古傷

「待たせたな」
「リー達久しぶりじゃん?」
「おはようございます!」

我愛羅様とカンクローさんが来るのを待つこと20分、目の前に見えたそのお2人さんを見て、来てしまったか…とあからさまに溜息を吐いた。ていうかあのカンクローさんの顔の絵は自分で描いてんのかね?あたしにそのセンスはきっと一生理解できないわー。ああ…背負ったリュックが心無しかさっきより重い気がするのは何故だ…

「忘れ物はないか?」
「バッチリ……です!しっかり任務遂行させてみせますから任せて下さい我愛羅君!」
「相変わらず頼もしいな」
「そういうの付け足さなくていいからね我愛羅。スルーしてスルー」

ごそごそと鞄の中を漁りながら答えるリーさんに我愛羅様が微笑み返し、あたしの存在を忘れているかのように4人で和気藹々としている。何この空気。今から任務ですよ任務ー。

「我愛羅」

腕組みしながら和気藹々とするメンツを眺めていると、後ろから声が響いた。なんだなんださっきからーあたし早く出発したいんですけどー?ゆるりと後ろを振り向くと、そこにいたのはテマリさんと両隣に2人の砂の忍。ああそうか、我愛羅様風影だもんね。見送りってやつですか?心配なら里に残せ!(あたしの心の叫び)

「テマリ。暫くの間、里を頼むぞ」
「ああ、分かってるよ。それより我愛羅もお前達も気を付けるんだぞ。任務地では何が起こるか分からないからな…それとマトイ」
「はい?」
「あまり………無理はするなよ」
「一体なんの心配してるんですかーテマリさ、」
「「風影様、いってらっしゃいませ!」」
「ちょっとあたしまだ話してる途中ですからねー」

砂の忍の大声に塞がれて、テマリさんに対するあたしの言葉は掻き消された。一瞬だけ眉を潜めたテマリさんに疑問が浮かんだが、見間違いだろうと視線を外す。そもそもあたしより我愛羅様とかの方がよっぽど心配だろーしねー。頭をがしがしと掻いて、他愛もない話に受け答える我愛羅様の裾に手を伸ばした。

「感動のお別れはもういーですかー?」
「あ…ああ、悪いな。行くか」
「なんですかその吃り具合…まあいいや。修羅までの道はあたしが詳しいんでついてきてもらう感じで行きたいんですけどいーですよねー?」
「任せる。今回の任務の中心はマトイだからな」
「うわー嬉しくなーい」
「ただし隊長は俺だ。単独行動はするなよ」
「分かってますってーこれでもー」

やっとテマリさん達に背中を向けた面々を見てあたしも行くべき道へと足を動かした。何が起こるか分からない…か…間違ってない。けど、皆に手は出させない。それにもしかしたら…

「………"焔"、一族」
「?マトイ、なんて?」
「気にしないでくださいー独り言ですからー」
「?」

うっかり隣に居たテンテンさんに呟き声が聞こえていたらしいが、聞き取れはしていなかったようだ。








「テマリさん、そろそろ戻りましょう」
「ああ…」

砂嵐の中に消えていった5人を見送り、落ち着いた所で忍の一人がテマリに声をかけた。

風呂場で見たあの酷い"古傷"…あれは一体なんだ…?自分よりも年下の少女が、尾てい骨部分に横一線の深く切られた大きな傷跡を残していた。そして腰には何かを打ち付けられたような痕と強く縛られていたような痕が、今だに消えることなく残っていたのが鮮明に思い出せる。

「…」

明らかにあれは拷問された物であることは間違いはない……どうして、あんな…

2015.01.22

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