。あんた達が喧嘩しようが何しようが選ぶのはウミなのよ。だったらウミがいる所で喧嘩なんてするんじゃなくてもっと男でも磨いたらどうなの?」
「一体紅はどっちの味方なんだよ」
「私はウミの味方に決まってるでしょ。とにかくここで喧嘩するなら出てって頂戴。みっともない」
「…分かったよ」
「フン…」

そのままお互いパイプ椅子にどっかりと腰をかけた二人は、ツンと逆方向へと顔を向けていた。男ってほんっといくつになっても子供だ。なんだか不穏な空気に包まれていることに嫌気がさした私は、席を立ち外がまだ寒いのを分かっていながらも窓を全開に開け放った。

「まだ開けるには早いと思うんだけど、紅」
「寒ッ…」
「あんた達が蒔いた種、醸し出した空気でしょ。ウミに毒よ」
「それはちょっと酷くないかな…」

2014.05.13

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