気味が悪い、ヒト?

「恐ろしく展開が分かりやすくてほんと嫌んなりますよねー」

出発して1時間程たっただろうか。あたし達は砂嵐を抜けてすぐに謎の忍?達からの襲撃を受けていた。手裏剣、クナイ等色んな暗器道具が飛び交うが、全て暗器使いのスペシャリスト・テンテンさんが相殺してくれる。その間に傀儡で忍の姿を探すカンクローさんとリーさん。そしてくああと欠伸をこぼすあたしと腕を組む我愛羅様。

「…お前には緊張感ってモンがないのかよ」
「えー?めっちゃ緊張してるじゃないですかーあー怖い怖いーさあ頑張るぞー」
「言っても無駄無駄、マトイっていっつもこんな感じだから」
「任務中じゃん」
「やる時はちゃんとやってくれるわ。……多分」
「失礼だなーちゃんとやりますってー」

あたしはテンテンさんの呆れた目を見てへらへら手を返し、あははと笑い返した。まあ、こうなるということは予想がついていた。そもそもこのルートは事前に氷ノ手さんから聞き出していた情報。そして真っ直ぐに間違える事なくこのルートを通るように指示したのは取引側の相手の指定。つまり"取引する相手ではない"と相手側が気付いた場合、必ず襲ってくるということ。まあバレなきゃよかったかもだけど、変装とかもめんどくさくてやってないし木の葉と砂の額当て普通につけてるし、っていうか風影様いる時点でもうアウトだしねー意味ない意味ない。

4人を視界に入れながら目を擦ってよいしょと屈伸をしていると、カンクローさんの死角からキラリと鋭い銀色が見えた。カンクローさん、気付いてないし…。しょうがないなあとポーチからクナイを取り出すと、恐らく暗器だろうと考え弾き返す為に目を光らせて駆け出した。

「!?」

そして間近に迫った瞬間、そこで気付いてしまった。

「刀っ…!?」

暗器じゃなくて、武器…!!?シュッ、と切れ味の良い音が空気を裂き、武器……長い剣の先が左頬を掠めていく。ピッと小さく嫌な音を立てて、ツー…と左頬から血が流れていく感触がした。

「マトイ!!大丈夫か!?」

我愛羅様の大きな声で私へと振り向いたカンクローさんは、驚いたように目を見開いていた。本当に何もしないやつだなんて思ってました?そう溜息をついて言えば「…悪かったじゃん」と謝られた。失礼なやつだなと思いながら刀の柄をぐぐっと押さえ込むと、見えた刃が両刃になっていることに気付き、珍しい物持ってるなあと考えながらテンテンさんの声に反応した。

「ちょっと擦っただけですよー大丈夫でーす!それよりこれで捕まえた…一体どなたさんですかねー?」
「…」

目の前にいる人物は、柄を押さえ込まれたことによって動けないからかあたしから目を離し、脱出を試みているらしい。…まあ目を離し、とは言っても変な黒いお面つけてるからそんな感じがするだけだ。カンクローさん以外の3人は、まだ仲間が複数人いることから今だ防御線を張り続けている。

「カンクローさん、この人から離れててくださいねー」
「任せて大丈夫なのかよ」
「まっかせるじゃーん?」

ニッと笑ってカンクローさんの真似をしてみれば、似てねえじゃんと一言だけ返されて、急いでその場を離れていった。

「その黒いお面ものすごく不快だから取った方がいーですよー?」
「…」
「まー大体、筋肉の付き方とその細さから言って女の人って所ですかねー?」
「…」
「なんか喋ってくれないとあたしの独り言になっちゃうんですけどー…って喋るわけないか…だったら」
「…要石マトイ」
「あれま、あたし有名人?」
「玄武の封印の器」
「そんなことまで知ってるとは物知りだなー」
「どうしてこのルートにいる?…とは聞かない。でも、好都合だから貴女を連れて行く」
「…?」

何故だか少し聞き覚えのあるような声に小さく首を傾げた。…どこで聞いたんだっけ…?確か木の葉の里で、何回か聞いた事があるような…しかし、そんなことを考えている暇はなさそうだ。柄をすごい力で引き寄せると同時に腹部を蹴り上げられる。めっちゃ痛いんですけど!!と顔に出しながらなんとか膝で着地をすると、片手で印を組んで首にある黒い笛を取り出した。

「それ、効かないからやめといたら?」
「そういうハッタリはやめといた方がいーですよ」
「ハッタリじゃない。だって、封印の器達の能力なんて私は熟知してるもの」
「へえー…他の仲間は知らないのに、あなただけは知ってるんですか?じゃあ他の仲間ってようは下っ端なんですねー成る程成る程ー」
「下っ端…まあ間違いじゃないか」
「うわっ!!なにこいつら?!!」
「?」

謎の女がお面のずれを直しているのを見ていると、突然テンテンさんが大声を上げた。何事だと目を向ければ、リーさんやカンクローさん、我愛羅様もそちらへと視線を寄せている。

「…!!」

そしてその先にいたのは、顔のない姿形そっくりの敵の大群だった。

2015.04.09

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