変革への1歩

「……れ…?」

ぱちりと目を開けると、窓から薄っすらと光が入り込んできていた。あたしいつの間に寝てたんだ…?それになんか違和感…ふかふかとした感触に疑問を浮かべながらふと視線を動かす。その先で、というかベッドのふちに腰かけてあたしを見つめる目とかちあった。ベッドのふち…?あたし下の布団で寝てたはずじゃ…段々と困惑顔になるあたしを見て、ベッドのふちに腰をかけていた我愛羅様が口を小さく開いていた。

「…目が覚めたか」
「これはあたしが寝ぼけてたせいですかー?それとも我愛羅様の策略ですかー?」
「言うなら前者だ。さすがにそこまでしない」
「よかった…じゃないや、どーもすみませんー」

よっこらしょと上半身を起こして伸びをすると、そういえば!!と綱手サンからの手紙のことを思い出して我愛羅様の襟元を掴み上げた。昨日ロイちゃんが手紙を持ってくるのを待ってて起きてたのにいつの間にか失態!!

「どうした急に」
「ロイちゃん!綱手サンから手紙はー!?」
「ああ。中身は確認させてもらった」
「嘘でしょーこの人…職権乱用いけないんだー…」

懐から1通の手紙を取り出した我愛羅様は何故か安心したように立ち上がると、ぽん、と頭の上に軽く手を置きその場から立ち上がった。後でロイちゃん呼び出してとろけたチーズあげないとなー。あの子の食の恨み怖いんだよ…それにしても、あの食に煩いロイちゃんが寝てても起こさないなんで珍しい。ぼんやりそう考えながら手紙を開く。そこには雑に書きこまれた「分かった」という文と、「帰ったら溜まった仕事さっと片付けろ」という文が続けて連なっていた。

「鬼……い、っつ……!」

最悪だとばかりに溜息を吐く。でもよかったと気を緩めた瞬間、脳内がビリビリと痛んだ。

「……れ … い」

何かを思い出しそうな気がした。頭の中に入りかけた映像はガラスが割れるように砕かれて落ちていく、まるでそんな感覚だった。昨日何かあったのか、そう考えてみても何も思い出せない。

「マトイ、これを飲め」
「はい?」

1人頭を抱えながらぼんやり考えていると、いつの間にか台所へ行っていたらしい我愛羅様が、水と小さい錠剤のような物をあたしに差し出していた。んん?なんで錠剤…?

「なんですかーこの白いの…」
「薬だ。昨日…寝言で頭が痛いと言っていたから持ってきた」
「なにその間超怪しいんですけどー」
「いいから大人しく飲め」

ずいっと差し出されるそれに、強引な…とは思いつつ渋々受け取った。まあ、頭痛がしたのは間違いではないから飲んでて損はないだろう。変な薬ではないことを祈りつつ口の中にぽいっと錠剤を投げ入れると、そのまま水で流し込んだ。

「さて、行く準備しなきゃなー」
「火影から許可が貰えてよかったな」
「当たり前ですよー。修羅の国については謎が多いですからねー、なんだかんだ綱手サンも情報欲しいと思うしー。あ、我愛羅様着替えるからあっち行っててくださいあっちー」
「ああ、そうだったな…朝食でも作ってくるか」
「えー我愛羅様料理できるんですかー?」
「一応人並みにはできる。…ああ、それとだ。今回の件、俺とカンクロウも同行する」
「いやだから何度も言いますけど貴方風影様でしょー…里内にいた方がいいんじゃないの…」

着替えの服を引っつかんで我愛羅様の言葉に呆れていると、スルースキルを発動させた目の前の男は、少しだけ安心した顔を浮かべながらすたすたと台所へ消えて行った。ああ…よく分からない人だ…テンテンさんとリーさんいるし、修羅の国までもつかなあたし…








「おはようございます!」
「よく寝れたー?」

テンテンさんとリーさんに鳥を飛ばしてもらって数時間後、集合場所であたしを見つけた2人があからさまにニヤニヤと顔を崩した。うーわ最悪だー幸先悪すぎなスタート望んでないんですけども…我愛羅様は業務の引き継ぎをテマリさんに頼んでくるそうで、カンクロウさんと後でここに来るらしい。先に行っていいか。

「我愛羅とは少しは仲良くなれた?」
「多分そうなる前に寝ちゃったんでー」
「一緒に寝たんですか?」
「リーさん起きてくださいー頭寝てますよー」
「なんかあるなんて思ってないから!でも少しくらい距離は縮まったんじゃないの?」
「なんかあってほしいなーと顔に書いてありますよテンテンさーん。ないから」
「何よ面白くないわね!」
「それよりそっちこそなんかあったりしてー?」
「ああ…朝からリーの修行に付き合わされたのよ…」

思い出したように肩を竦めるテンテンさんに同情した。あれま。なんか余計なこと聞いちゃったみたいですねすみませーん。悪気は全然ないですからーと真顔で手を横に振る。リーさんの額からキラリと汗が流れ落ちてきた瞬間、当の本人がナイスガイポーズをキメてきたもんだから口が引きつった。

2014.12.14

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